episode 2
「あの、、っ、、すみません、、。」
私は恐る恐る聞いてみた。
ちゃんと聞こえたようで、彼女はちらりとこっちを見た。
ーーーーえっ、、ずっとこっちを見てくる。気まずい、、。
見た目、同じ年か年下であり、顔が驚くほど整っていた。
私はコミ障の中、必死に言葉を絞り出す。
「あのぉ、、い、いつもここにいるんですか、、?」
「・・・。」
「そろそろ暗くなってきたし、帰りませんか。」
「・・・。」
「ひとり、、?」
「・・・。」
「、、、。」
普通に地獄だ。
ーーーーどうすんだよこれ。
この場合、相手もコミュ障なのか、外人か、マジでやばい人かのいずれかだ。
だが、日が暮れて岩の上にいては危ないよな。
「一緒に帰りませんか、、?」
「・・・。」
「、、、。」
私は藁にもすがる思いで手招きした。
そしたらゆっくり岩から降りて、こちらへ歩いてきた。
身長が思ったより低く、腰上辺りまで海水に浸かっていた。
私は、海の中で転ぶと危ないと思い手を差し伸べた。
彼女も私の手を至極弱い力で握り返してきた。
砂浜に上がってから聞いてみた。
「あの、、どうやって帰るんですか、、?」
「・・・。」
「私バスなんです、、。てか、ここ徒歩かバスしかないですよね、。」
「・・・。」
「、、。もしかして地元民ですか、、?」
「・・・。」
「、、。バス乗りましょうか、、。」
「・・・。」
そんなことをひとりで話しながら帰り道を上がっていく。
最早独り言と言っても過言じゃない。
というか、濡れたままではバスに乗れないな。
まぁ、白なので濡れててもあまり目立たないか。
私は彼女に薄手の上着を着せて、バスを待った。
暫くお互い無言を貫いてバスがやってきた。
鳥のさえずり、遠くの波の音まで聞こえるほど辺りは静寂であった。
私は、話しかけてもどうせ答えて貰えないということを知っていた。だから、もう話しかけもしなかった。
だが、意外と無言の時間も気まずくなかった。
私にとって珍しい事だった。
1度どこかで逢った様な感覚だった。
田舎だからか、時刻表を見るとバスの間隔がもの凄く広い。が、結構ちょうどいい時間にやってきて良かった。
私が先に入り、彼女が後に続く。
スマホのSuicaをかざして入るが、入った後に私は気づいた。
彼女は何も持っていないのだ。
私は''Suicaをかざして整理券を取る''という意味不明な行動をして乗り込んだ。
1番後ろの席へ2人で座り、暫くして聞いてみた。
「お腹すいてますか、、?」
いつも通り返事は無い。
ここはお魚が新鮮で有名だ。私は数回行ったことのある、私的に美味しいと思うお店に連れて行ってあげようと思った。
勿論彼女の好みも、アレルギーも、宗教的なものも知らないのだが「日本人なら誰でも寿司は好きだろう」と言った変な仮説に則ってみた。
バスの中での会話はそれきりで、最寄り駅に着いた。2人分運賃がかかるのは中々なものだ。半分学生の私にとっては痛手だが、それ以上に難問を解いているような感じがして楽しかった。
まず課された問題は、彼女の口から音を聞く事だ。
どうにかして彼女と話さなければ意思疎通が出来ない。
その為に、私はご飯に連れていくことにしたのだ。