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医務室に着き、ソファに座らせてもらった。やっと解放されたと、軽く体を伸ばす。医務官は上級生、騎士科の実技授業に付き添っているらしく、不在だった。
「仕方ない、勝手ながら応急処置を僕がするよ。」
ブレアはそう言うと、手際よく薬布と包帯を薬棚から取り出すと、失礼。と私の足元に屈んだ。靴を脱がせ、薬布を足首に当てる。
「ヒャッ」
不意打ちの冷たさに、変な声が出てしまった。ブレア様は少し驚き、私の顔を見る。そしてにっこり笑って大丈夫だよ。もうすぐ終わる。と声をかけてくれた。
包帯が巻き終わるところで、ユリウス様が保健室に来た。
「ユリウス様!?講堂に居なくて大丈夫なのですか?」
「問題ないよ。カイルが私の代わりに令嬢達の相手をしてくれている。それより、足は大丈夫か?リリ。」
カイルとは、ゲームの攻略対象で、魔術科の生徒、そして王太子様の右腕のような立ち位置の人だ。ゲームに1人はいる遊び人タイプで、毎日色んな女の子と過ごしている。
カイルルートでは、ヒロインとカイルは早めに両想いになって婚約するんだけど、それでもカイルは他の女の子達と一緒にいるのよね。婚約して最初の方は我慢してたヒロインだけど、ついに限界が来てカイルと大喧嘩してしまう。
カイルに何故他の女の子と一緒にいるのか聞くと、王太子様の参謀のような役割もしてることを明かされる。そして今のままではヒロインを悲しませるだけだと気付いたカイルは、王太子様に参謀役は辞めると伝え、ヒロインだけを愛するようになる。
カイルルートの悪役令嬢はカイル親衛隊の皆さん。と言っても直接何かをする訳ではなくて、毎日カイルと一緒に居ると言った具合なので、意地悪等はない。
ただ、ヒロインの事を見下してる程度…それもどうなの?
「ええ、少し捻っただけですわ。歩行に問題ありませんでしてよ。」
ならいい。と告げるとブレア様に視線に送り、にっこりと微笑む。ブレア様も微笑み返し、暫く沈黙が続く。何この空気…二人の間に火花散ってるように見える。
「じゃあ私は講堂へ戻るとしよう。君達はどうする?」
「僕はリリアンヌ嬢ともう少しここに居るよ。立てるようになったら2人でそっちに向かう。心配ない。」
ユリウス様が軽くため息を吐き、ブレア様がさらにニコリと笑う。二人の間で何が行われたのかは分からなかったが、少し不穏な空気を感じた私は、迷うことなく3人で講堂にもどることにした。




