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しばらくすると、お父様たちが部屋へ入って来た。みんな私の顔を見るなりベットへ駆け寄ってきた。お母様は泣いて喜び、お父様も慈愛に満ちた顔で微笑んでいる。
「私、リーゼン公国にいたはずじゃ?」
そう尋ねると、お父様は私が気を失ってからの事を教えてくれた。お父様曰く、まだ私はリーゼン公国にいるらしい。
ここは公城の客室だそう。私が倒れたと知らせを受け、2人とも仕事を放り出して駆けつけたのだそう。ブレア様は今、エリザベス嬢を尋問してるのだそう。
「本当に良かった。このまま本当に、次こそは目を覚まさないのではないかと、心配していたのですよ。」
お母様はそう言いながらハンカチで涙を拭う。お父様も隣で頷いている。暫くして、2人は私が目覚めたことを大公様夫妻に報告するため、部屋を後にした。
私は暫く療養して、様子を見て王国へ帰ることになった。お父様とお母様はは仕事があるからと、その日の夕方には国へ帰っていった。
そして私は今、大公様夫妻に快気を祝うディナーへ招待して貰ったので、身支度をしていた。
さすがに病み上がりなので、体を締め付けないデイドレスを着ている。そして食事は、体に優しい特別メニューを用意してくれたとの事。
朝に目を覚ましてから、また一度もブレア様には会えていない。
正直、寂しいがディナーになれば会えるだろう。と軽く考えていた。
だがしかし、ディナーにブレア様が来ることは無かった。少し残念に思いつつ、食事会を終え、私は食後の散歩と称して一人、夜の庭園を楽しんでいた。
公妃様が手ずから整えられた小規模の庭園は、とても美しく、ずっとそこに居たくなる安心感がある。少し休憩しようと、中心にある噴水の縁へ腰掛け、噴水に手を入れる。
水の冷たさが気持ちよく、私の心を浄化してくれるような気がする。手のひらで水を転がすように手を動かしていた時だった。
目の前の生垣が風もないのに少し音を立てた。
「誰!?誰かいるの?」
私は驚いてそちらを見つめ、問い掛ける。怖さからか、心臓の脈が早くなる。
「僕だよ。リリ。」
生垣の後ろから顔を覗かせたのはブレア様だった。目を覚ましてから初めて会う愛おしい人。嬉しさから、私は思わず駆け寄った。
そして両腕を首に回した次の時には、唇を重ねていた。
「会いに来てくださらないから、寂しかったのですよ?」
「ごめんね。守りきれなくて、合わす顔が無かったんだ。不甲斐ない僕を嫌いにならないで。」
「当たり前じゃないですか。私はどんなブレア様もお慕いしておりますわ。」
再び私たちは見つめ合うと、当然のように、何度も唇を重ねた。




