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私達はそのまま手を取り合い、お庭を探索していた。リーゼン公国はシュタイン王国より少し寒い気候なので、植物はあまり育ちにくいそうなのだが、温室のおかげでお花だけは様々な種類を育てているのだそう。
「ここが温室だよ。」
案内されたのは、植物園くらい大きなガラスでできた建物だった。天井も日光がよく入るようにガラス張りで、とても明るい。
「小さい頃に、一度嫌なことがあってね。その日の夜に、母上に連れてきてもらったんだ。それ以来、眠れないとよくここへ来ていたんだ。星がすごく綺麗でね。僕だけの秘密基地のような気分だった。それをリリに見せたくて。」
「そうなのですね。すごく楽しみですわ。」
少し奥まで進むと、見開けた場所に来た。そこには色とりどりの花と、中央に大きなベッドが一つ。
「ここでよく寝ていたんだ。心なしか、いつもよりよく眠れる気がしてね。」
ここで一緒に眠るかい?なんて耳音で囁いてくるブレア様。
「ま、まだ早いですわ!」
「早いということは、結婚したら寝てくれるんだ?」
イタズラが成功したような子供の笑顔。本当にずるい。そんな顔されたら…と悶々としていた私。このまま私だけが恥ずかしいのは嫌だ。と思い少し意地悪をする。
私はブレア様の袖を少し引っ張り、耳を近づける。
「寝るだけで満足ですの?」
「え!?リ、リリ!?」
ブレア様は動揺して顔を真っ赤にしている。仕返し成功。なんて心の中で笑っていると、ブレア様の侍従が私達を迎えに来た。
「失礼します。昼食のご用意が出来ましたので、庭園にあるガゼボへご案内させていただきます。」
彼はそう言って丁寧に挨拶する。ブレア様は行こうか。と手を差し出して、私をエスコートしてくれた。暫く歩くと、花のアーチの先に白いガゼボが見えてきた。中央に置かれたテーブルの上には、パン、スープ、マッシュされたポテトにメインの香草焼き、デザートにとたくさんのフルーツが並べられていた。
私は引かれた椅子に座り、美味しそうな匂いに頬を緩める。ハーブのいい香りが鼻の奥いっぱいに拡がって、食欲をかきたてる。
少し寒い気候のおかげで、大型の獣がたくさん取れるらしく、リーゼン公国での主食は主に肉料理だった。春から秋にかけてはステーキ、冬は保存の効くように干し肉や塩漬けにしたものを食べている。
「さぁ。食べようか。」
「はい。」
この世界での食前の挨拶は神へのお祈りだ。リーゼン公国もシュタイン王国も同じ宗教を国教としているため、祈りの挨拶は同じ。
私達は手を組み、祈りの言葉を告げてから、美味しい昼食を摂った。




