23.ブレアside
「少し調べて欲しい事があってね。舞踏会が終わる頃に応接間に来て欲しいんだ。」
「かしこまりました。では後程。」
彼はそう返事をすると、また先程と同様に消えてしまった。さすが、国内一の魔力量を誇る伯爵家の跡取りだ。
会場で姿が見えないと思っていたが、密かにユリウスの護衛をしていたとは。さすが参謀である。
そしてカイルは、現時点で現伯爵をも上回る量の魔力が有るとされており、国内一の保有量だと言われている。透明になる事などお手の物らしい。
染み抜きを終わらせたリリは、公爵に迎えに来てもらい、今日は帰ることになった。そして舞踏会もお開きになった頃、僕とユリウス、そしてカイルはユリウスの執務室に居た。
「カイル、君も今日見ていただろうけど、リリが令嬢にぶつかられて、エリザベス嬢にワインをかけてしまった。」
「ええ、見ておりました。」
「その時の様子を君の魔法で再現して欲しい。」
ユリウスの指示により、今日の一幕がカイルの魔法によって再現される。僕がリリ達に話しかけに行ってすぐのところだ。
後ろから何やらフラフラと令嬢が近づいて来る。そしてリリの腕にぶつかり、リリがエリザベス嬢へワインをかけてしまう。
その瞬間、令嬢は走り去るようにしてその場から消えた。そしてエリザベス嬢の被害者ヅラをした寸劇が始まる。
そもそもおかしな話だ。リリの対面に立っていたエリザベス嬢ならば、後ろの令嬢に気付いていたはずだ。そしてリリが故意にかけてしまったのでは無い事も分かる。
何か引っかかる……
「あの時、ユリウス様の後ろで控えておりましたが、このぶつかってきた令嬢からは何やら禍々しい物を感じました。」
カイルの言葉に僕とユリウスは固まる。カイルが感じた禍々しい物。それの正体に勘づいたからだ。
「闇属性魔法……」
「その通りです。」
僕の言葉にカイルが同意する。本来、闇属性の魔法は使用が法律で禁じられている。精神や身体を操る、そして悪意のある人間のみが扱える、至極危険な魔法だからだ。
「このご令嬢は確か、男爵家の者かと。私たちと同じく学園に通っております。」
「そうか。ならば、君は明日このご令嬢へ接触してみてくれ。それと、可能ならば闇属性魔法の追跡も頼みたい。」
「承知しました。」
カイルは頭を下げると、再びその場から消えた。残った僕とユリウスは、静かに頭を抱えた。
「とりあえず、君はリリと離れないようにしろ。狙われているのがリリだとしたら、これは由々しき事態だ。」
「あぁ。もちろん。」
「私は私の方で引っかかる事を調べておこう。」




