くるっとまわって
私が痴漢を撃退した日から1週間経った。
つまり、黒沢先輩に抱きしめられてから、1週間経ったということだ。
先輩にとって、大したことじゃないかもしれないが、私にとっては大したことである
最初の二日ほどは、何度も抱きしめられたことを思い出して、一人で赤くなり叫びだしそうになったりしていた。
次に先輩に校内であったら、どうしよう、どんな態度をとれば?と考えて二日。
しかし、事件は五日目に起きた。
廊下で戸村先輩と一所にいる黒沢先輩に、であった。
正しく言うと、私のクラスの教室を出てすぐ、扉の前に立っていたのだ。
1年生の教室の前に、階が違うはずの3年の先輩がいることに、周りは驚いていた。
しかも、立っているのがあの、黒沢先輩。どおりでこちら側の出入口をみんな使わなかったわけだ。
なんて、冷静に思えるはずもなく。
「せっ先輩!?」
変な声をあげてしまった。
しかし、事件はここで起きた。
これでもかと目を見開き、驚いた先輩は私の声を聞くなり、回れ右をして、走り去った。
つまり・・・逃げた。
その場に置いてきぼりにされた戸村先輩は、私を見て
「なるほど」
とつぶやくと去って行った。
い、今の何?
もしかして私、黒沢先輩に避けられてる?