28.ブレアside
『そう言えば昨日さ、リリアンヌ様とデビュタントの女の子がちょっとトラブってたの、俺ハラハラしちゃったなぁ。』
『そんなことありました?』
『あったよ!ほら、昨日の舞踏会の初めから思い出してみてよ。』
男爵令嬢は心当たりが無さそうだ。自分がぶつかったことが原因で怒ったトラブルなのに。本気で知らないのか、知らないふりをしているのか。
『今日は婚約者と1曲目を踊り終わって、ラストダンスまでずっと談笑していましたよ?』
『えぇそうなの?見てれば楽しかったのに〜ちょうど3曲目の途中くらいからなんだよ?』
『その時私…婚約者の方が離席されて。少し風に当たりにテラスへ出ようと思い、向かったんです!あれ?あの時何かがあった…?』
男爵令嬢はしばらく考えたが、何も思い出せないようだった。カイルはしばらく様子を見て、適当に話を切り上げて、その場をから離れたところで映像が終わった。
「こんな感じで、男爵令嬢はその出来事を見ていないし、リリアンヌ様と当たった記憶もないようです。」
収穫なし。とため息混じりに話す。やはりそう簡単に分かることでもないのか…と肩を落とした時だった。カイルは続けて話した。
「男爵令嬢からは、魔法をかけられた時のみに感じられる、魔力衝突、軽いものですが見受けられました。」
魔力衝突とは、魔法がかけられた際に起こる、自身の魔力が相手の魔力に抵抗している現象だ。魔力が多ければ多い程、抵抗力が大きいため、魔法にかかりにくい。
そして少ない程、かかりやすく魔力衝突も小さいのだ。だからと言って体に負担は無いわけがなく、個人差にもよるが、魔力量に関係なく、酷い人だと高熱が出てしまう人もいるらしい。
僕も昔魔法をかけられて魔力衝突が起き、三日三晩高熱にうなされたのを覚えている。
「分かった。ありがとう。このまま引き続き調べて欲しい。」
ユリウスは静かに告げると、カイルはそれに答えるように一礼してから羽織っていたローブの内ポケットから背丈ほどの杖を取り出し、床を一突きして魔法陣を出した。
そして瞬く間にカイルは消えたのだった。
「いつ見てもカイルの転移魔法はすごいな。」
「そうだな。」
ユリウスも感心したように少し頷き、僕達は残りの紅茶を飲み干して、その日は解散となった。
「ここは…?」
気が付くと僕は公城の庭園から少し離れたガゼボに居た。そうだ、母上が自ら作られた庭園の一角だ。ここから少し行くと母上の温室があるんだったな。
いつの間にか眠っていたらしく、公国の夢を見ていた。こんな時にホームシックとは。僕の精神はまだ未熟らしい。
温室に入ると、一人の少女が立っていた。彼女はこちらを振り返り、笑顔で名前を呼んで駆け寄ってくる。
「ブレア様!」
そんな。嘘だ。ピンクブロンドの髪に緑の目。そうだ。彼女はエリザベス・ハートン男爵令嬢だ。笑顔で抱きついてくる彼女。
そうか、僕はもう既に夢の中で出会っていたのか。




