仏の顔も
家に帰り着き、制服のままベットに倒れ込む。
ここはじっくり黒沢先輩の良く分からない行動について考えようと思ったが、あんなにぎゅーぎゅーと抱きしめられたはずなのに、黒沢先輩の腕の感触と衝撃のセリフしか思い出せず、考えることを諦めた。
と言っても、気がつけば先輩のことを考えてしまい動きが止まっている。
これではいかん。
急いで夕食を食べ、お風呂に入りその日は寝た。
幸い、相当疲れていたようでぐっすりと眠ることができた。
そりゃ、あんな初体験盛りだくさんな一日を過ごしたんだから当たり前か。
翌朝、今度こそ先輩になぜ私を避けるのか話そうと決心する。
昨日の先輩との一連の出来事は、なんだか頭に血が上って思い出すたび叫びだしそうになるので、とりあえず保留にすることにしたのだ。
そもそも、先輩が私を避けるから変な噂がたってしまったし、先輩の変な友達にからまれたのだ。
まず、そこから解決しよう。昨日は避けられなかったし、大丈夫だろう。
そう思っていた。
今の今までは。
いつもなら、廊下や教室前で見る先輩も今日は姿を見せ無かった。
朝の決心が鈍るのが嫌で私から先輩の教室を訪ねた。
しかし、先輩は教室に現れた私を見た瞬間、逃げ出した。
プチっとかぶちっとかプッツン等、色々表現はあるだろう。
私としては ぶちっ に近いように感じた。
私の中で溜まりたまった何かが、決壊しあふれ出てくる。
先輩はまだ気が付いていない。私が後ろから追いかけていることに。
廊下を曲がり階段へ進む後ろ姿も、もう大分近い。
射程距離まであともう少し。
それは先輩が階段の踊り場で、足をとめ私の足音に気がつき、こちらを振り向いた瞬間だった。
私は飛んだ。
先輩めがけて。
すべてがスローモーション。
自分のスカートが揺らめくのが視界に入り、その向こうでは目を見開いて驚いている先輩の顔が見える。
パンツが見えたって構うものか。
勢いを殺すように先輩が私を抱きとめる。
それでも、殺しきれなかったのか先輩と私はその場で倒れ込んだ。
「いってー」
そんな先輩の声が下から聞こえる。
うん。大丈夫。私は痛くない。
逃げられては意味がないので、馬乗りになり先輩の服をつかむ。
「先輩。ちょっとお話出来ますか?任意じゃなくて強制ですけど。」
意外に足が速かったりする鈴木さん。