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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Boy Meets Gal : 双方ともとんでもないというお話

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14/27

「学園」

 家に戻ってからがまた大変だった。

 重たい食器をジープから出して何度も部屋まで運んで行く。

 今度は冴姫も手伝ってくれたが、冴姫は何も重そうな雰囲気は無い。

 俺の倍以上も持ってる。


 「おい、あの格納の能力は使わないのか?」

 「ダメよ、こういうのはちゃんと自分で運ばないと」

 「そういうもの?」

 「そういうもの!」


 そういうものらしい。

 また何往復かして、なんとか全部部屋に運び込んだ。

 最後の荷を出すと、ジープは再びアストンマーチンに変わった。

 一瞬だ。


 「早いな!」

 「そうじゃなきゃ戦闘で使えないよ」

 「そういうもの?」

 「そういうもの!」

 

 よく分からん。

 俺は戦闘はもちろん喧嘩だって全然知らん。

 冴姫はご機嫌で包装を解いてキッチンに食器を仕舞って行く。

 俺は空き箱や包装紙の片付けでまたゴミ置き場まで往復する。


 「ねえ、今までのお皿って何か思い出がある?」

 「いや別に」

 「じゃあ、私が仕舞っとくね」

 「ああ、頼むよ」


 捨てるわけではないらしい。

 俺は今後の皿洗いで壊さないようにちょっと緊張した。

 一枚がとんでもなく高価な食器もあるのだ。

 冴姫は整理が上手いらしく、うちの食器棚やキッチンの引出しに綺麗に収納していった。

 俺も手伝いながら、何がどこに仕舞われたかを覚えて行った。


 その晩は伊勢丹の食糧品売り場で買って来たホタテとハマグリ、毛ガニなどで海鮮鍋にした。

 一人暮らしなので鍋をすることもあまり無かったのだが、そのために新たにテーブルコンロまで購入した。

 土鍋は家にあった。

 俺が食材を刻んでいる間。冴姫が鍋を嬉しそうに笑顔で見詰めていた。


 「お鍋なんて久しぶりぃー!」

 「そうか、俺もだよ」

 「ね!」


 なにが「ね」なのか分からないが、俺も笑った。

 冴姫が結構大食いなのは分かってきた。

 自分の量と計算しながら多めに材料を作る。

 他は御飯を炊いただけだ。

 ある程度準備が出来、俺は鍋に水を張って昆布を敷いた。

 沸騰する寸前に昆布は引き上げる。


 「暑くなるまでは、鍋もいいよな」

 「ね!」

 「な!」


 鍋は簡単でいい。

 適当に作っても、大体美味く出来る。

 味の調整も簡単だ。

 冴姫に味噌ベースにするか醤油ベースにするか聞くと、味噌がいいと言う。

 水炊きにしてポン酢でもいいのだが、俺も何となく味噌にしたかった。

 味噌を溶き、食材を入れて行く。

 毛ガニは足だけ切って入れ、豪快に二杯の胴をそのまま入れた。

 いい出汁も取れるだろう。

 ホタテ、ハマグリ、タラ、そして白菜、マイタケ、春菊、シメジ、大根、ニンジン、焼き豆腐。

 今日冴姫が買ってくれたノリタケの器で食べた。


 「おいしぃー!」


 冴姫が嬉しそうに笑った。


 「あたしね、お鍋って好きなんだ」

 「そうか」

 「でもね、なかなか食べる機会は無いの」

 「どうしてだ?」

 「だって、一人が多かったし」

 「そうなのか。ところで冴姫って今までどうしてたんだ?」

 「うーん、8歳の時に「学園」かな。今から2年より前のことはよく覚えて無いけど」

 「え?」


 また謎の「学園」が出て来たが、この時も詳しくは聞かなかった。

 ただ、何かの特別な施設であることは分かる。

 冴姫は飄々と話している。

 だから聞けば答えてくれたかもしれないが、何だか俺の方が聞きたく無かった。


 「両親のことはほとんどね。「事故」の後は「学園」でしばらく寝てて、その後で訓練とかして」


 冴姫は「事故」と言った。


 「どんな事故?」

 「うーん、よく覚えてない。でも相当なものだったらしいよ」

 「そうか……」


 またもや何か気に入らない感じがしたのでそれ以上は聞きたく無かった。


 「「学園」はいろんな設備があってね。それで助かったみたい。元気になってからは訓練とかもしたかな」

 「普通の学校みたいな勉強は?」

 「ああ、あたし普通の学校知らんから」

 「あ、そうか。例えば教室でみんなで一緒に勉強するとかさ」

 「10人くらいいたかな。でも一緒に何かするってあんまし無かったかな」

 「みんな子供?」

 「うんそう。大体あたしと同じくらいかな」

 「大人は?」

 「結構いたかなぁ。訓練の時もいたし、他にもいろいろ。広い場所だったのは覚えてる。大きな建物が幾つもあって、地下も深かった。演習場も広かったな」


 「その「学園」で具体的に何をしてたんだ?」


 思い切って聞いてみた。


 「それはよく思い出せないかなー」

 「まあ、そっか」


 やはり秘密の施設なのだろう。

 冴姫は本当に記憶を消されているのかもしれない。

 そして今も「学園」は稼働しているのかもしれない。

 《因子》を持った子供たちを集めて……


 「あ、昔のことはよく覚えてないからね。場所も覚えてないし。覚えてるのは、ここ2年くらい? 闇絵さんとかココロちゃんとかと仲良くなってからかなー。しばらく一緒に暮らしてたしね。中野の一軒家。みんなお仕事で結構いなかったけど」

 「そうなのか」


 思わず重い話を聞いてしまった。

 特殊な経歴だとは思っていたけど、予想以上だ。

 記憶を操作されているのか、それとも俺には話せないことなのかはまだ分からない。

 俺が暗い顔をしてたためか、冴姫が笑って言った。


 「あのさ、別に辛いことは無いんだよ? あたしって前向きだからさ。今は宗ちゃんと一緒に暮らせて嬉しいし」

 「そ、そうか」

 「宗ちゃんは?」

 「う、嬉しいよ! 最高だぁ!」

 「うん!」






 冴姫が嬉しそうに笑った。

 その笑顔の向こう側には、数年分の記憶しかないのかもしれない。

 俺はそのことが無性に悲しかった。

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