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目は口より(黒沢視点)

二人の後ろ姿を見た瞬間、自分でも驚くような低い声で話しかけていた。

浩輔がかがんで鈴木にキスしてるように見えたのだ。


二人が振り返ったのを見て、それが自分の勘違いであることが分かったが、それでも鈴木の肩に回された腕を見ると胃のあたりが重くなっていくのを感じた。

ただでさえ、鈴木は浩輔のことを怖がっている。早く、二人を離さなくては・・・そう思ってもう一度声をかけた。

「怪我したくなきゃそいつにかまうなって言ったよな?」


俺がそう言った瞬間鈴木は怯えたような目をした。

鈴木のそんな目を見て、俺はひるんでしまった。

「ちげーよ!俺が、こいつに、かまわれてたんだよ!」

浩輔は声とともに、体が鈴木から離れた。

しかし、鈴木はそばを離れないでと無言で訴えるかのように、浩輔の服をつかんでいた。

鈴木はあわてて手を浩輔から離した。その仕草は、自分でも服をつかんでいたことに驚いている様子だった。

つまり、無意識でつかんだんだ。

あの鈴木の目は、俺が怖かったから・・・。


あまりのショックに次の行動に出れず、固まっていた俺の横を(はじめ)が通り過ぎ、鈴木の腕をつかむと先に帰れと俺に言い残し居なくなってしまった。


「なぁ、お前の彼女(はじめ)に連れてかれたけど、いいのか?」

二人が見えなくなっていった道をぼーっと見ていると、浩輔が聞いてきた。

「・・・」

「なぁ?聞いてる?」

「・・・」

「はぁ、俺帰るわ」

俺は自分のことで精一杯で、何も答えられなかった。

今まで、この顔と身長のせいで怖がれる事は慣れっこだった。

そう慣れっこのはずなんだ。

鈴木は最初こそ距離を取っていたように思うが、今では怖がる素振りなんて見せたこと無かった。

そんな鈴木が一瞬見せた怯えた目。あの目を見た瞬間、傷ついた自分に驚いた。


なんで俺、こんなにショックなんだ?・・・今までだって、あんな風に見られることなんて当たり前だったのに・・・。


どれくらいそこに突っ立っていたのか、気がついた時には戸村が目の前に居た。


「なぁ、お前こんなところで何やってんの?みんなビビってんぞ?」

「・・・俺って、そんなに怖いか・・・?」

「子供なら泣いちゃうぐらいには」

躊躇なく答えられ、激しく落ち込んだ。

事実、迷子の子供に声をかけ激しく泣き叫ばれた経験があるだけに、何も言えない。

「え・・・?なんかあった?」

戸村は俺の落ち込みように、いつもと違うものを感じたのか戸惑いつつ聞かれた。

「さっき・・・鈴木に怖がられた」

「絶対それ見間違いだと思うけど・・・それより、鈴木さんに会ったんだ?」

「本当にそう思うかっ!?」

つかみかからん勢いで戸村に迫ると、ちょ、間近はさすがに怖いってとか何とかいって俺から距離を取る。

「そもそも、怖がられてるのなんていつもだろ?なんでそんなに落ち込むの?」

ため息とともに、自分も思っていたことをつきつけられる。

「・・・わかんねぇ、けど鈴木は、鈴木には・・・怖がられたくない。」

自分の思っていることを、まとめられなくてそのまま言葉にすると戸村はぶはっと笑いだした。


「もしかして、とは思ってたけど・・・ははっ、お前それ」

「なんだよ?」


いつもはさわやかに笑う戸村が、珍しくにやりと笑った。

「好きなんだよ・・・黒沢は、鈴木さんのことが。しかもかなりな」





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