Extra Episode 4 IF
香織と佳林は圭と悠、紅葉といつも一緒にいた。
「あの三人と一緒にいるのは外見が似てるからか?ただ彼女たちは変身できるようになって三年以上立ってるから高校生だぞ」
圭たちと同い年で勧誘された二人はまだ14才だった。
気が合うからと二人は言っていたが、私を除けば最強の三人なので少し気になっていた。あと人類の敵を倒すという阿呆な理由で襲い掛かってきたこともだ。
「助けて於いてなんだが、あの二人はほぼ敵だぞ」
圭は直球でそう言った。
私が遊びに行くとすぐに色仕掛けしてくることも気になった。やたらモテはしたが最初から色仕掛けされたことはほぼないからだ、悠を除いて。
自作自演怪獣を東京に出したぞ。
「禁じ手を敢えて使ったのは、香織と佳林の目的と実力を引き出すためだ。あと何もできないふりしてる偽ポセイドンも使う」
嫌がる藤岡偽ポセイドンを戦闘に駆り出し私は見物した。空ではイエロー・メドゥーサ、ミルキーウェイ、ギャラクシーが香織と佳林に張り付き見張った。
双子二人の攻撃は主にビームだった。だが圭はそれを訝しげに見ていて、力を明らかに隠していると感じていた。悠と紅葉もそういう風に見えていた。
藤岡は双子が弱らせたところでようやく出撃し、格闘戦でなんとか勝った、「戦えるのに今まで何もしなかったなお前」
今日は無我夢中だったという藤岡の言い訳を、信じたふりだけしてやった。
「圭、ほぼ敵確定は私も同意したんだが、いつ決戦を仕掛ける?」
「寝込みを襲って殺せばいいんじゃないか、先手取られたらこちらに犠牲がでるからな。と言ったら早速お出ましだぞ」
「さすがにばれるよ、わたしたちの力試してたんでしょ」
香織と佳林にわざと聞こえるように喋った圭の作戦が成功した。
「取り敢えず藤岡と作戦を練る時間だけやる。そうしたらすぐ戦争だ」
カムチャッカ半島近海上空を決戦場所に指定した。我が国の問題は他国を巻き込むべきではないからだと、前回の東京で学んでいた。
「こちらからは圭さんだけでいいんです?流石に怖いです」
悠が不安げにそう言ったので圭の力を信じてくれと言った。
メドゥーサとはギリシア神話の怪物で、ゼウスの娘アテーナ―の神殿でポセイドンと一つになったため怪物にされた少女だ。高位神ポセイドンはお咎めなしというのがこの話の胸糞なところだ。やがてゼウスの子ペルセウスに退治されてしまう。
私がポセイドンになったのはメドゥーサを救うためだった。既に木島社長の最初にして最後の変身姿であるゼウスは倒していた。
「圭用意はできたな、イエロー・メドゥーサの力を見せてやってくれ」
圭は手で丸を作り香織と佳林に立ち向かった。
速度で上回る二人を振り切るのは難儀だったが圭は落ち着いていた。作戦は決まっていたのでその間はライトニングコメットで敵に少しづつダメージを与えた。
「その程度の火力でわたしたちとやるなんて馬鹿なんじゃないの」
二人の煽りも圭は気にしなかった。
一気に距離を詰めると二人は慌てて逃げた。触れてしまっただけで死に至る石化を圭が持っていたからだ。その射程に注意しながら二人は最強の技を繰り出す機会を待っていた。だがそれは圭も同じで技を出させようとしていた。
香織と佳林が手を組み大きな光を作ったところで圭が叫んだ「大鷲ども、急降下だ!」
もともと翼竜だった二匹の速さは魔法少女よりずっと速い。二人を鷲掴みにして大きな傷を与え、動きも封じた。二人の元に石化の刃を付きつけ、投降か死を選ばせた。大技を持ってることを匂わせ続けた香織と佳林の負けだった。
「あとその二匹に傷を付けたら即死だから気を付けろ」
二人の命より大鷲を心配する圭だった。
私は全身を砕いた偽ポセイドンを陸揚げし、さらに腹部を蹴っていた。
みんな、今から二人の変身を解くから受け止め準備をしてくれ。そういうと悠と紅葉が駆け付けて、その他のメンバーは落下に備えた。
悠が同時に二人の変身を強制解除し、真彩と恵美が二人を捉えた。四人存在した魔法少女の数が半分に減った。『木島File』が存在しなければ悠と紅葉だけだ。
一応全身複雑骨折の藤岡もハバロフスクの基地に連れて行った。
変身少女を作ることは容易い、だが七人で充分だったんだ。二人には普通の生活に戻ってもらうと言ったら泣いて嫌がった。
「藤岡は『木島File』を知ってる以上、問答無用でここで殺すが依存はないな」
「あなたのような好戦的な人間が力を手にしたらろくなことにならない」
それはお前も同じだろといって頭を掴んで膝で顔面を蹴り込んだ。
私も変身少女を作れる点では藤岡と同じだった。ただこれ以上彼女たちの数を増やしたくないし、藤岡二号も作る気はなかった。異能の力は抑えられるべきなのだ。なのに全員解除を選択しないのは、人体実験の未来しか私にも彼女たちにも見えないからだ。香織と佳林、藤岡にはそうなってもらうが。
「藤岡、お前は核弾頭二発も身内に打ち込まれて黙っていられるのか。俺はそういうのは我慢できないからアメリカを蹂躙した。正当防衛なんだよ」
藤岡がまだ何かいいたそうなので顔面をパンチした。
「そこまででやめるのです。その人瀕死なんで悠がヒールします」
「馬鹿なのですか藤岡さんは。うちのボスは敵対する者は皆殺し、という危ない思想を持った方なのです。生き残りたければもっと考えて喋るのです」
悠は生きているなら死んでほしくなかった。たとえ藤岡でも。
「藤岡、今後魔法少女を作らないのなら生かしてやらないこともない。ただし約束を破ったら今日よりもっと地獄を見させるが」
いろいろと変身少女隊と私で協議した結果、三人にはこの基地でサポート役で働いてもらうことになった。この城から出ることは当分許さないという条件付きで。敵を赦したことで後悔する日が来るかも知れないが私が背負ってゆく。
藤岡は必要な材料がこの城では揃わないので魔法少女は作れない。だから特別に厳しい監視と体内にGPSを内蔵させた。
「藤岡風呂行くぞ」
彼は怯えながらも私に付いて来た。怖い目に遭わせたから仕方がない。
「前に風呂で香織と佳林見て鼻血だしてたけどあれは演技なのか」
「そんなわけないでしょう。彼女いない歴生きた年数のわたしが、裸同然の二人を見て正気でいられるわけがない。溝口さんが特別なんですよ」
「そうだな。彼女七人とか狂っているよな」
この話をするのは初めてだったので、藤岡は絶句していた。
「藤岡、なんで俺も変身少女を作れるのに作らないと思う」
そう言って胸の傷を見せた。明らかな致命傷ものの傷に彼は驚愕した。
嫉妬で刺されたんだよ、誰にとは言わないが。たった七人でこういうことが起こるんだ、仲間割れもある。100人いたら地球滅亡の戦争が起こるぞ。
「あとさ、香織と佳林だけど魔法少女に戻してあげたいと思っている。みんなの手伝いをしているのに自分たちだけ年を取ってやがて死ぬのは嫌だろうから。だからその前に二人が持ってる必殺技を、悠と紅葉に伝授してくれないか」
「あれは双子だから可能な気がするんですよね。果たして悠ちゃんと紅葉ちゃんにできるかどうかはわかりませんよ」
たぶん大丈夫だと言って、レッスンをしてくれと藤岡に頼んだ。
『7colorsビーム!』
ミルキーウェイとギャラクシーはすぐにこの合体技を習得してしまった。紅葉にとっては実の双子の姉、楓よりも悠のがやり易かっただろう。それくらい二人は仲が良いのだ。攻守盤石なイエロー・メドゥーサが来て、二人の新技を祝福した。
「溝口っちゃん、また造反の可能性ある子を助けちゃったんだね。またブスって刺されちゃうかもだぞ、ほんとバカ」
恵美との情事を終え二人とも着替えてる時にそう言われた、「うん、本当に馬鹿だと思う。言ってくれてありがとな恵美」
そのあと恵美は大きな胸を揺らしてもう一度と迫ったので、そのメロン胸に顔を埋めてからもう一戦頑張った。
魔法少女に戻した香織と佳林を連れて、日本に立ち赤坂のマンションへ連れていった。みんな護衛を買って出てくれたが必要ないと断った。
「随分高そうなマンションですね。ご自身で購入したんですか」
佳林がそう言ったので会社のお金借りて買ったと伝えた。
ベランダから東京の夜景を見ながら、しばらく三人とも黙っていた。
「ここで一緒に暮らしたい女の子がいたんだよ。今も近くにいるけど」
「誰から見ても圭さんってバレますよ。どうしてそうしなかったんですか」
香織はそう言ったが黙っていた。
「そういえば溝口さんは、魔法少女と変身ヒロイン七名全員を側室にしてると聞きました。わたしたちも愛していただけるんでしょうか」
「無理だ。定員オーバーにも程があるので、藤岡に任せるよ」
そういうと二人とも絶対に嫌だと言った。
裏切ったわたしたちを許したあなたがいいと二人が言うので、「許したわけじゃない、二人の今後を考えたら良い未来が見えなかったので復帰させた」
実際はどうなるかはわからないのだが、不死無敵の化け物と思われている我々だから用心はすべきだった。ただ香織と佳林の側室化だけは断じてNoだ。
翌日、海上自衛隊に二人が我が国所属の魔法少女になったことを伝えた。政府にも寄り、今後二度と敵対行動が起こらないよう監視を怠らないよう言った。
しばらくマンションに滞在した頃、二人が私の部屋にやってきた。
「夜這いではありませんので安心してください。今後一生処女のまま過ごしてゆくことには二人とも抵抗があるんです。あれはたまにで良いので恋人にして下さい」
「...いいよ」
双子どんぶりをして翌日ハバロフスクに戻った。
「がに股ですよ、また」
悠が第一発見者だったが、もうしょっちゅうだったので黙っていた。
「随分楽しかったようだな、また」
圭の前では深々と土下座した。
「そのつもりで二人を残したんだろ。だったらそんなに悪いことじゃないだろ」
それはそうだが圭を裏切り過ぎてて...
がに股の二人は大鷲に餌をあげていた。戦闘で痛めつけられたことはもう気にしてない様子で、大鷲と遊んでいた。二人はすっかりここに馴染んでいた。
藤岡についてはまだ人間のままにしておいた。『木島File』を脳で暗記しているなら抹殺対象なんだが、城に軟禁してるうちは危険は少なかった。
「がに股ちゃんたち、城の見学に連れて行ってあげるよ」
そういうと二人とも顔を真っ赤にして怒った、が付いてきてくれた。
「城だけどこういう広いベランダもあって、ここで花を育ててる子たちもいる。香織と佳林も自由に使っていいからね」
「それより溝口さん女性に慣れ過ぎじゃないですか。もう離れられないかも」
佳林は私の説明を聞いていなかった。
女慣れし過ぎの話しは無視して、私は城の設備を見せて回った。最近設置したテニスコートがお勧めだよと言い、他にもスポーツ設備を増やしてる話をした。
数が少ない我々だから、助け合って生きていきたいと願った。仲間割れや諍いは絶対に起こるだろうが、譲り合い知恵を出せば一緒に生きていけると思う。




