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誰も導かなかった世界で、俺たちは答えを与えなかった 救わない勇者たちが世界を変えた理由  作者: 慈架太子


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広がる違和感

最初は、一人だった。


「……違う」


小さな言葉。


誰にも届かない。


それでも、残る。


別の場所。


男が、手を止める。


「……」


動きかけて、止まる。


「……違うな」


誰に言うでもなく。


女が、布を見ている。


手は動いている。


それでも


「……何か、違う」


口に出る。


広場。


二人が言い合っている。


声は強い。


「……従え」


その言葉が出た瞬間


止まる。


沈黙。


「……違うだろ」


誰かが言う。


その一言で、空気が変わる。


剣は、抜かれない。


言葉も、続かない。


そのまま、終わる。


遠くで、子供が立ち止まる。


手に持ったものを見る。


周りを見る。


「……いいのか」


誰も答えない。


「……いい」


自分で、答える。


歩き出す。


畑。


男が、手を止める。


「……これでいいのか」


誰も答えない。


一拍


「……いいか」


言い直す。


また、動かす。


織機の音。


少し乱れる。


止まる。


「……違う」


誰かが言う。


直す。


また、鳴る。


カイは、それを見ている。


何も言わない。


ミーナは、周りを見る。


同じ言葉が、あちこちで出ている。


マーガレットは、動きを止めない。


それでも、耳に入っている。


アリアは、静かに立っている。


目を細める。


ユークスが、低く言う。


「……広がってるな」


それだけ。


リーヴは、何も言わない。


ガルドは、道具を置く。


時間が、過ぎる。


誰も、教えていない。


誰も、広めていない。


それでも


同じ言葉が、増えていく。


「……違う」


「……これでいいのか」


「……いいのか」


それぞれ違う。


でも


同じ場所に、触れている。


違和感は、誰かのものではなかった。


いつの間にか、共有されていた。


その日


世界は、少しだけ揺れていた。


誰も気づかないまま。




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