ココロちゃん 戦う
部屋を出るとココロちゃんはすぐに周囲を見渡し、インカムで誰かとずっと話していた。
他の誰かからの情報を確認しているのだろうか。
下に降りると、マンションの玄関前にでかいバイクが停めてあった。
「これに乗るの」
「うん」
美しい黄緑色と黒のツートンカラーで、フロントカウルが前に尖っていてカッコイイ!
タンクとカウルの下に「Ninja 」と書いてあるのが見えた(※カワサキ・ニンジャH2 SX タンデム仕様)。
「あ、忍者だ!」
「うん、あたし忍者だからなの!」
「そうなんだぁー!」
ココロちゃんが嬉しそうに言った。
俺がロゴに気付いたことが嬉しいらしい。
車体には排気のパイプと反対側に、何かゴツイ箱が付いている。
俺はバイクのことも全然分からないが、何のための箱なのだろう?
ぶら下げてあったフルフェイスのヘルメットを一つ渡された。
被ると俺の頭がピッタリと納まる。
俺のサイズに合わせてあったようだ。
まあ、日本を裏から支配し俺を守るために冴姫のような人間まで寄越した組織だ。
万事抜かりはないのだろう。
ココロちゃんに言われるままバイクにまたがった。
ヘルメットにスピーカーが付いているのか、ココロちゃんの声が明瞭に聞こえた。
「腰に手を回してしっかり掴まるの」
「はい!」
ココロちゃんの柔らかなお腹に手を回して身体を密着させた。
するとココロちゃんの背中に何か堅い板のようなものを感じた。
腰から肩甲骨のあたりまであるようだ。
そこに違和感を感じながら、逆に腕が前でココロちゃんの柔らかいものに腕の上辺が触れた。
その下で手を組む。
この辺でいいのかな?
「あんたくっつき過ぎなの」
「ご、ごめん……」
「ドサクサに紛れてオッパイ触ったの」
「いや、そうじゃなくって……」
バイクに乗るのは初めてでよく分からなかった。
「冴姫ちゃんが言ってた性欲は人一倍ってほんとなの」
「おい!」
そういうんじゃねぇよ!
ココロちゃんがエンジンを回し、バイクは前に吹っ飛んで行く。
車では感じない直接の強烈なトルクだ。
急なGが俺の身体を後ろへ引き剥がそうとするので必死に掴まった。
四谷見附の交差点を左折して新宿通りに入り、そのまま新宿方面へ走る。
「もう来たの」
ヘルメットの中にココロちゃんの声が響く。
ちょっと緊張を感じる。
俺の口元にもマイクがあるようで、互いに大声を出さずに会話出来るようだ。
何が来たのかは分からないが、ココロちゃんに聞いた。
「大丈夫なの?」
「マズイの」
「エェーー!」
訳も分からず、俺も周囲を見渡した。
四谷三丁目の辺りで反対車線の車から銃身が伸びていた。
ココロちゃんが右手を振ると、その車がバラバラになる。
ココロちゃんの手から、銀色にキラキラと光る何かが見えた。
攻撃しようとした車はワゴン車だったが、バラバラになって赤い何かに染め上げられて後方に過ぎた。
あの赤いものは!
「おい、あれって!」
「黙るの」
「はい!」
どうしていきなりワゴン車がバラバラになったのか分からない。
急に鋭利な刃物で斬ったように車が解体したかに見えたのだが。
しかしすぐに、今度は後ろから銃撃される。
ココロちゃんがバックミラーを見ながら回避している。
左右に蛇行し、間に他の車両を挟んで行く。
「頭を低くするの!」
「うん!」
俺は言われるままココロちゃんの身体にしがみついて頭を出来るだけ下げた。
後ろの車が銃撃されて左右に吹っ飛んで行く。
そしてついに後方の攻撃している車が露わになった。
ココロちゃんがボタンを操作すると、俺の足元の箱から何かが飛んでった。
ズッグアァァーーーン
凄い爆発音が聞こえ、後ろで噴煙が上がっている。
「なにあれ!」
「ジャベリンなの」
「じゃべ……」
「なんでもないの」
「そんなことないよー!」
もう後ろの攻撃は無くなった。
というか、何も走っていない。
今の爆発で道路が破壊されたせいだ。
俺たちは甲州街道へ入り、そのままひた走った。
俺たちは新宿の高層ビル街に入り、右折して今度は青梅街道へ入った。
今のところ追手は見えないし攻撃もされない。
高層ビルを左に見ながら進んで行く。
有名ハンバーガー店の前でココロちゃんが停車する。
ココロちゃんが降りて何人か並んでいる列の後ろに付いた。
順番が来て、ココロちゃんはカウンターで注文しようとした。
俺はココロちゃんに後ろから声を掛けた。
「ここが安全な場所なの?」
「お腹が空いたの」
「え?」
ダブルチーズバーガー3つとポテトのLサイズ2つとコーラ。
「全国でこのお店が一番美味しいの(※行き付けの歌舞伎町のバーで本当にそういう噂を聞いた)」
「そうなんだ。でももう大丈夫なの?」
「はぅ!」
あれ?
ココロちゃんは注文を取り消し、またバイクに跨った。
随分と乱暴に発車し、俺はコロちゃんにしがみついた。
「宗ちゃん、急ぐの!」
「う、うん!」
さっきよりも密着し、ココロちゃんのいい匂いがした。
手荒い運転で俺は何度も身体が上下に動き、ココロちゃんの柔らかな胸に腕がぶつかった。
「このヘンタイ、なの!」
「だってぇ!」
ココロちゃんは背がちっちゃいが、意外とオッパイは大きい。
「冴姫ちゃんに言いつけるの!」
「やめてぇ!」
俺たちは中野坂上の交差点に向かっていた。
そろそろ車両が込み始める。
あの山手通りとぶつかる交差点はいつも車が込み合う。
もう攻撃は無いが、終わったのだろうか。
全然そんなことは無かった……




