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「それにしても、なーんで噴水の中に落ちたのよ。」
軽く診察をしながら、事情を聞かれた。
「えっと…ユリウス様達が歩いてらっしゃるのを見かけて、声をかけようとしたら足元に虫が居て…」
「もう。ドジね。夏から秋にかけての季節の変わり目が一番体調崩んだから、気を付けなさいよ。それにしても、虫に驚いて噴水に飛び込むなんて、アナタ中々面白いじゃない。」
「あははは」
乾いた笑いが出てしまう。何も面白い事無い。寧ろ、虫が呼ばれてないのに飛び出てジャジャジャジャーンなので怖い。
「問題はなさそうね。2人とも入って来ていいわよ〜」
王子様相手にフランクすぎる…それもそのはず、カイルにもあったようにエレンにも隠し要素があり、エレンは実は王弟なのだった。と言っても、先代と侍女の子で、正式にお披露目されず、存在を隠して育てられたため、知っているのは王家くらいだ。
王太子のスペアという重圧が無い分、自分の興味のある事に邁進した結果、学園の医務官と言う職業に収まっただけのことだ。
「リリアンヌちゃんは大丈夫よ。次はアナタの診察をしましょうか。ほらほら、2人とも外で待ってらっしゃい。」
2人を呼び出したかと思えば、強引にカーテンの外へ追いやられる。ユリウス様に至っては2回目。
「相変わらず、雑だな。」
そう言って溜息を吐き、腕を組んで顔を顰める。ユリウス様の気持ちはわからなくも無い。やっと終わったと思い中へ入ると同時にまた外へ出されたのだから。
これじゃあなんのために呼ばれたのか、分からなくなる。実際なんのために呼ばれたのか、分からないのだが。
「茶を飲んで待ってるとしよう。」
ユリウス様はそう言うと、薬棚の隣の食器棚を勝手に開け、茶器を取り出しお茶を淹れる。王太子様が召使いがなさることをしては行けない。と、慌てて私が変わると申し出たのだが、呆気なく断られた。
私が淹れたお茶をリリに飲んで欲しいから。と言われてしまった。そこまで言われると面目を潰す訳にも行かず、私は素直にソファに腰掛けて待っていた。
何より、カップに紅茶を注ぐ出で立ち。私が前世で幾万回見たと言っても過言では無い、イケメン執事のあれだった。何この特別イベント…スチルに欲しい…
なんて眺めていると、ちょっどブレア様の診察が終わり、2人ともカーテンから出てきた。
「アナタってホント、イイ性格してるわねぇ。」
エレンは呆れて頭を抱えている。それに対するブレア様はとても笑顔だった。私はなんの事だか分からず、頭の上にはてなマークを掲げ、静かに紅茶を啜った。
その日はもう放課後という事もあり、4人でちょっとしたお茶会をしてから家に帰ったのだった。




