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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Boy Meets Gal : 双方ともとんでもないというお話

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《tripod》トリポッド

 「もちろん君も分かっているだろうが、君や冴姫のことが外部に漏れれば敵対する側も相応の準備をすることになる。そうなれば大きな混乱や戦闘を招くことにもなりかねない」

 「はい、理解しております」

 「戦争も在り得る」

 「え!」


 なんだよ、ソレ!


 「言葉通りの意味だ。もはや世界はそこまで行き付いている。核戦争はもう可能性が低いが、そうではないより壮絶な戦争が起こる可能性がある。もしも実際に勃発すれば、核戦争以上の犠牲者が出るのは必至だ」

 「そ、そうなんですか」


 理解は出来ないが、何となく想像は出来た。

 デパートの地下の駐車場でのことは、冴姫が一瞬で人間を破壊出来る力を持っていることを俺に示した。

 恐らくあんなものではない大量破壊が冴姫には可能なのだ。

 俺は見たことも無いし具体的な説明も受けていないが、分かる。

 それは冴姫が持っている「雰囲気」だ。

 俺にはその人間の「大体」が分かる。

 これは一つの才能だと思っている。

 もちろん考えていることが分るとか、相手をコントロールするようなものでは無いが、その人間がどういう人なのかが分かるのだ。

 だからこそ、突然押し掛けて来た冴姫のことも信用したし、今日聞かされたとんでもない情報も受け入れはした。

 今、榊常務の言ったことが真実だと思うのは、俺が榊常務がどういう人間かを認識しているからだ。

 この人は信頼出来る人で、俺に嘘は言わない人に間違いない。

 俺と冴姫のことを心底から思っている人だ。

 本当に日本のことを考え、そのために動こうとしている人なのだ。


 昼食休憩の時間はとっくに終わっていた。

 他の新入社員はもう新人研修を始めているだろう。

 しかし俺と冴姫は特別な扱いなのだ。


 「さて、やっぱりもう少し神楽坂君の状況について話しておこうかな。これは「組織」の方からの要請でもある」

 「そうなんですか」

 「今も話したように、君は特別な人間で、関わった人間に大きな影響を与えると聞いている」

 「そうなのですか?」


 榊常務は《特異点》という言葉は使わなかった。

 それは、榊専務が「組織」の全てを知らされていないことを示している。

 先日兄貴から聞いたことはやはり最高機密なのだ。


 「だから君は国家的に守られる立場にある。それはいいね?」

 「はい。実を言えばよくは理解しておりませんが、なんだか特別な立場であることは何となく」

 「うちで君を預かったのは、特殊な能力を持った貴重な人材だからだ。日本国家にとって実に有用なね。だからうちでも最大限の体制で君を保護し、君のために出来るだけのことをするつもりだ」

 「ありがとうございます」

 「それが日本国家に尽くすための道だと思っている。何かあれば何でも私に言いたまえ」

 「はい、本当にありがとうございます。ところで冴姫はどういう立場なのでしょうか?」


 一応榊常務に冴姫の認識を聞いておきたかった。

 昨日聞いた周一郎兄貴との違いを把握したかった。


 「冴姫は私も以前から知っている。国内でも有数の護衛のスペシャリストだ。まだ若いが戦闘力は相当に高いよ」

 「はあ、そうですね」


 大体分かった。

 榊常務は愛国心に満ちており、それ故に「組織」との繋がりもある。

 だが俺や冴姫についての正確な情報は与えられていない。

 もちろんそれは榊常務が信頼出来ないということではなく、あくまでも俺たちの正体が高度な機密になっているためだ。

 ある程度の情報は開示されているのだろうが、俺が聞かされたのはもっと上のものだということも分かった。

 それでも榊常務は誠心誠意で俺を守ろうとしてくれている。

 やはり最初に感じた榊常務への信頼感は揺るがない。

 そして「組織≒学園」も俺たちの行動に支障の無いように環境を整えているということだ。

 特に冴姫に関してだ。

 以前から榊常務に冴姫を引き合わせていたのは、冴姫がどういう人間かを自分の中で設定させるためだろう。

 人間は重大な秘密を知った時、それに対して疑おうとしないものだ。

 自分だけが知る秘密は、それ以上のものがあるという想像力を止めてしまう。

 恐らくはその段階で留めておくことで外部へ漏洩することを防ぐことになっているのだ。


 「あの、「組織」とは何なんでしょうか?」

 「私も詳しくは知らない。私などは末端にもならない者だからね。「組織」から指示を受けているだけの人間だ。もちろん私は全てを捧げるつもりでいるがね」

 「はい」

 「仮に私が「組織」と呼んでいるのは本当の名前を知らないからだ。その程度の人間だと思ってくれていい」

 「いいえ、榊常務には本当にこれからお世話になります。全面的に信頼しております」

 「ありがとう」


 「Tripodトリポッド、それが正式な名称よ」


 冴姫が突然言った。

 榊常務が驚いて椅子から立ち上がった。


 「私などがその名前を知ってもいいのですか!」


 榊常務は先ほどのフランクな冴姫への態度を変えた。


 「ええ、榊さんは宗ちゃんを全面的に引き受けてくれた。だから《トリポッド》も機密レベルを上げて今後の協調の密度を上げたいと考えたわ。おめでとう、榊さん。これからあなたは一層日本のために尽くせるようになる」

 「ありがとうございます!」


 俺にはさっぱり分からん。


 「トリポッドはラテン語で「三本足」という意味よ。これ以上は今は話せない」

 「それで構いません。ああ、そうか、私も神楽坂君に近付いたせいですね」

 「その通りよ。あなたの運命も必然的に変わる。世界の秘密に近づいたわ。そのお覚悟を」

 「はい!」


 冴姫と榊常務の関係性が今一つ分からない。

 最初は親し気にしていたのだが、今は冴姫の方が上の立場に立っている。

 でも俺はそのことよりも別な側面に意識を奪われていた。

 俺は《特異点》や《殲滅者》の名称は聞いたが、また《トリポッド》かよ!

 なんなんだよ、それ!

 聞いちゃいけない名前だけガンガン出て来て、意味はさっぱり分からん!


 おい、世界の秘密ってなんだよー!

 俺、普通の人間なんだけどー!





 俺は榊常務の前なので、鷹揚にうなずいていた。

 冴姫がそれを見て、ニコニコして俺を見ていた。

 勘弁して下さい……

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