20.ブレアside
秋の舞踏会を翌日に控えた今日、僕は国王へ謁見していた。
「明日の事でお願いがあります。」
「珍しいな。お願いとはなんだ?」
「明日、ウェルズリー公爵家のリリアンヌ嬢へ婚約を申し込みたいのです。」
無理を承知でお願いする。国王は少し考えたあと、ニコリと笑い、静かに頷いた。
「よかろう。最近ユリウスから聞いている。そなたとリリアンヌ嬢の仲がいいとな。」
「リリアンヌ嬢はユリウスと婚約すると聞いていたのですが…」
許可をいただけた嬉しさに思わず飛び跳ねそうになる。が、嬉しい気持ち九割、申し訳ない気持ちが一割あり、尋ねてしまう。
「何も問題ない。同じ年頃の高位令嬢はリリアンヌ嬢だけでは無い。気にする事はないよ。」
優しく微笑みかけてくれる国王。国を統治する器とはこういう物なのか。と、いずれは公国を導く身として、ひしひしと感じた。
国王の許可もおりたことだし、明日が楽しみだ。皆の前で婚約を申し込み、断りにくい状況を作ることは卑怯な手だとは思うが、リリに逃げられたくないため、致し方あるまい。
そして舞踏会当日、急遽前日にエスコートの申し入れを頼んだにも関わらず、寛容に受け入れてくれたリリとウェルズリー公爵には感謝しかない。
この婚約、絶対に成功させてやる。気合いは十分だ。
「リリアンヌ・ウェルズリー公爵令嬢。私、ブレア・リーゼン公国公子と婚約して頂けますか?」
周りの音が聞こえないくらいうるさい心音。緊張して震える手。お願いだ。この手を受け取ってくれ。縋り付くように彼女を見上げる。
彼女は困惑したように瞳を揺らしてから、一呼吸置き、少し顔を赤らめて
「喜んで。」
と手顔で手を握ってくれた。今すぐにでも抱きついて彼女が僕の婚約者だ!!!と全員に叫びたい気持ちを抑えて、立ち上がる。
ありがとう。ありがとう。絶対僕が世界一幸せにする。いや、一緒に幸せになろう!!
その後ファーストダンスを踊り終えた彼女は、御手洗へ向かった。入れ替わりでユリウスが話しかけてくる。
「婚約おめでとう。取り残されたよ。」
「ありがとう。君にもいつか良い人が現れるさ。僕のリリみたいに。」
「僕のって気が早すぎやしないか?」
など、冗談を言って笑いあっている時だった。
「ユリウス様。ブレア様。ご機嫌いかがですかな?」
「ハートン男爵。この度はご令嬢のデビュタントおめでとうございます。」
ユリウスが外面の笑顔で答える。
「ありがとうございます。よろしければどちらか娘のデビュタントに花を添えて欲しいのですが、よろしいかな?」
そう言っているが、視線は僕に向いている。僕は婚約したばかりなので、ユリウスに踊ってもらってください。そう断ろうとした時、後ろからエリザベス嬢が顔を出した。
「あの、ブレア様一緒に踊ってくださいませんか?」
「おぉ、エリザベスはブレア様と踊りたいか。ぜひ踊ってやってほしい。」
断る暇もなく、気づけばエリザベス嬢と踊ることになってしまった。




