⑨仲直り
今日は日曜なので朝から圭と鳴二人ともいた。
それでもわたしに引っ付いて寝てるのは鳴だった。圭は理由を付けて自室に籠ってしまう。鳴は遠慮なく私と同衾する。
性格が違うと言ってしまえばそれまでだが、圭は男らしい態度とは逆に女々しかった。鳴は可憐な外見とは程遠く肉食圭女子だった。
会社から圭がいただいてきた休暇はあと半分だった。
鳴とは過ちを犯し掛けたので気を付けないといけない。あの時は老齢女性を想像することで切り抜けた。しかし半勃ちでも入ると聞いたことがあったので危なかった。
「神社に行こう。ここからわりと近いから」私が提案すると二人とも来ると言ってくれた。
五分と掛からず神社に付いた。天皇・徳川家縁の神社とあって威厳があった。長い坂にはエスカレータが付いていて苦労せず本殿まで行けた。
二拝二拍手一拝が正しいらしいので、少し練習してから皆で参拝した。
来た時の逆に赤い鳥居があったそちらから出た。本当はここを通るべきだったのかも知れない。
基本的に赤坂は夜の街なので、ホテルで食事を取り家に戻った。
私はずっと圭の手を握っていた。
家に着くとちょっと眠くなったのでソファーで寝てしまった。一時間後に起きたら圭が右腕を触って遊んでいた。そういえば鳴が来てから一度もキスをしてない。圭に目を閉じる様に言ったら、そうしてくれたので一分ほどキスした。
「長すぎなんだよ馬鹿」と言いつつ求めきていたのは圭だった気がした。
「ラブラブなんですね。圭と溝口先生」寝てると突然鳴がそういうのでびっくりして起きた。
リビングの灯りを付け鳴に飲み物を探したが珈琲でいいという。
「相思相愛だと思いたい。だけど一方的な片思いかも知れない」と鳴に弱音を吐き出してしまった。
弱音を言う相手を間違っている。鳴が私の事を好きなのははっきり分かっていたので。
「一分と言わず十分でもいいのでどうぞ」鳴が目を閉じた。辺りを見回してから一瞬だけ口付けした。
自分の事を特に最低な男とは思わなかった。
二人の争いに巻き込まれている被害者の様な気持ちもあった。でも状況からしたら明らかな二股だったのでそれはもう自重することにした。
夜は部屋に鍵を閉めて誰も入れない。食事もコンビニか出前だった。風呂はわざわざ新橋まで行ってカプセルホテルで入っていた。
週明けからは真彩、恵美、楓にも会える。
歪んだ気持ちを切り替えて普通にしようと思った。一般的にうつ患者は頑張ってはいけないのであくまで普通で。
二週間の最後、日曜日の深夜寝ているとノックがして鳴に起こされた。リビングで圭と一緒に待ってるから来て下さいと言われた。謝罪会見だね、分かったと言って彼女に付いて行った。
夜の薬を飲み忘れていたのでそれをテーブルの上に広げていた。メジャー薬も最近混ざっていたが、酷くなった訳じゃなく作用機序の違うものを混ぜ総量を減らすためだった。
圭が水を持って来てくれた。
だけど圭の顔をまともに見ることが出来なかった。鳴はカフェインレスコーヒーを淹れてくれた。
「このマンションを売却しようと思う。最近の不動産バブルで多少利益が出そうなのでそれを二人への慰謝料に充てたいと思う」
ここまで言う気は全然なかった。マンション価格だってなんとなく不動産屋に問い合わせていただけだった。
ただここは圭の笑顔が見たくて買ったものなので、彼女が苦しんでる姿は見たくなかった。圭の苦しみがメドゥーサの呪いなのか、鳴か私なのかは分からない。その全部かも知れない。
でも圭は真相を何も言ってくれない。
「今はそういう話をしたくてお呼びしたんじゃありません」
鳴が切り出した。
じゃあ何かなと尋ねたらここ最近のことを謝罪したいと言う。やり過ぎだったと。
「私が優柔不断だから付け込まれたので大人の自分のせい」と鳴の言葉を否定した。
アヴリル・ラヴィーンの耐えがたいほどの軽さを聞きたくてCDを掛けた。やはりこのカナダ人女性は軽過ぎて好みじゃなかったが今はこれでいい。
圭は。圭は何も言ってくれないんだろうか。
圭の言葉が聞けなかったのでその場を後にして就寝した。
レッスン室を陸上トラックにして皆に走り込みをしてもらった。体力自慢の私が先頭を走ったが、5kmは彼女たちにはきつかったようだ。走り終えたらクールダウンなのだが、五人なのでストレッチは一人が余る。圭が余ったので私がペアを組むことになった。
圭の身体に触れて良いか迷った。圭は私の彼女で、もう深い仲なのに抵抗があった。だけどなるべく悟らせないように背中を押した。
「体力は皆30点。戦闘中ばてない様に毎日5km走って」
私がそういうと困惑しながらも皆は頷いてくれた。
その直後敵が襲来した。
人型が二体だったので、体力がない皆に代わって私だけ行くと言って出撃した。本気の攻撃だと、地震や嵐で災害警報が出てしまうので物理攻撃にした。
フリッカーの姿勢で半身になり敵が攻撃するとカウンターで殴った。火やビームとかはこの身体には効かない。三発で一体を倒すともう一体は私の真似をしてきた。
敵が巧みにパンチを躱すのでキックもしてみたがあまりダメージを与えられない。すると恵美が際どいスーツ姿で援護してくれた。敵が毒にやられて朦朧としているところで、後ろに回り首を絞めた。腕力が最大限に生かせるのでそのまま殲滅した。
恵美が空から降りて抱きついて来たが、これは普通に嬉しかっただけだろう。だが胸が大き過ぎるので私は恥ずかしかった。
この週は異変が起こった。
週一のはずの敵が二日連続で攻めてきた。一人だけ早く会社に着いていた楓と一緒に私が出た。一体だが怪獣型で硬そうなので私が物理で殴って結界を解いた。昨日覚えたものだ。
楓の注射器の中身がどんどん危険な液体に進化していたので、敵の身体に届くと五人の中では最強だった。恥ずかしそうに私に抱きついてきたが、これは義務じゃないからやらなくても良いんだよと伝えた。
後から来て出番が無かった鳴が、私を喫茶店に誘ってきた。
「最近は圭と学校の話しとか趣味の話をよくしてるんです」鳴がそう言った。
私は家でも会話が殆どなく、それは羨ましいと素直に言った。前の彼女とも一年くらいで別れてしまったので終わりが近づくとこんなものかなと思っていた。
「そんなにのんびりしていないで圭を抱きしめてあげてください!」
いきなり鳴に大声で言われ驚いた。
二人の邪魔したのは鳴じゃないかと思い腹が立った。鳴がいなかったら前のように仲良しカップルで居られたかどうかは分からない。ただ自分に自信のない圭は、鳴の強気に引いてしまったのは確かだからだ。
「そうする。鳴ありがとう」
そう言って支払いを済ませ出て行った。
会社と家まではわりと近かった。
皇居を挟んで反対側だった。電車でもすぐなのだが、車好きの私はマイカー通勤していた。
会社を早目に出ないと圭とは一緒に帰れないので、個人レッスンで直帰しますと言って圭を乗せて帰った。と言っても首都高を環状に回ったり遠回りして。
お台場の潮風公園まで行って缶コーヒーを買ってあげた。レインボーブリッジの直下のこの場所からは、東京タワーも良く見えた。スカイツリーも勿論見えた。
圭の横顔を眺めていたら泣けてきた。君が好きすぎるのに困らせてごめん。これ以上困らせたら可哀そうだったけど後ろからそっと抱きしめた。振り向いてきた彼女の唇を指で触れた。目を瞑ってくれたので口づけした。何度も息継ぎをしながら本当に長い時間掛唇を合わせた。
「お前はまだわたしが好きなのか」帰りの車の中で圭がそう言ったので、お前に振られたら自殺すると言った。重すぎたと少し後悔したが精神疾患を持っているので、あり得ることだから訂正しなかった。
家に帰ったら私が夕飯を作った。チャーシューの代わりに挽肉を入れた炒飯だ。圭が作りたがったが今日はやらせて欲しいとお願いをした。スープだけ彼女に頼んだ。
その晩は久しぶりに一緒のベッドで寝た。
社内で手を繋いで歩く圭と私を見た真彩が、嬉しそうに寄ってきておめでとうと声を掛けてくれた。私はまだ緊張している圭の頭を撫でてあげた。
社内風紀をまた乱すことには抵抗があったが、圭が落ち着くまでは続けようと思う。
鳴には圭しかやはり見えないと謝罪をした。一時的に気持ちが鳴に傾いたのは確かだった。突然気落ちしたりする圭よりも鳴のが安心できるとも思った。でもそういう危うい面も含めて好きだと確信できたから圭を選んだ。
社屋に喫煙所が設置された。今どきの大手町にはここしかたぶん無いと思う。作ったのは社長と私が喫煙者だというそれだけの理由だった。実際には他にも隠れ喫煙者がいて重宝がられた。
「いつまで続くんですかね、怪獣襲来は」
喫煙室で木島社長に聞いてみた。深い意味はないので聞いても良いだろう。
「人気が続けば?」
社長がドラマの人気シリーズみたいなことを言ってきた。だとしたら長くても四年以内に終了かメンバーチェンジがあるなと思いホッとした。圭を重圧から解放してあげたかったからだ。
圭と一緒に帰宅して食材の買い出しをした。ハードチーズやフランスパン、缶トマト等欠かせない食材を中心に買って行った。
その間も圭の手を握って離さなかった。
「薄紫色の下着がないぞ」
圭がそういうので渋々枕の下から出した。圭は少し眺めた後で、それもやるというので正式にいただいた。
その後別の下着を持って風呂場に行った圭だったが、引き返して私の手を取った。
浴槽では久々に私の前という定位置に座ってくれた。
圭が落ち着くまではエッチなことは控えようと考えていたが無理だった。
彼女の胸を両手で包み込んで軽く動かしたりした。動かす度にびくんとするのでだんだん早く動かした。圭の息遣いが少し荒くなると動きを休めた。
凄く欲しそうなのが分かったので圭の全身を洗ってあげ、自分も特急で洗って風呂を出た。脱がすけど一応下着は付けてもらった。
寝室の灯りは間接照明だけにして後は消した。
圭に横になってもらいその上から覆いかぶさった。両手を上に上げてもらい、ブラはすぐに外して彼女の左手に巻き付けた。露わになった乳房を丁寧に吸ったり摩ったりした。
下着はそのままで手を突っ込み、割れ目をかき分けた。クリトリスと膣を交互に弄って暖かいものが溢れて来るのを待った。圭はもう我慢できないくらい盛り上がっていた。
彼女の準備が出来ると手でパンツを下ろし足で足首まで下げ、自分のモノを圭の中に差し込んだ。彼女の中で安らぎを感じてるうちに気持ち良くなり過ぎた。珍しく一人で先にイってしまったのでその後慌てて指で圭をイかせた。
ベッドの中ではずっと身体を撫で続けた。キスしながらそれをやると、もう一回欲しがってしまうので触るだけにとどめた。
翌日会社に出社準備をしながらTVを見ていたらニュース速報が流れた。大手町のあるビルに銃撃があったと。
それは間違いなく我が社だった。




