17
そして貴族みんなの挨拶が終わり、宰相が前に立つ。宰相は代々、ウェルズリー公爵家が勤めているのである。
そんなお父様は私とブレア様を見るなり、少しだけ顔を綻ばせた。
「本日!デビュタントの令嬢を発表します!エリザベス・ハートン男爵令嬢!」
お父様のセリフと共に、紹介された令嬢がハートン男爵にエスコートされながら、後ろの大階段から降りてくる。白いドレスを身にまとい、ピンクブロンドの波打った髪は、階段をおりる度にふわふわと揺れている。
緑色の綺麗な瞳は何処か不安げに震えていて、庇護欲をそそられる。
「可愛い…」
でもあんな子ゲームに居たっけ?この舞踏会のデビュタントはヒロインだけのはずだ。だが、この世界ではエリザベス嬢1人に変わっている。
エリザベス嬢は下まで降りるとカーテシーをして、男爵とファーストダンスを躍る。音楽が流れ出し、周りの貴族たちも次々と踊り出す。
「お手をどうぞ。婚約者様。」
ブレア様はいつもの様子で私の手を引くと、共にファーストダンスを踊った。
「みんなの前で申し込むなんて狡いですわ。」
「仕方ないだろう。リリはユリウスとの婚約を何回も引き伸ばしていると聞いていたから、早くしないとユリウスに取られると気が気じゃなかったんだ。」
「なっ!私はユリウス様とは婚約しませんわ!」
「だろうね。でも国王様も味方につけて確実なものにしたかったんだ。」
彼はしょんぼりした顔で告げると、突然抱き寄せて来た。
「こう見えて僕は心が狭いらしい。リリだけに。」
耳元で囁かれる。慣れていない私は言葉に詰まり、顔を赤くすることしかできなかった。そしてちょうど1曲目が終わった。
「ちょ、ちょっとお花摘みに行ってきますわ。」
扇子を取り出して顔を覆い、私は急ぎ足でトイレへと駆け込んだ。鏡を見ると、顔を真っ赤にした私。こんな状態では人前へは戻れない。
そう思って扇子で仰ぐが、今までのブレア様を思い出しては顔が赤くなる。模擬夜会で私を誘ったり、噴水で水に濡れたり、婚約を受け入れた時の笑顔のブレア様達が脳裏に浮かんでは離れない。
なんだ、私、ブレア様の事がもうとっくに……好きなんだ…
自覚すればするほど、彼へ対する気持ちが溢れていく。こんな簡単な事だったなんて…早く、早く彼へ気持ちを伝えないと。
私は急いでダンスホールへ向かった。ブレア様を探そうと思っていたが、彼はすんなり見つかった。彼は、デビュタントのエリザベス嬢とダンスを踊っていたのだ。
私よりも楽しそうに。




