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次に目を覚ますと、そこは見覚えのない小部屋だった。口は布を噛ませられ、腕は柱を背に抱え込むようにロープで縛られ、足も同様に縛り付けられていた。
これじゃあ助けを呼ぼうにも呼べない状態だ。何故狙われたのかは何となく予想は着くが、犯人が全く分からない。
無駄に騒ぐより体力温存をした方がいいと考え、静かに待機した。
目が覚めてから数分ほど経った時、目の前の扉が開いた。そこへ入ってきたのは、そう。この国にはいないはずのエリザベス嬢だった。
私は驚きを隠せず、目を見張る。その様子を見て彼女は汚物でも見るかのような視線をぶつけて来る。
「あんた、ほんっと使えない。」
使えないと言われても、何に対しての言葉なのか分からず、首を傾げる。
「あんたに言ってもわかんないだろうけど、殺す前に教えてあげる。ここはね、あたしが主人公の世界なの!ブレア様も、ユリウスも、カイルも、他の攻略者もみんな!あたしのなの!」
その言葉を聞いて、ますます意味がわからず固まる。
「ゲームが始まったかと思えば既にブレア様とあんたが婚約してるし、あんたはあたしをいじめてこないし、バグなの?なんなの?」
「んん!んんんん!」
「何よ。別にどれだけ話しても聞こえないから特別に取ってあげる。」
彼女はそう言うと、私の口の布を取り外した。
「ゲームって、ここは気高き公女は凛と咲くじゃないの?」
「え、?あんたも転生者なの?」
彼女は少し驚いた後、教えてあげるわ。と自慢げに語り出した。
彼女曰く、この世界はゲームの続編の世界なのだと言う。最初のゲームの隠しルートでは、悪役令嬢のリリアンヌがヒロイン視点となり、男体化したヒロインを攻略してハッピーエンドになると言うものだったのだそう。
そのルートあまりにも人気だったプラスヒロインの身分が高すぎて、可哀想な女の子を演出しきれなかった事を考慮され、続編の深窓令嬢と恋の園が生まれたらしい。
そこではエリザベス嬢がヒロインで、攻略者は前作のキャラにプラスして男バージョンの前作のヒロイン。悪役令嬢はそのまま引き継ぎで私、リリアンヌ・ウェルズリーなのだそう。
秋の舞踏会でデビューしたヒロインは学園に編入し、様々な攻略対象と仲を深めつつ、公爵令嬢という権力に邪魔されながらも最後は結婚して幸せになるという物語だそう。
やっぱり、ゲームの世界とは違うと思っていたが、まさか続編の世界だったなんて…
「それでもゲームのブレア様とこの世界のブレア様は違う。ブレア様が自分の意思で私を選んだ。それでいいでしょう?」
「だめ!ダメなものはダメなの!ブレア様が私を選んでくれないとダメ!あたしはブレア様のことがすごく好きなの。だからわざわざ公国まで来たのに。あたしはバグのあんたを消して、元の世界に戻すのよ。」
そう言って笑う彼女の顔は狂気だった。




