振り返れば
特別教室ばかりが並ぶ廊下を歩いていると、不意に後ろから抱きつかれた。
とっさに相手の足を踏みつけ、相手がひるんだすきに肘鉄をいれる。
「うっ」
腕からのがれ、振り返ると戸村先輩が腹を押さえてうずくまっていた。
あれから戸村先輩には放課後、護身術の手ほどきを受けている。
といっても、
「簡単なものしか教えれないけど、反撃されたらそれだけで襲った側はびっくりするだろうから、そのすきに逃げること」
と、念押しされている。これで殴った相手が逆上しても、ある程度逃走出来るだろう。
ただ、痴漢にあった経験から人はパニックになったら、動けないということを知ったので難しい動きは最初から無理だっただろう。
そういったことも踏まえて、先輩はたまに私を見かけると今のように仕掛けてくるのだ。
「大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫。もう後ろから襲われても大丈夫だね」
いてて、なんていいながら立ち上がる先輩。
「はい、おかげさまで」
最初は本当大変だった。
頭で分かっていても、驚いて体がうまく動かず正直あせる私は、先輩に遊ばれていたと思う。
「今日、委員会の会議入ったから放課後今日はパスね。気をつけて帰れよ」
「あ、はい。分かりました。先輩も委員会頑張ってください。」
それだけ言うと、別れた。
黒沢先輩は相変わらず、といった感じだ。
そろそろ私の方が限界に近い気がする。
話したくても、あそこまであからさまに避けられていたら、それも難しいし。
本当、いったい何がしたいのあの人は!
そんなことを考えつつ、最寄りの駅に向かっていると不意に後ろから抱きつかれた。
あれ?今日委員会っていってたのに。と思いながらも、体は動いていた。
今日、先輩にしたの同じように足を踏みつけ、肘鉄を入れようとした。
が、足を踏みつけてもひるむこともなく、逆に体に巻きつく腕にさらに力が入った。
そのため、肘鉄どころか体を動かすこともかなわない。
あわてて、首だけで何とか振り返り相手を確認すると、他校の制服を着た見たことがない男子学生と目があった。
「なかなか良い動きだ。な、お前だろ?黒沢がおびえる女って」
にやりと笑ってこちらを見下ろすそいつは、黒沢先輩と同じくらい大きかった。
懐かしいドラマのタイトルを思い出します。