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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
関東旧車會

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25/27

来栖

 冴姫たちと入れ替わるように、来栖君が病室に入って来た。

 なんだか物凄い笑顔だ。


 「来栖君!」

 「こんちわっす! ケバい冴姫がいないんで、自分が宗三さんを護衛するっす」

 「ああ、そうだってね。よろしくお願いします」


 来栖君は今日は綺麗な淡い水色のスラックスに、上は魔法少女がプリントされた長袖のイタTシャツを着ていた。

 この格好は来栖君の趣味だったのだろうか。

 服装がイタ過ぎてアレだが、来栖君は美少年だ。

 それなりの格好をすれば、相当モテるだろうに。

 180センチで長い茶髪を額の上で左右に分けて垂らしている。

 顔は整ったイケメンで、濃い眉の下の目は少し窪んで切れ長だ。

 鼻は尖って唇は若干薄く、色が赤い。

 全体に俺と同じく痩せて見えるが、見えている手の甲は筋張って力が強そうだ。

 来栖君は手土産にフルーツ籠を手にしていた。

 防衛省の兄貴の部屋で会った時は冴姫と罵り合いあまり良い印象ではなかったが、今目の前にいる来栖君はとても礼儀正しく優しい少年に見えた。

 冴姫への対抗心はあるようだが。


 「これ、お見舞いっす」


 見ると千疋屋の包装紙であり、高級品だ。


 「おい、そんな気を遣わないでよ」

 「いいえ、宗三さんの傍にいれるなんて光栄っす」

 「困ったな。でもありがとう」

 「嬉しいっす!」


 来栖くんに座るように言ったが、来栖君はそのまま洗面台に行って果物を洗ってからカットしてくれた。

 手慣れた様子でメロンを皮を厚めに残して果肉をカットしていく。

 もちろんタネも綺麗に取り除く。

 随分と贅沢な食べ方だ。

 そして皿に盛り付け、イチゴと皮を剥いて種を取ったビワを乗せて行く。

 綺麗なフォークを突き刺して俺に差し出した。


 「どうぞっす」

 「ありがとう! 果物なんかあまり普段は食べないから嬉しいよ」

 「良かったっす」


 来栖君ははにかみながらも嬉しそうに微笑んで下を向いた。

 ほんのりと頬まで赤く染めている。 


 「こないだはすいませんっした」

 「え?」

 「初めてお会いして、憧れの宗三さんの前で冴姫と遣り合っちまって。どうもあいつを見ると頭が真っ赤になって」

 「そ、そうなんだ。仲が良くないんだね」

 「まあ、あいつのことが嫌いなわけじゃないんですけどね。あいつはいい奴で、結構優しいし」

 「え、そうなの?」


 そうは見えなかったが。

 メロンもイチゴもビワもとても甘く瑞々しかった。

 俺は来栖君にもフルーツを勧めた。

 量が多いからだ。

 来栖君は礼を言って自分のフォークを出して来た。


 「でも、あいつが宗三さんの護衛に就くって決まってから、どうにも頭に来て」

 「どうして?」

 「自分が護衛したかったっす! 自分、何があっても宗三さんを守るつもりっすから!」

 「そうか、ありがとう」

 「自分、《暗殺者》っすから!」

 「そうだってね」


 来栖君が興奮している。

 ここで自分のことなんか話してもいいのだろうか?


 「どうして俺なんかの護衛に就きたかったの?」

 「だって、宗三さんっすから! 俺、昔っからそう思って、あ、何でもないっす……」

 

 来栖君が突然黙った。

 どうしたんだろう。


 「冴姫とはそのことで仲違いしてるのかな?」

 「まー、そういうことっす。だから冴姫の護衛が決まった時に冴姫と遣り合ったっす」

 「え!」

 「でも冴姫は最強っすから。見事に潰されましたっす。1か月は動けなくって」

 「そんなに!」


 冴姫が容赦ない人間なのは何となく知っているが。


 「自分もそこそこ強いっすけど、あいつは桁違いで。でもちゃんと手加減はしてくれたっす」

 「1か月も動けなくて?」

 「自分も必死でしたけどね。冴姫には到底敵わないっす」

 「そうなんだ……」


 何とも言い難い。


 「でも、あいつは料理とか全然ダメじゃないっすか! 自分、料理も家事も全部得意っす! 宗三さんの御命令なら何でも従いますっし!」

 「いや、命令なんかしないよ」

 「あの、夜のお世話だって!」

 「全然いらねぇ!」


 なんなんだ、この子!

 来栖君は真剣な顔で真直ぐ俺を見ている。

 本気なのかよ!


 「まあ、自分も冴姫が宗三さんの傍にいるのは正解だって分かってるっす。でも何かあれば自分、こうやっていつでも来ますから」

 「あ、ああ、ありがとう」

 「普段もなるべく宗三さんの近くにいます。冴姫とココロがいますから安全ですが、自分もいつでも」

 「そうなんだ。でも無理はしないでね」

 「はい! やっぱ宗三さんは優しいっす!」

 「いやいや」


 来栖君がニコニコした。

 なんかちょっとコワイ感じもあるが、来栖君は間違いなくイイコだ。


 「「関東旧車會」のことはどうなるのかな?」

 「宗三さんに手を出した連中っす。全滅っすね」

 「え?」

 「誰一人生き残れませんよ。冴姫が出張るんですし」

 「いや、そんな……警察とかは?」

 「出番はありませんよ。あいつらの拠点は調べて全部冴姫に渡してるっす。多分半日もかかりません。ココロまで一緒に行ったんですから、もっと早いっすよ」

 「それじゃ全員……」

 「死ぬっす。憐れに、残酷に、容赦なく死ぬっす」

 「……」


 まだ十代半ばの来栖君がそんな怖いことを言うのは辛かった。

 俺は冴姫たちを止めるべきなのだろうかと思った。

 確かに俺の命を狙った連中だが、でもそれだけではないことを思い出した。

 冴姫の命も奪うつもりだったのだ。

 もちろん最初に手を出したのは冴姫だ。

 しかし、俺にとって冴姫を殺そうとする連中を許すわけには行かない。

 しかもココロちゃんまで殺されかけたのだ。

 あの時の怒りを思い出した。

 絶対に許せない。


 「宗三さん、コワイお顔になってるっす」

 「あ、ああ、ごめんね。俺も連中を許せないと思ってさ」

 「当然っす。自分も行きたいくらいですっす」

 「そうか」


 全員死ぬのか。

 それは恐ろしくもあったが、仕方が無い。

 俺も一緒に背負うことになる。

 その覚悟はあった。

 そして自分が変わったことに気付いて驚いた。


 おい、いつから俺は人が死ぬのを何とも思わなくなった……

 これまで殴り合いの喧嘩すらしたことが無かったのに。


 「大丈夫っす。俺が宗三さんのお傍にいますから」

 「え、ああ、そうだね」

 「あの、自分、宗三さんのことが好きです!」

 「え?」

 「自分のことはお好きに使って下さい!」

 「いや、いいよ」

 「来る前に綺麗にしてます!」

 「はい?」

 「冴姫は多分、そういうのは苦手っすから!」

 「……」

 「あ、一応自分のももちろん綺麗にしてますっす!」

 「!」

 「宗三さんのがついたって平気っすから!」

 「!!!!」




 冴姫、ココロちゃん、早く帰って来て……

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