落ちてみたいもんです、ほんと。
やばい。
これは、やばいぞ。
昨日の今日でまさか呼び出されるなんて。
ぶつかった時は気付かなかったけれど、黒沢先輩が翌日呼び出すほど痛かったとか?
いや、でも謝ったし。
いくらがらが悪いと言ったって、ぶつかったぐらいでわざわざ呼び出すか?
そもそも、なんで私の名前を知ってるの?
なんてことを考えながら、先輩の後をついていく。
教室から出た私に、先輩はここでは話しにくいから、と目をそらしながら伝えられた。
怒っているようには全く見えない。ただ、一瞬だけほんのり染まった耳はきになったけれど。
ぼこぼこにタコ殴りにされるような、雰囲気では無い。
どちらかというと、今から告白します!みたいな空気が流れている。
しかし、もしかして私告白される?なんて思えない。
ぶつかった瞬間に恋に落ちる。
んな、あほな。思わず脱力するくらいないない。
そうなってくると、先輩が何を考えて私を呼び出したのかが分からなくて、怖い。
分からない、というものほど恐怖だ。
やばいよ。対処できないこと仕掛けられたらどうしよう。
ただでさえ、目つき悪くて大きな体の先輩になんだか照れたような態度を取られると、ほんと、怖い。
先輩と仲が良ければ、そんな態度もなんだか可愛く見えたりするのかもしれないけれど、実際そうじゃないし。
結構な緊張を強いられながら、やっと立ち止った先輩を見上げる。
とにかく、先輩は教室前では話せないような話をここ、体育館裏ではなすつもりらしい。
こちらに振り返ったまま、話しだそうとしない先輩はちらりと私の顔を見ては視線をそらす。
しばらく待ってみたけれど、一向にすすまない。
なんだかイライラするんですけど、その態度。我慢しきれず、こちらから話しかけた。
「あの、話ってなんですか?」
私に話しかけられ、少し驚いてはいるみたいだけれどやっと話す気になったみたいだ。
「ああいうことは、そういう雰囲気でも、あんなところでするのはどうかと思う。」
「はぁ・・・?」
意味が分からない。ああいうことって、どういうこと?
ぶつかったら、普通謝ると思うんだけれど。そのこと?
「みんな、普通にしてると思うんですけど」
私の返答に先輩の目が見開かれる。
「みんななわけ無いだろ?!」
ほぼ、怒鳴るように言葉が飛んできた。そして、先輩の耳は赤い。
ぅえ、怖いよ。怒ると、表情に出ないけど耳が赤くなるの?この人は。
ビビって、黙ってしまった私を見て先輩はゆっくりと息をはいた。
「なんで、普通だと思うんだ?」
「そう、教えられたんで」
ぼやくようにつぶやいた言葉に、思わず私もつぶやくように返す。
次の瞬間、先輩の表情が変わった。
目が、据わっている。顔もほんのり赤黒い。あごには何かを噛みしめるように力が入っている。
つまり、すごい怒っている。まさに憤怒。
「あいつ・・・」
ぇえ!?この人の怒りのポイントが分からない!
そんな形相を私に見せて、先輩は走り去った。
あの表情は本当に怖かった。なんだかよくわからないけれど、ひとまず教室に帰ってお昼の続きを食べよう。
関係ないけど、あの先輩と意思疎通をはかるのは大変な努力が必要そう。
そんなことを思いながら教室に帰った。




