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何故、私?本来だったらここで、一緒に入場して来た攻略対象が
ちょうど音楽も鳴り始めた事だし、どうぞお手を。
なんて言ってファーストダンスを踊るシーンのはずだ。ユリウス様の場合はそれを見て嫉妬したリリアンヌがダンス終わりヒロインに声をかけるのよね。
素晴らしいダンスでしたわ。ですけれど、婚約者のいる相手とのファーストダンス。図々しいのでは無くて?
ありがとうございます!ですが今日は婚約者は関係ないと先生方も言っておりますし、大丈夫なのでは?
なんてヒロインちゃんが答えるからリリアンヌが逆上して手に持ってたジュースをぶっかけるのよね。どっちもどっちだとは思うが、それはダメよリリアンヌ。
「リリアンヌ嬢?踊ってくださいますか?」
ゲームを思い出し、浸っていると、突然現実に戻される。そうだ、ブレア様は男だからユリウス様と踊らないのね…
誘われてしまったし、断れる雰囲気では無いので、仕方なく受ける。喜んで。私はそう答え、持っていたグラスを給仕に渡し、ダンスフロアの方へエスコートされながら歩く。
周りは少しざわついている。リリアンヌ様はユリウス様の婚約者候補筆頭なのに…なんて思われているのだろう。仕方ない。この学園で二番目に権力が強い人の誘いなんて軽々しく断れない。
お互い見つめ合い、ダンスを踊る。
「君はユリウスに愛称で呼ばれているよね。」
「えぇ、お茶会などで幼い頃から顔を合わせておりますので、気付いたら呼ばれていましたわ。」
ユリウス様とはお付き合いで数回踊った事はあるが、ブレア様とのダンスはユリウス様と比べ、柔らかくリードしてくれるので思ったように踊りやすかった。
ユリウス様はなんて言うか、生真面目だから堅実なリードって感じなのよね。
「では、僕もリリと呼んでよろしいですか?」
「へ、?」
耳元で囁かれる。突然の事に驚き、変な声発したと共に足を捻った。が、ダンスの途中なので気取られないように完璧に踊った。
1曲目が終わり、互いに礼をして、私は少し休もうと背を向けた時だった。
「失礼。」
ブレア様はそう一言告げると、私を横抱きにした。何が何だか分からず、瞬きをする。彼が再度耳元で囁く。
「足を怪我されましたよね?医務官へ参りましょう。」
「いえ、別にそこまで酷くは無いので。ってうわぁ」
いきなり歩きだし、私は少し驚いて咄嗟にブレア様にしがみついてしまった。待て待て待てい。これって模擬夜会メイン中のメイン、リリアンヌに意地悪されて足挫いたヒロインが、攻略対象にお姫様抱っこで運ばれるやつ!!!
なんて考えながら、抵抗虚しく、医務室へと運ばれた。




