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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Boy Meets Gal : 双方ともとんでもないというお話

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榊常務

 思わず笑顔になった俺を見て、榊常務が微笑んでいる。


 「冴姫は望んで君のガードに就くことになった。彼女が希望したんだよ」

 「そ、そうなんですか!」

 「そうだ。世界中で冴姫に命令出来る人間はいない。冴姫にはお願いすることしか出来ない」

 「え、じゃあ兄貴、いや神楽坂周一郎は?」

 「あの方はまた特別だ。だけど冴姫に命令が出来ないのは他の人間と同じだよ」

 「はぁ」


 よくは分からないが、冴姫は自分の意志で俺と一緒にいてくれているらしい。

 ちょっと洗脳やいけない薬品の作用なども考えてはいたのだが。

 そうじゃなく、冴姫は俺の想像を超えてスゴイ人物なのだ。

 冴姫は隣で興味無さそうにしている。

 冴姫の中ではもうとっくに決定されていることだからなのだろう。

 他人の心の中は見えないので、俺が一人で一喜一憂しているだけなのだ。


 「あの、榊常務は「組織」の方なんでしょうか?」

 「一応はそうだ。ただ私は自分が組織の中でどれほどの地位にいるのかも知らないんだ」

 「え、それにしては冴姫のこととか結構な情報を持っているように思いますが」


 多分だが、冴姫のことを知る人間は少ないはずだ。

 それを知っている榊常務が組織での自分の立場も知らないなど、あり得るだろうか。

 榊常務は苦笑していた。


 「君には不思議に思うのだろうけどね。でもそれが「組織」なのだ。ほら、私は「組織」の正式な名称さえも知らない。でも私は自分が必要なことは知っている。「組織」とはそういうものなのだと思ってもらうしかないね。日本を裏から支え支配していると考えてもいいけど、君の想像を超えた存在だよ」

 「はぁ……」


 「とにかくだ。今後は一緒にやっていくことになる。宜しく頼む」

 「はい!」


 返事はしたが、まだ話を呑み込めてはいない。

 それを榊常務が気付いて俺に聞いて来た。


 「何か聞きたいことがあるのならば遠慮なく言いなさい。応えられることは教えよう」

 「あの、私は今後どのような立場になるのでしょうか?」

 「うん? うちの社員じゃないか」

 「そうですが、冴姫は榊常務の秘書ということで表面的には……」


 榊常務が突然笑いだした。


 「ああなんだ、そういうことを気にしていたのか。まあ、無理はない」

 「はい?」

 「いや、普通だよ。冴姫も僕の秘書としてちゃん働いてもらう。もちろん緊急の時や冴姫の判断でそれは如何様にも変わるがね。それと君も同じだ。君は普通にどこかに配属されるよ。そこでちゃんと働いてくれたまえ」

 「え、じゃあ、仕事が出来るんですか!」

 「当然だよ。まだ正式な発表では無いが、研修での君の成績は優秀だから、多分第一貿易部になると思うよ。ああ、これはまだ秘密だからね」

 「第一貿易部!」


 第一貿易部というのは、和田商事の最重要部署だ。

 欧米との貿易を担当している部署で、有体に言って花形だ。

 会社の中で最も優れた人間が集まっている部署と言ってもいい。


 「それじゃ私の《特異点》とかというのは」


 俺が言いかけると榊常務が手で制して止めた。


 「いかん、二度とその言葉を口にしてはならない。君はまだ自分の立場がよく分かってはいないようだね」

 「す、すいません!」


 そうだった、本当に気を付けなければ。


 「一応全体は常に見張ってるよ。周囲2キロはクリーンだよ」


 そう冴姫が言ったが、榊常務は眉間に皺を寄せている。


 「何事も注意はし過ぎることはない。気を付けなさい」

 「はい!」

 「君は人と関わるのがいいのだ。大事に隔離するのではなく、ある程度の流れの中で活動して行く必要がある。君と関わった人間は、恐らく多くの場合多大な影響を受けるだろう」

 「はい?」 

 

 何の話だろう?


 「まあ、これは話しておいてもいいだろう。我々は量子コンピューターの分野で世界最高の研究成果を挙げている」

 「そうなんですか?」


 俺の全く知らない分野だ。


 「これは東京大学の古川教授が構築した「光子演算装置」が画期的な性能を実現したのだ」

 「そうなんですか」


 知らねぇ。


 「古川健吾、この名前に憶えが無いか?」

 「ん?」


 なんか聞き覚えがある。


 「君の所属していた少年バスケットボールチームの監督だった人だよ。古川教授は今もバスケットボールを趣味で続けておられる。君のこともよく覚えているそうだぞ?」

 「なんですってぇー!」


 はっきりと思い出した。

 そうだ、俺が小学生の頃に所属していた子供向けのバスケチームの監督だ!

 古川監督は俺のことを可愛がってくれ、よく自宅にも呼んで夕飯などもご馳走になっていた。


 「神楽坂君と関わった人間は大きく変貌を遂げる。古川教授は当時大学院生だったが、君との話が後の光量子コンピューターの発想に繋がったそうだ」

 「俺、そんなこと全然話してませんよー!」


 つい「俺」と言ってしまった。

 でも榊常務は気にしておられない。


 「君とアニメの話をしていたということだ」

 「アニメ?」

 「異世界転生のものだったようだ」

 「ああ!」


 それも思い出した。

 当時俺が大好きだったアニメで、主人公が異世界に転生しながら何度も時間を巻き戻してやり直して最後は成功するというストーリーだった。


 「君が「最初から同時に全部の経験を出来ればいいのに」と言ったそうだよ。古川教授はその時に「量子もつれ」についての全く新たな発想を得たそうだ」

 「全然分かりません!」

 

 榊常務が大笑いした。


 「まあ、理解できる人間は少ないだろう。とにかく君はそういう人間なんだ」

 「どういうー!」

 「君は他人を変革する。しかも大きく成長させるのだ。それが《特異点》なのだ」

 「!」


 じゃあ、他にも俺が親しくなったり関わった人間は変わっているのだろうか。

 そういえば先ほど美鶴が聖職者を目指しているとか聞いた。

 でも、俺がこれ以上聞きたくは無かった。


 「今日はここまでにしよう。急にいろいろと君が知らないことが起きているだろうからね。今後少しずつ消化していくといい。それに大丈夫だろうが、ここでの話は全て機密事項だ。他で話してはならない」

 「分かりました」


 でも俺は随分と緩い拘束だと思った。

 何しろ日本の国家機密に触れたのだ。


 「念のために言っておくが、君の行動は全て監視されている」

 「そうでしょうね」


 そこは諦めていた。


 「だから君の不用意な言動は、相手に重大な状態に陥れる可能性を忘れないように」

 「!」

 「君が機密を漏らせば、聞かされた人間を危険に晒す。分かるね?」

 「はい!」


 なんだそれ、怖いじゃねぇか!

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