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昼食を摂り終えた私たちは、ボートを一隻借りて湖へ出ていた。
「ブレア様レ見てください!お魚がいますわ!」
目を輝かせてブレア様の方へ視線をやる。ブレア様は一瞬とぼけた顔をしたが、直ぐに笑いだした。その姿に私はどうしたのかと不思議に思いブレア様を見つめる。
「リリは本当に。しっかりしてそうに見えて...ふふっ...湖なんだから、魚はいるもんだろう。はははっ!」
そう言ってツボに入ったのか、大笑いするブレア様。確かに言われてみれば魚がいるのは当たり前だけど...そこまで笑わなくったって...と少し膨れっ面になる。
「ごめんごめん。そんなリリも意外で可愛いよ。」
そう言って優しい笑顔で私の頬に手を伸ばす彼。愛おしそうに私を見つめる彼の顔が近づいてくる。あ...これは...雰囲気でわかる。キスする流れだ。そう感じて私は目を瞑る。
が、期待通りに返って来ない。不思議に思い目を開ける。
「よし、取れた。さっきイチョウの葉が飛んで来てね。」
そう言って意地悪な顔をした彼は、私の髪に着いていたイチョウの葉を見せつけるようにクルクル回した。私、なんて勘違いを...自惚れた恥ずかしさに、手で顔を覆う。
「キス、したかった?」
耳元で囁かれるその声は、とても色気があり、さらに恥ずかしさが増す。
「そ、そんな事ありませんわ!太陽が眩しかったので少し目を瞑っただけですのよ?」
そう言って顔を逸らすが、ブレア様はさらに笑い声を上げて
「リリ、太陽は反対側だよ。」
と私の後ろを指さす。強がりな上にさらに恥をかいてしまった。ほんとにもう、さっきから恥ずかしい事ばかり...穴があったら入りたい。
「もう!ブレア様の意地悪!」
ふん!と顔を背けて腕を組む。そんな私にブレア様は余裕そうな声色で、語りかける。
「大丈夫。どんなリリも可愛いよ。キスは二人きりの時に。今は侍女たちもいるから。ね?」
と小指を立てて私の前に出す。私は侍女達の方をチラリと見て、確かに人前だった...と存在を思い出し、ブレア様の差し出された小指に自分の小指を絡める。
「約束ですわよ?」
そう言って微笑みながら、約束を交わした。そろそろ戻ろうか。と指を離し、再びオールを漕ぎ始めるブレア様。初めての指切りに、嬉しさのあまり私は小指を見つめて微笑んだ。
「約束。ふふ。」




