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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Boy Meets Gal : 双方ともとんでもないというお話

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《殲滅者》

 真剣な顔で俺を見ている兄貴に聞いた。


 「その極秘事項って何だ?」

 「超次元格納だ」

 「はい?」

 「別な時空間に膨大な物量を格納し、自在に出現させることが出来る技術だ」

 「異次元収納!」


 思わず大きな声が出た。 

 俺が大好きな異世界転生物に登場する能力だぁ!

 ほんとにそんな能力があんのかよ!


 「まあそんな名称でもいいだろうな。その技術によって、大量の破壊兵器を個人が搭載することが出来る。冴姫はそれらの兵器を操り操縦する日本でも数少ない能力者だ。《殲滅者》というのは、そういう能力者の中でも最高峰の、現代日本の決戦兵器のトップなのだ」

 「すげぇな、おい!」


 冴姫が隣で微笑んでいた。


 「「能力者」と仮に呼ぶが、海外の同じような特殊能力を持つ人間と戦う者たちだ。その能力は互いに様々だがな。全員が凄まじい力を持っている」

 「そうなんだ!」

 「冴姫もそうだし、ここにいる闇絵も来栖もそうだ。特に冴姫は「能力者」の最高峰であり《殲滅者》と呼ばれている。具体的なことはまだ話せないが、世界中のどの「能力者」の中でも恐らく最高峰だ。冴姫の能力の全貌は知られていないが、これまでの戦闘記録から海外の連中もある程度は分かっている。本当に飛び抜けた戦闘力なのだ」

 「そうなのか……」


 こんなに綺麗なギャルなのに……

 冴姫は平然としているが、俺にはそれが何か悲しいことに思えた。

 こんなに若い冴姫が、世界の修羅場の中に身を置いていることが。

 俺が見ていることに気付いた冴姫が、また静かに微笑んだ。

 兄貴の話は続く。


 「だから冴姫にお前の護衛を頼んでいるんだ。他国のどんな強力な襲撃を撃退出来るようにな。ああ、ちなみに先んじて超兵器を開発していた六か国だが、もちろん今では他の先進国もどこも核兵器以上の超兵器の開発を始めている。冴姫は有能だが、日本だけが今後もずっと有利だとは安心は出来ない」

 「なんとなく分かった」


 冴姫が俺のマンションに来た時に大きなナイフを取り出したのは、その「超次元格納」の能力だったか。

 ああいうものから、もちろんもっと物騒な兵器まであるのだろう。

 もしかしたら戦車や戦闘機まで個人で持っているのかもしれない。

 いや、確実にそういうもの以上の超兵器があるのだと俺は思った。

 「超次元格納」は、そういうものの一つだ。

 それに、ナイフもそうだったし、どんな超兵器でも冴姫は巧みに操れるのだろう。

 兄貴が今日俺に教えてくれたことは、俺の想像もつかないもっと恐ろしいものがあるに違いない。

 でも、それは今の俺には話せないことなのだ。


 「あのさ、兄貴」

 「なんだ?」

 「これから俺ってどうなるの?」

 「ああ、そのことだがな。お前を隔離して守ろうという意見もあったんだがな」

 「そうなのか」


 それはちょっと嫌だが、当然そういうことも俺は考えていた。

 《特異点》は絶対に殺されてはならない存在だということは、もう理解した。


 「でも、むしろお前が普通の生活を続けることが重要なのだということが判明した。それにそうすることで敵の注目を集めないという判断に落ち着いた」

 「そうなのか!」


 良かったー。

 まあ、その「普通」っていうのがどれほどのものかは分からないが。

 これまでののんびり人生とは違って来るのだろう。


 「お前のことはまだ誰にも知られてはいないし、もちろん冴姫の正体も同じだ。ここでの冴姫の身分は、ある軍事兵器開発研究所の研究員ということで自衛隊の中では認識されている。だから出入りは自由で、いつでも俺と面会出来るのだ」

 「さっき、すげぇ敬礼だったぜ?」

 「それは機密の研究員という肩書のせいだ。自衛官には絶対に失礼な態度を取るなと厳命している」

 「そういうことなのか」

 「闇絵は俺の副官、来栖は大手芸能事務所の人間で、今日は自衛隊の慰問コンサートの打ち合わせで来ていることになっている」

 「へぇ」


 だから来栖さんはイタTシャツを着ているのか。 

 兄貴が席を立った。


 「いろいろ今は不明なことは多いだろうけどな。今日の所はこれで終わりだ。今後の状況によってお前にももっと話すことがあるかもしれないけどな。当座は冴姫と一緒にいてくれ」

 「まあ、とんでもない話だけどなぁ。でも、取り敢えず俺は自由にしてていいんだよな?」

 「そうだ、むしろそうしてくれ。それにそうすることでお前に余計な耳目が集まらないことにもなる」

 「分かったよ」

 「まさか誰も《特異点》が普通の生活をしているとは思わないからな」

 「他の国では違うのか?」

 「まあな。特定されているのは数人だけだが、みんな厳重な場所に隔離されている」

 「そうかぁ。俺は幸せだな」


 兄貴の表情がふと翳った。

 でもその理由は口にされない。

 まあ、俺もちょっとは分かって来ている。


 「お前の存在を詳細に知っている能力者はここにいる四人と、あともう一人の《能力者》、それに国の中枢の3人だけだ」

 「総理大臣とか?」

 「そんな代替わりするあやふやな人間では無い。本当の中枢だ。お前はまだ知らなくていい」

 「なんだよ」


 まあ、俺が知ってもどうしようもないだろう。

 話は終わりだと言われ、俺は冴姫と一緒に部屋を出た。





 突然とんでもないことにはなったが、だからといって俺がやらなければならないことは当分は無さそうだ。

 取り敢えず、平凡な俺は普通にしていてもいいようだ。

 じゃあ、綺麗な冴姫と一緒に暮らせるという恩恵だけが残っているわけだぁ!

 あ、まてよ、冴姫は俺の婚約者とか言ってたよな?


 それってぇー、えーとー、そういうことですかぁ?

 いいんですかぁー!

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