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「リーゼン大公様、公妃様の御入場!」
宰相であるロス公爵の案内とともに、お二人がホールへ出て行く。登場と共に大きな拍手が割れんばかりに響く。そして拍手がなり止み、大公様の挨拶が始まる。
「今日は急な夜会であったが、よく集まってくれた。今夜このめでたい日に、皆に紹介したい人がいる。」
「ブレアが隣国、シュタイン王国より連れ帰った婚約者、リリアンヌ・ウェルズリー公爵令嬢よ。未来の国母となる方、心から歓迎致しましょう。」
なんだか紹介のされ方が凄い恭しいと感じるのは私だけだろうか。そう思いながら隣にいたブレア様に目をやると、少し呆れた顔をして首を左右に振っていた。
「母上は嬉しい事があると大げさに言うんだ。あれには慣れるしかない。ごめんね。」
「そうなのですね。大切な息子のブレア様が大切な人を連れ帰ってきたことが余っ程だったのですね。早く行きましょう。私も皆様にご挨拶がしたいですわ。」
前世では嫁姑問題はとても重視されていて、高確率で悪いことが多いが、公妃様のお人柄を見れば優しいのは分かる。これなら安心して嫁げそうだ。
私達は手を取りたい、大公夫妻とは反対側の階段から降りる。思っていたよりも招待客は多く、少し驚いた。
さすが国のトップが開いた舞踏会なだけあり、様々な顔ぶれ。心からの祝福で顔を綻ばす者、嫉妬に顔を歪める者、物珍しいものを見るかのように目を輝かせる者。
そして、私を値踏みするように纏わる視線。これだけは何度舞踏会へ行っても慣れない。デビュタントの日も、そうだった。通常、デビュタントでは婚約者の有無関係なく、父兄がパートナーを務める。
王宮舞踏会で、爵位の低い順に入場するのだが、自慢では無いが私はシュタイン国唯一の公女。一番最後に入場し、今のような様々な視線を浴びた。
正直、あれ以来舞踏会へ行きたくなくて重要度の高いもの優先で夜会に参加していた。
「皆様はじめまして。先程ご紹介にあずかりました、シュタイン王国、ウェルズリー公爵が父、リリアンヌ・ウェルズリーです。」
階段を降りきったところで一呼吸し、カーテシーをする。周囲からは驚嘆の声が上がる。これで大丈夫かしら?とブレア様へ目をやると、凄く愛おしそうな顔をして私を見つめていた。
そういうのは……まだ早いかと……なんで思いながら気づかないフリをして顔を逸らした。
「では、紹介も終わった事だし、今夜は皆楽しんでくれ。ブレアとリリアンヌ嬢へ。」
給仕からジンジャエールの入ったグラスを受け取り、大公様がグラスを上へ掲げるのを合図に、私とブレア様、そして会場中の貴族達がグラスを掲げた。
「「ブレア様とリリアンヌ様へ。」」
貴族達の乾杯の声が、城中へこだました。




