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ネームプレートを胸元につけ、辺りを見回す。まだ人は少なく、後ろの保護者席に父と母が座っているのが見えた。
見つけるなり、穏やかな顔で笑いかけてくれる2人。私はつい嬉しくなり、立ち上がった。そして2人の元へ行こうと1歩目を踏み出した時だった。
「いって。」
そんな声とともに、私は何かを踏みつけた。足元を見ると、足の下に足。私は慌てて足を上げる。
「申し訳ございません。私の不注意でしたわ。」
「大丈夫だよ。僕も少し足を伸ばしてしまっていたし、お互い様だよ。」
良かった…と一息つく。あれ、でも私の右隣って確かヒロインちゃん…と不思議に思い顔を上げると、そこには屋外なのに煌めく金髪に、エメラルドのような輝きの瞳をした、人あたりの良さそうな丹精な顔立ちの男の子がいた。
誰!?私は思わず顔を凝視する。彼は少し困惑した表情で顔を逸らす。やっちゃった、全然知らない人だ。席間違えた?そう思い当たりを見渡すが、ここが最前列。そしてネームプレートも自分の名前。どういうこと…?思考停止してしまう。
「何をしている。リリ。」
声のする方へ視線を向けると、私の婚約者候補の王太子様、ユリウス様が立っていた。不思議そうに私を見ると、席に置いてあるネームプレートを手に取り、胸元へ着ける。
「ユリウス!久しいね。元気にしてたかい?」
親しげにユリウス様に声をかける男の人。頭の中では、誰?の2文字が回っている。
「元気だよ。ああ、リリ、こちらはリーゼン公国の公子、ブレア・リーゼン様だ。公国の公爵家はシュタイン王国と親戚で、私とブレアは又従兄弟にあたる。」
ブレア・リーゼン。ヒロインちゃんの名前。又従兄弟の設定もそのまま。ユリウス様と私の間に座っている…この方がヒロインちゃんなの!?
「公子様だったのですね。大変失礼を。」
私は姿勢を整え、完璧すぎるカーテシーをする。
「私は、ウェルズリー公爵が娘、リリアンヌ・ウェルズリーですわ。以後良しなに。」
混乱する頭を何とか正常に動かしつつ、自己紹介をしていると、入学式の始まりを告げるチャイムが鳴った。私は慌てて席に座る。
最初は国王様からのおめでたいお言葉。そして生徒を代表し、ユリウス様のお言葉。だが、式の最中、それどころではなかった。
私の頭の中はヒロインが男、ヒロインが男、ヒロインが男!!!その言葉でいっぱいだった。




