Bring them to death
「冴姫ちゃん、情報が集まったの。あいつら、予想通りに秩父の廃車工場に集まってるの。宗ちゃんのマンションのポストにもその場所が書いてある手紙があったの」
私たちはハンヴィーに乗って向かっていた。
助手席のココロちゃんが来栖が調べた「関東旧車會」の戦力を教えてくれる。
「ココロちゃん、敵の武装は分かる?」
「今言おうとしたとこなの。マローダー3台に重機関銃XM806 LW50とスコーピオンとグリフィン(※いずれもミサイル)を積んでる。数はどれも2セット。RPGもあるけど、多分一杯。アサルトライフルやガンも多いってことなの」
やはり連中は一般人は手に出来ない兵器を持っていた。
13カ所に分けて隠されていたようだが、それらを秩父に移動したようだ。
「装甲車もあるの。1128 ストライカーMGSなの」
「へぇー」
M68A2 105mm戦車砲を有し、防弾性能も優れた車両だ。
同程度の口径の砲の至近射撃にも耐え得る装甲を持っている。
およそ歩兵の扱う銃火器では破壊出来ない。
「他にもプレデター(※無人攻撃機)が7機。もう局地戦を始められるの」
「大したもんだねー」
恐らく警察では対応できず、自衛隊であっても場合によっては厳しい。
本格的な戦闘になればだが、それだけの武器でゲリラ的に展開されては苦労するだろう。
表向きの日本では本格的な重火器を使った戦闘は想定していないためだ。
それに法的な問題もあり、自衛隊は他の国の軍隊のように行動出来ない。
「警察も知らない間にとんでもない奴らになってたの」
「でも《トリポッド》は掴んでたんでしょ?」
「うん」
「武器の提供元は分かってる?」
「マローダーは正規に輸入されてたの。幾つもの組織を経由してたけど、来栖が全部把握したの。武器は幾つか曖昧な部分はあるけど、どうもロシアが裏にいるみたいなの。「関東旧車會」に暴れさせて、日本の《能力者》の戦力を測ろうとしてたらしいの」
「ほう、なるほど」
「国会議事堂を狙ってたみたいなの。でも馬路がバーローだからここで噴火しちゃったの」
「ロシアはどうしてるんだ?」
「しょうがないから静観みたいなの、でも宗ちゃんを守って私が結構見せちゃったから、ある程度は考えてるかもしれないの」
「あたしや宗ちゃんのことに気付いた?」
「それはないの。でも私たちが本気でぶっ潰したら何か悟られるかもしれないの」
もちろんそれはしない。
「何かカバーは?」
「自衛隊の《裏鬼》が動いたことにするの」
「それはいいね! あの人たちは結構知られてる特殊部隊だし」
「そうなの。だから通常戦力でぶっ潰せば多分問題無いの」
《裏鬼》であれば、特殊な攻撃力も敵に納得させられる。
日本の極秘の軍隊であり、全員戸籍が消されていて正体は掴めない。
非正規戦闘を繰り返し、主に海外で活躍しており世界中の軍関係者が注目している。
極秘部隊ではあるが、もう日本の軍事勢力であることは共通の認識だ。
日本の《能力者》は、《裏鬼》のことだ考えている人間も多い。
それだけ超絶の戦闘力を有した部隊だ。
ロシアが動いたのは、昨年発見された日本の南洋でのレアアース泥土の発見だろう。
ほぼ中国が独占していたレアアースを日本が輸出国となる可能性があるためだ。
それに莫大なレアアースにより、日本のAIを中心としたコンピューター開発が飛躍的に進む。
今やAI開発は次の世界戦略に必須のものとなっている。
ロシアは何とかそれを阻止し、出来ればせしめたいと目論んでいるのかもしれない。
そのために障害となる日本の《能力者》たちのことを知りたがっている。
周一郎さんはその動きを前から見張っていたのだ。
今は世界が今後の資源を争奪していく時代に向かっている。
各国が核兵器を上回る超兵器を開発し、実戦に投入出来るまでになっていた。
日本ももちろんそうだ。
それが《能力者》であり、私が日本の筆頭でもある。
そして日本と幾つかの国では《特異点》の存在を知っている。
《特異点》を喪えば、その国は恐ろしく弱体化することになる。
互いに《特異点》も《能力者》も把握はしていないが、その存在があることだけは知っている。
今回は宗ちゃんや私のことが敵に分かったわけではない、偶然だ。
だけど私は宗ちゃんの《特異点》としての能力が発揮されたのではないかと考えている。
周一郎さんにもそのことを話したが、絶対に誰にも言うなと言われた。
《特異点》の存在は喪えば連鎖的に国や組織、また技術開発などを崩壊させるものだとは分かっているが、《特異点》自体の能力についてはまだよくは分かっていない。
でも日本では早々に宗ちゃんが《特異点》ではないかと目星を付けていたことから、宗ちゃんの能力についてある仮説が立てられていた。
宗ちゃんは他者に多大な影響を及ぼす。
まるでその人間の運命の回転を速く大きくするかのようにだ。
宗ちゃんに出会った人間は何か大きな物事に出くわし、更に宗ちゃんが好きになった人間は大きな功績を挙げる道に進んでいる。
だから今回の「関東旧車會」との揉め事も、何か宗ちゃんに関わることのような気がしていた。
日本の中で大きな戦乱を生み出そうとしていた「関東旧車會」が、今日潰されることになったのだ。
「《裏鬼》は実際に動くの?」
「最初だけ。EMP(電磁パルス)爆弾を打ち込むことになってるの。規模は半径500メートル。だから私たちは念のために2キロ地点で一旦待つの」
「わかった。でもこのハンヴィーは対EMP対策がされてるんでしょ?」
「もちろんなの。でも《裏鬼》といえども信頼し切ってはダメなの」
「うん、そうだね」
来栖の調べでは「関東旧車會」はプレデターを始め最新の攻撃兵器を持っている。
しかしそれらは電子基板を内蔵しているので、EMPの電磁破壊攻撃で使えなくなるはずだ。
一部の装甲車などで対策があるかもしれないが、ほとんどの最新兵器は無効になり、単純な銃火器による攻撃のみになる。
私とココロちゃんならば、遊園地で遊ぶに等しい。
もうすぐ、血の饗宴が始まるのだ。




