⑥神崎鳴
変身ヒロインたちの強化プログラムを作成してて今日は遅くなった。
23時を回っていたので、明日のために寝てるようにと圭にはメッセージを打っていた。
なのに圭がキッチンテーブルに座って待っていた。
相当眠そうだった。
「早く寝た方がいい。明日だって学校は早いんだ」
そう言ってもなかなか寝てくれない。テーブルの上にはペペロンチーノがあった。最近料理を始めたのでこのシンプルな料理を覚えたんだろう。
やっと寝るというので念のため額で熱を測ってみたら37.8度あった。
救急車に電話しようとする私を見て、圭が大袈裟過ぎと止めた。それでもなんとか手助けしたいのでお粥を作って圭に食べさせた。ふーふーと冷ましてやり、そこそこ冷えたらあ~んと口を開けてもらい食べさせた。
流石に最近はこの程度では赤くなったりしなくなっていたが、嬉しそうに食べている姿が愛しかった。
翌朝、もう圭の熱は下がっていたが会社には嘘を付いて休暇を申請した。これが通るところが良い会社だなと心の底から思えた。
学校に行ってくると言う圭を全力で止めた。ぶり返した風邪のがたちが悪いから、今日は絶対安静にすべきだと。それは納得してくれた圭だったが汗をかいたのでシャワーは浴びたいというので許可した。
脱衣場で圭が脱いだ下着を抱えながら見守っていた。万が一倒れられたら困るからだ。そして圭は風呂場で倒れた。
全身を拭いてあげ新しい下着とパジャマを着せてベッドに横になってもらった。体温計がピっというので見たら38.7度だった。
解熱剤を使うかどうか微妙な体温だったが、圭が苦しそうだったので飲ませた。
ベッドの横に折り畳み座椅子を置き、本を読みながら圭が起きるのを待った。三時間後圭が目を覚ました。
着替え終えてるのを確認して圭が私の方を見た。
「寝てる間になんかしたろ」圭に言われの無い疑念を抱かれた。
「時と場合をきちんとわきまえています。大人なので」
と言っても脱いだ下着を頭に乗せていては説得力がなかった。
汗をかいた圭の上半身を丁寧に拭いてあげた。胸を拭くときはどうしてもいやらしい気持ちになるが、圭が病気なので極力我慢した。
夕方になると圭は元気になって晩飯を作ると言うので、止めさせて寿司を取ることにした。
お吸い物の元があったのでそれを二人前作った。
付き合い始めて数カ月経つがまだ慣れていない部分があった。職権乱用で付き合い始めたものだと思っていた。だから真っ直ぐに私を見つめる眼差しが怖かった。
恵美と楓にコンビもレッスンの成果で複数の技の習得に成功していた。真彩の水攻撃は完成の域に達しつつあって、決まれば敵は身動きが取れない。
対照的に鳴は悩んでいた。センターで決め技を決める立場なのに、圭の火力のが桁違いに高いからだ。相談を受けた私は、根本的ななにかを変えようかと提案した。
「薔薇には棘がある。それを使えば威力が増すんじゃなかろうか」
それを聞いていた鳴が複雑な顔をしていた。が、すぐに気が付いたので慌てて付け足した。
「鳴自身に棘があるとは言ってない。あくまでローズ・レッドの話しだよ」
鳴が気を取り直したしたので練習してみることにした。大きく手を広げ薔薇の花びらを集める、その中には明らかに棘が混ざっているのが確認できた。
『スティング・ローズスナイプ!』真っ直ぐに敵の心臓を貫いて練習は終わった。鳴が空から降りて来て俺に抱きついた。
休憩室で缶ジュースを買っていた時に、鳴はジュースじゃなくて珈琲がいいと言うのでそっちにした。代わりに私は珈琲を止めコーラにした。
今日の成果を見て喜ぶ鳴が私にずっと話し掛けてきた。他の子たちも話し掛けて来るのだが圭だけはもう一回やってくると言ってレッスン場に戻ってしまった。
「圭、今日怒ってた?特に鳴を受け止めてたあたりで」単刀直入に聞いてみた。
「一緒に寝ても何もしなかったお前が、あの程度気にするわけないじゃん」圭の答えは明快だった。
まだ信用がなくて泣かせてしまったことを思い出した。
「鳴のあれは凄かったが、もっと上の技がもう出来ているのでそこも心配してないぞ」
努力家の圭らしかった。
「圭何が欲しい?」クリスマスまで近かったので聞いてみた。
あまりねだり慣れていない圭が考え込んだ。お前がくれる物ならなんでもいいと言うので頷いた。
秋頃から湯船にお湯を溜めていた。先にいただいてくると行って私は風呂場に向かった。
すぐに圭が入って来たので驚いた。初めてだったからだ。
「何驚いてんだ。ここやたらと広いし別にいいだろう」
圭はそう言ったが違うそうじゃないと思った。圭が身体を洗い始めたので身を乗り出して見ていた。前鏡でそれは丸見えな訳で圭も気付いていた。
「すいません。洗わせていただけませんか」敬語でそういうと圭がいいぞと言ってくれた。
背中、腕、脚とよく洗ってそれから前を洗ってあげた。興奮が酷くて明らかにナニが圭に当たっていた。最後に頭を洗ってあげてお湯でよく流した。
二人で湯船に浸かったが圭の胸をずっと触っていた。圭は別に気にする様でもなく、目を閉じてリラックスしていた。
「今度は逆な」
圭は私のナニだけを洗い始めた。小さな手が可愛い。これだけでももうイけるくらい破裂寸前だったがおかずとして乳房を所望したら承認された。その後すぐに出してしまったが。
一緒に暮らし始めてから一人で致すことが極端に減っていた。流石にアレは一人でしたいので我慢が増えていた。おまけに圭を回数限定彼女ということにしたので、目の前に居るのに血涙を流して耐えていた。いつものように圭が脱いだ下着を抱きかかえていたんだが、流石にそれを不憫に思ったのか、増やそうかSEXと圭が提案してきた。
「ダメです。今年度の予算案を守らなくてはいけない」
と私が言うと圭が黙ってしまった。もしかして圭ももっとしたっかりする?と聞いたら圭の顔が真っ赤になった。それを見たらもうダメだったので抱きかかえてベッドに寝かせ致した。
十年前に今の圭に出会っていたら、彼女のことを言葉遣いが悪い年上の美少女という印象だけ持って声も掛けられなかっただろう。
あっという間に流れた歳月。いつの間にか大学を卒業し社会人になっていた。それがいかに幸運だったかを思った。
試験休み中で早くレッスン場に着いていた鳴に、クリスマスプレゼントに何が欲しいか聞かれた。あれは皆に渡すものではなく、特別な人に渡す物だと言いたかったが可哀想なので言わなかった。ハンカチと無難に答えた。
週一の敵がまたやって来た。しかし今度は三体で来た。
「こっちが二人増員したらあっちも増やしてきたな」
私が言うと恵美と楓が先行して変身した。
手を胸の前で組むと、謎の光に包まれ緑の葉に全裸で包まれながらスーツ姿になり戦闘姿勢を取って変身完了。グリーン・フォレストが顕現する。
全裸はまずいのではと思ったが他の子より色気があって良かった。
楓は頭の上で右指を銃のように構えウィンクをする。すると閃光に包まれ右手に注射器、左手は腰に当てて恥ずかしそうに構えピンク・ナースになる。前に問題になったスカートの中身は真っ暗で何も見えない。レッスン場でも確かめたが実戦でも問題なく作動していた。
他の三人も変身を終えたところで真っ先にピンクが敵に突っ込んで行った。
注射の一刺しを受けると敵は泡を吹き瀕死状態だった。
「毒盛っちゃったかあ」
私はそう思ったがこれであと二体に絞れた。グリーンが杖から食虫植物の毒を出し一体を動けなくする。すると電撃でイエローが敵で真っ二つにした。
ブルーは海水を取り込み敵を包み込んでいた。鳴は確実にスティング・ローズスナイプでトドメを刺した。ピンクの攻撃にやられた最初の一体は息絶えていた。
最初に降りて来て私に抱きついてきたのはやはり鳴だった。
鳴が私をロックオンしていたので、他のヒロインたちは遠巻きに見守るしかなかった。
家に帰ると何度目かの溜め息を付いていた。
圭は風呂に入っている。
圭が作ってくれたマトンカレーを食べ、食器を洗っていた。
圭が風呂から出て下着だけでうろうろしていたので、はしたないから何か羽織ってと注意した。圭は言うことを一応聞いてくれたが、パジャマの上だけでボタンも止めてくれない。白い下着の上下がほぼ丸見えなので着て欲しかった。
「怒ってる?主に鳴か私に」
「そういうんじゃないんだ。なんで今更、鳴のやつがお前に拘ってるのかがわかんねえ」圭が言った。
それは私も同意だった。浮気属性がない私を落とすのは、圭に私が振られたタイミングしかない。
「最初にあいつが迫ってたらお前落ちただろ。そのタイミング逃した後じゃ意味ないのにな」圭がそう言ったので激しく反論したが、可能性はゼロじゃないだろ言われ頷くしかなかった。
可憐さを装っていた鳴よりも、親しみやすい圭の方が接しやすかった。
その関係を気に入ってくれた圭に告白されて受け入れた。
その後鳴は反撃に出たが、稚拙なものでそもそも私を好きだとはとても感じられなかったから簡単に振れた。
だが今は小細工なしに好意をぶつけてくれてるのがよく分かった。
圭と付き合ってるから無理と断るのは簡単なようで難しい。そもそも鳴もそれは知ってるからだ。
「想い出づくり?」
と圭に聞いてみたが分からないという。
そんなことより彼女が不安がってるのをなんとかしなくては。
下着姿にパジャマ上だけの圭を膝枕してあげた。それはわたしの役割と圭が言い掛けたが却下した。おしりを撫でたりこれはこれで良かった。
「お正月休み長いから遠くに旅行して圭との想いでをいっぱい作りたい」と言うと圭は頷いてくれた。
鳴は考えていた。圭を捨てて私に走ることは溝口さんに限ってない。あの人は二股もしそうにない。目が圭だけ追ってるのがはっきりと分かる。
だけど彼の中にも悪魔くらいは居るかも知れないとも考えていた。無茶苦茶なことは分かっていたけれど毎回、彼の元に真っ先に駆け付け抱きしめられたいという願望は日々強くなっていた。