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これで確定した。わかりやすい誘導尋問に引っかかってくれてありがとう。と心の中で感謝する。
私が転生者だと素直に明かしたのは、そう、時間稼ぎのため。未来の大公妃になるのに、なんの対策もしていないわけが無い。
向こうが転生者でなくても、何かしらの話で引き延ばそうと思っていたが、これはこれで好都合だ。
「ね、ねぇ!」
「なによ。」
「まだあなたとブレア様がくっつく可能性が無い訳では無いわよ?」
呼びかけた時は訝しげな目でこちらを見ていたのに、ブレア様と結ばれると言われた瞬間、彼女の目は輝いた。
なんとも素直な子なんだろう…詐欺とかに騙されるんじゃ…心配半分、呆れ半分の気持になりつつも、私は説明を続けた。
「その続編では私がブレア様の婚約者で、悪役令嬢なんでしょ?」
そして舞踏会でエリザベス嬢とブレア様はダンスを踊った。そしてここは現実の世界。それが意味することすなわち、ゲームの期間が終わっても、私たちにはその先の未来があると言うこと。
「だから、時間がかかってもブレア様を攻略してみる気はないかしら?私、悪役令嬢頑張るわ。」
「うーん…確かに!あなたって天才なの?」
あ、ホントちょろい、ちょろすぎて心配になるレベル。なんて悠長に考えているときだった。突然、入口のとびらが轟音と共に吹っ飛んだ。
ナイスタイミング!心の中でガッツポーズをして、土煙の立ち込める中、目を凝らした。
そこにはとても見なれた人影が2体。ブレア様とカイル様がいた。カイル様は入口の方にいた、ゴロツキ達を魔法で縛り上げ、引き連れている。
「リリ!!」
「ブレア様!」
ブレア様が私の名前を呼んで駆け寄ってくる。それだけで張り詰めていた緊張の糸が切れ、涙が溢れ出る。しかし私は、完璧令嬢として人前ではしたなく声を上げて、泣くことは出来なかった。
「ブレア様!どうしてその女を助けるのですか!?あの女は自分可愛さに貴方様を利用しているのですよ!」
エリザベス嬢が半狂乱に叫ぶ。
「そんなのどうだっていいさ。僕はリリに惹かれ、そして惚れた。これが事実だ。理由なんて、過程なんて、結果にはなり得ないんだよ。」
それを聞いたエリザベス嬢は眼球が零れそうな程、大きく見開き、頭を掻き毟る。
「信じない。信じない。信じない信じない信じない。!!!!」
そう呟くと、彼女は何かを悟ったように顔を上げて、何かに縋り付くように言葉を発した。
「そっか……私がブレア様のものになるんしわゃなくて…ブレア様が私のになったらいいんだ。なんだぁ!簡単じゃん!!そっかぁ!選ばれるじゃなくて選ぶんだ!!」
先程までの狂気はどこへやら。霧が晴れたような、幼子のような無邪気な笑顔でそう告げる彼女は、先程とはまた違う狂気を感じる。




