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⑦All I Want

クリスマスは高級ホテルのディナーに招待した。

私だって今までこんなことは一度しか経験したことがない。

「全部フォークでいいよ。なんだったら箸を頼もう」

フレンチの作法なんて実はどうだっていい。美味しく食べればそれだけでいい。

メインの肉が来るまでパンを食べながら、クリスマスプレゼントを渡した。永遠にこの関係が続けばいいとダイヤモンドのネックレスだった。

かなり重いプレゼントだ。でもそのくらいの覚悟は出来てるから伝わって欲しかった。圭は付けてみようとしたがなかなか難しかった様で、食事が終わったら付けてあげると言った。

「ありがとう正」

珍しく名前で呼んでくれた。

私は圭プレゼントの手編みのマフラーを付けていた。これも重い部類なんだろうが気にしなかった感謝を圭に言ってキスをした。

こんなことが出来たのは二人がもう一線を越えた関係だからだ。童貞と処女には高すぎる壁だ。



年末休みの休暇は敵の襲来で中止になっていた。

空気を読んで年末年始は来ないと思ってたのに律儀に襲来してきた。

代わりに皆で初詣に行くことになったのだが、あの行事は人だかりが凄くて好きではなかった。

しかし全員で来るには最高かも知れない。当たり障りのない行事という意味で。私の横には常に鳴が居た。本来圭の場所なのだが彼女はわりと遠くから見ていた。

私が圭を呼んだので右に鳴、左に圭という構図になった。

「混んでるから人混みに紛れて二人になって帰ろう」と圭にいうと嬉しそうに頷いてくれた。


マンションに戻っても圭は大人しかった。

おせちは圭が作ってくれたものなので美味しくいただいていたのだが、二人で帰ろうと言った時以外は笑ってくれなかった。

「鳴に対する罪悪感ってある」

圭に直球で聞いた。すると彼女は頷いた。


私には無かった。変身ヒロインたちが好意を持ってくれてたとしても、それは年上への憧れで好きではないと思っていた。その壁を越えてきてくれたのが圭、お前なんだよ。

「大丈夫」

圭を励ますための言葉で自分に対してでは無かった。


長期休暇は無くなったが正月休みは続いていた。だが何処かに出掛けても圭の元気は出ない気がしたのでここで過ごすことにした。

いつもの様に圭の下着を抱いていても突っ込みがない。丁寧にそれを仕舞って普通に会話しようと思ったが、いつもより言葉が出ない。

実はもう指輪も用意しているのだが早すぎるし、こんなに静かな圭には渡せない。

一人でベランダに出て都心を眺めていた。幸せだけの日々なんてあるはずがないし、どうせ月日は電撃の様に過ぎ去ってゆく。嫌な過去もあった。それを受け入れはしないが、未来を見ないといけないと思った。もし理想通りにならないとしても。

圭もベランダに出て来た。高所から眺める街を見て彼女は何を思っているのだろうか。

実は私にはほぼ分からなかった。年齢が違い過ぎるし性別も違う。それともまだ鳴の事を考えているのだろうか。珍しく会話がないので余計に分からなかった。


呼び鈴が鳴った。鳴たち四人が遊びに来たのだ。

部屋に通すと真彩だけ振袖だったので圭の服に着替えてもらった。五人の少女が集まるというのは犯罪臭がしたが、仕事柄仕方がないと言い聞かせた。

鳴はやはり私の隣に陣取った。圭以外の三人が複雑な表情で見ていたが鳴は気にしない。圭はベッドの上でSNSの更新をしていた。

ただの生理かもしれないしもっと深刻なのかも知れない。ただ今の圭に何を聞いても無駄な気がしたので放置することにした。

鳴たち四人がベランダに出たので皆の飲み物を用意していた。おやつはポテチでいいだろう。

そうしていたら鳴にベランダに呼ばれた。

「溝口先生は将来圭と結婚するんですか」

「私はそうしたいと思っている」鳴に圭との将来に付いて聞かれたので正直に答えた。

あれ、今日は圭がネックレスしてないと気が付いた。クリスマスイブ以来ずっと付けていたはずなのに。部屋に入りベッドの上に座っていた圭を見て、間違いなくそれを付けていないことを確認し私は家を出た。そして自分だけ浮かれていたことを恥じた。



レッスン前に鳴の勉強を見ていた。

圭と違ってまだ成績が大きくは上がってこなかった。

「圭と何かトラブルあったんですよね。あんな溝口先生初めて見ました」

あるにはあったがトラブルじゃないかも知れない。あの少し前に圭に期待したことが、大きな負担を掛けていた可能性があったと答えた。

「そんなことよりこの問題の答えね。六割程度しか出来てない。解説するから家に帰って全部出来るようにすること」

鳴は違和感を感じた。溝口先生は話をはぐらかすことは滅多にしない真っ直ぐな人だ。相当なトラブルが二人に有ったみたいだと感じた。


警報が鳴り変身ヒロインたちの出撃だ。

圭が使い物にならないかも知れないので、私もポセイドン姿で待機した。

人型一体だが目が赤く光っているしシールドようなものを纏っている。これは普通の敵じゃないと一目で分かった。

「社長、圭とメドゥーサのリンクを完全に絶って於いて下さい。たぶんですが圭は今良くない状態です」そういうと彼は任せて置いてと言った。

予想通り敵に少女たちの攻撃が通らない。毒を盛ろうと楓が突進したがシールドの中に入れなかった。鳴のスティング・ローズも届かない。敵は圭が電撃を放つが全く動じる気配はなく、逆にビーム攻撃をしてきて皆躱すのに必死だった。圭がメドゥーサ化しようとしたがそんな気迫では無理だ。

切り札として私は残して置きたかったが、そんなこと言ってる場合じゃない。わりと東京湾に近かったのでポセイドンが敵を引きずり込んだ。多少津波が起こるかも知れないが、嵐と地震を引き起こし敵を砕いた。


鳴に抱きつかれない様すぐに帰り支度をして車に急いだ。

五人態勢になってからは一台車を呼んでいる。自分も出動しやけに疲れたのですぐに帰らせてもらうことにした。圭と一緒にだ。


帰ると食事も取らずソファに横になった。

正月以降こうしている。一緒のベッドに寝ちゃいけない気がしていた。

冬なのでちゃんと布団は掛けている。けれどあまりにも寂しいので圭の寝るベッドに行った。もうすぐ圭を見納めかも知れないがまだ愛していたから。

あっ、と声が漏れた。圭はネックレスをしていた。もしかしたら夜はずっと付けていてくれたのかも知れない。気配を感じて圭は起きた。

「ずっとそれ付けててくれたのか」ネックレスを触りながら私は聞いた。すると圭は頷いた。


「一人で抱え込まなくていい。一緒に考えよう」圭の小さな肩を抱き寄せると彼女はワッと泣き出した。


圭を侵食するメドゥーサの存在が大きくなり、制御できるか分からなくなってきたという。それで鳴に私を譲って消えようと思っていたらしい。

「譲るとかそういうものじゃないだろ。そうしたところで私は鳴に走らない」

それより圭を助けるためにポセイドンになったんだが、リンク切ってないからもう相当融合してるぞ私は。圭を助けるためなら神話の変な神になっても構わないと私は言った。


やや遠回りしたが圭の問題はほぼ解決した。



昨日の敵に歯が立たなかったことで、変身ヒロインたちは緊急会議を開いていた。

技の強化についてだったが、敵に近寄れなければどうしようもなかった。遅れて事務所から私が休憩室まで降りて来たのだが皆深刻だった。

「溝口先生はどうしてこの間の敵のシールドを破れたんですか」と鳴が聞いてきたので分からないと答えた。

「そういうの考えずに敵を捕まえたので、特に気にしなければいいんじゃ」と言ったら皆の顔が不満そうだった。

真面目に答えなきゃと思って考えたけど、単に強さだと思う。あれを対等の敵だとまったく思わなかったから、海に引きずり込んで破壊したとしか言いようがない。皆は納得はしてないがなんとなく分かると言う顔をしていた。


会議が終わると鳴に呼び止められた。

圭と私に何があったのかきちんと説明して欲しいと。ちゃんと説明しても良かったのだが圭の許可が要ると考えて今は言えないと答えた。



私はこの戦いの意味について少し考えてしまった。

深く考えてはいけないという社訓だが、変身ヒロインたち五人が歯が立たない敵が出てきてしまった。チートな変身ヒーローじゃなきゃ手に負えなかった。

敵は定時になると帰ってゆく。無理して戦う意味があるのだろうか。また我々が出ないでSLBMを叩き込んだらあれを倒せるのか。

そもそも敵が何故沸くのか。変身ヒロインたちとは地球にとってなんなのか。考えたらおかしなことが多すぎる。だからやはり深く考えないようにした。



この圭との生活のために買ったマンション、異常な金額だけあって見晴らしは良いし広かった。

たぶんそうなるまでにはまだまだ関門はありそうだ。

それでも今お風呂の中で圭が前に座っている。以前のように触っていいのか分からないのでお預けだ。まだお互いギクシャクしてるが喧嘩はしなかった。気が強いようで我は全然強くないのが圭だった。いつも誰よりも問題を抱え込んでしまう。だからもっと信頼を勝ち取れるように努力をしよう。


「ところでお前最近溜めてるんじゃないか」

確かにそうだったが大丈夫だよと嘘を付いた。圭が振り向いたので乳房が二つ見えた。その上大きくなったナニを握ってきたのでパニックになった。

男女の仲直りにはSEXが良いとか変な事言うやつがいるが今は嫌だった。もっと仲直りしてからがいい。我慢しなくていいぞと言われたので二つの胸には触った。でもここまでで我慢しよう。


久しぶりに一緒のベッドに寝た。この方がSEXより全然安心した。







 











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