Extra Episode 2 小林真彩
先日の約束通り、真彩とニューカレドニアにバカンスに来ていた。
北半球と反対なので1月は最適の観光日和だった。真彩は張り切ってビーチで水着になったが、小さい子ばかり相手にしてたので刺激が強かった。
「ボート借りてちょっとだけ沖まで行こう」
「こうやって外で見ると凄い身体ですね。夜だとあまり見えないですから」
たまたまサーフィンをやっていたのと、格闘技もやっていたからそう見えても仕方がない。だけどこの程度なら他にもいると説明した。
腕を組んで来たので、次期王妃としてはしたない行動は控えるようお願いした。
この島を私が占領してから何年か経ち、フランス系住民は随分と去って行った。
原住民により政治が行われるようになったのは喜ばしいが、観光立国としてやっていけるかどうかはまだまだ危うかった。安定するまでは我々が見届けるつもりだ。
海は果てしなく青く、水平線まで続いていた。雲一つない空もどこまでも青かった。こんな日に真彩と来れたのは僥倖だった。ただ海はわりと汚かった。
ニューカレドニアの拠点は、基地と言うよりただのシェルターだった。必要最小限なものしかない施設だったが、我々来訪時は食事が出る。
「今日はフレンチで良かったね。真彩はどお?」
「おいしいですね。焼きたてパンも良いです」
そう言いながら真彩は何か言いたそうだった。たぶん鳴が王妃になったことで、まだお呼びが掛かっていない彼女は焦っていたのだろう。
「後でラウンジで話をしよう。真彩はたくさん言いたいことが私にあって、なんかそわそわして見えるぞ。ゆっくり聞くからなんでも言ってくれ」
真彩はゆったりとしていて、とても癒し系の女の子だ。だが恋愛に関してはわりと貪欲で、圭や鳴と一緒にいると睨んできたりもする。当然だとは思うが。
「あの、溝口さん。指輪の約束の件なんですが、いつになったら叶えていただけるんでしょうか。それともこれは嘘ですか」
「嘘じゃないよ。このバカンスが終わったら結婚式を行う。ただ第三王妃として、真彩に期待している。数字の順番についてはあまり意味はないよ」
真彩は明らかに不満そうな顔をした。少なくとも二番以上を期待してた感じだ。
「その青の斜めボーダーの水着かわいいよ」
水着を褒めたら嬉しそうな顔はするのだが、昨晩以降ややぎこちなかった。
圭ともう一度相談して、第一王妃から数字を下げていくのをやめようと思った。数字が下の女の子には失礼かもしれないからだ。
「真彩、王妃の件だけど番号を付けるのやめるかもしれない。下の番号をもらって喜ぶ女の子はいないだろうし、諍いの種になるかも知れないから」
すると真彩が横に座って手を組んで来た。この子は一番が欲しいんだよな。
「ただこのことは誰にも言わないでくれ。私が決めるから」
政略結婚させる訳でもないのに、ハーレムをすることにも意味はないかも知れなかった。ただそれがもう既定路線になってるだけだった。国際的信用を落とさないために、3人を限度にしたいが残りの女の子たちが許さないだろう。
「真彩、たまには街に行ってみようか。現地の方々も見てみたい」
真彩も了解してくれたのでわりと賑わってるところに行ってみた。と言ってもたいしたことはなく、わりと庶民的な場所だった。
フランスから解放して、その後あまり政治に口出ししないので私は現地の方に好かれていた。道行く先に握手攻めにあった。真彩もかなり人気があった。
買い物や観光ならやはりフランス関連のホテルに付随する街がいいのだが、地元の方々が自立してくれないと本当の独立にはならない。
「政治はいろいろ動かないといけないから面倒臭いんだ、真彩」
真彩は正妻としていろいろ動きたいと申し出てくれた。
「嬉しいけどまだ敵は消えた訳じゃない。恐らく地下深くだったり、雪山の中にまだ潜んでいるだろう。だから政治は一人でやるよ、ありがとう」
お昼を街で食べた後で基地に戻った。のんびりとラウンジで二人とも過ごした。
夕食の後は風呂だったが、真彩と二人で入った。彼女は背中を洗ってくれたので私も洗ってあげた。二人きりなのでとてもリラックスできた。
二人きりなので真彩が下着姿で私の部屋に来たので、終わったあと冷えるからと言ってバスローブを渡した。どうせ脱いでもらうけど一応それを着てもらった。
事を終えると私は喫煙室に行き煙草を吸った。真彩は外からにこにこと私をみながら、何か言ってるように見えたので煙草を消して外に出た。
「わたしは溝口さんと一緒に、二人でどこかで暮したい。ダメですか?」
「今あるすべてが壊れてしまう。現実的じゃないからダメ」
そんな話をしたあと、肩を抱いて寝室までもどり腕枕をしてあげた。
寝てる間に敵に気配がした。かなり遠いところだ。
「行くぞ真彩、久々の出撃だけどちゃんとやろう」
場所はパリだった。悠に連絡しフランス政府から正式な以来と代金の振り込みがあるか確認してもらった、「まだです。どうしましょう」
悠の言葉で皆にドイツの城へ撤退の指示を出した。
「怪獣二匹だから自分たちでなんとかなると思ったのかな」
ラウンジでTVを点けるとパリの様子が映し出されていた。爆撃機、戦車、ミサイルで攻撃しても怪獣はびくともしない。するとやはり依頼が来たので現金を用意しろとフランス政府に指示した。こちらが超音速を遥かに超えるのですぐに取りにいくと伝えると、10分以内に用意するからすぐに敵をなんとかしてくれと言ってきた。
バカンスで機嫌がいい真彩が早速二匹を捕縛した。悠と紅葉が現金を取りに行っても全然支払いが済む予定がない。提携国ではないのでどうしようか悩んでいたら、一度真彩の捕縛を解除し城に戻ることにした。
「依頼はしたはずだ。何とかしてくれ」
フランス大統領から直接電話が入ったが、友好国でも提携国でもないので支払いの確認が済むまで出るつもりはないと突っぱねた。
「このままでは市民の犠牲が大変なことになります。特例でなんとかしてあげられないでしょうか。私は出たいです」
真彩がそう言ったが、王女になるんだから規律は守ってくれと言った。
15分後お金の用意が出来たというのでやっと我々は出撃した。悠は本当に馬鹿でかいアタッシュケースを持って出て行った。
「弱い方の怪獣だけど、ビームや火炎は吐く。命懸けてるんだよね」
私はそう言ってポセイドンとなり突っ込んだ。
『大彗星!!』圭は私ごと怪獣に電撃を放った。
「圭、焦げたぞ!まあたぶんなんともないけれど」
私はそういうと同じく焦げた怪獣を殴る蹴るで倒した。
「皆さんお疲れ様。深夜割り増しで代金いただいたのでなんかご褒美あげます。取り敢えず今日はどの部屋でもいいから寝てください」
真彩には今日か明日またバカンスに戻ると伝えた。
「翌朝フランスから特別機じゃないけど、ファーストクラスが全席空いてる飛行機が取れた。それでのんびり戻ろう」
そう真彩に言うと嬉しそうだった。
一日空いたので圭と鳴に相談を持ち掛けた。
「真彩が第三王妃を嫌がっている。この数字外しちゃだめかな」
鳴と圭は考えていたが、私に一任すると言ってくれた。
とんでもなく責任があって、大変な役職を引き受けてしまったと多少後悔していた。七人の少女たちの夫になるわけで、気が遠くなりそうだった。七倍頑張るのは不可能なので、かなり彼女たちへの扱いが雑になることもあるだろう。
いつも一緒に居られる訳じゃないから、彼女たちは不満が募り浮気することもあるだろう。それが当たり前と達観していられるだろうか、しかし怒るのは理不尽な気がする。七股男としてだらしなく生きればいいんだろうか。
「真彩、やっぱり男女は一対一がいいはずだよね」
真彩はその質問の返事に困ってしまった。先日断られたからだ。
「溝口さんは責任を持ってみんなを幸せにする、そう誓ったはずですよね」
それは間違いがなかった。
「例えば週に一回しか会いにこない夫に耐えられる?真彩は」
「倦怠期夫婦なら丁度良さそうですが、嫌ですかねわたしは」
「そう思ってみんなに会いに行くのを増やしてるんだよ。一日三人の時もあるんだけど、しんどいけどみんなのためだから無理して頑張ってる」
真彩に当たるのは間違ってる。だけど不安が止まらなかった。
「個人差があるでしょうから、みんなに丁度いい訪問回数を聞いて置くね」
真彩は私の意見を受け止めて、手伝ってくれようとしていた。
その後は二人で飛行機の窓を眺めていた。時々真彩がキスを求めたので口づけをした。真彩が好きなのは確かで、毎日でも会いに行きたかった。
「飛行機の中で横になれるっていいですね。ほんとは大金持ちだけに許された特権なんですよね。ちょっと実感が湧かないです」
「我々がその大金持ちなの。それに下で座っててもあまり変わらない気がする」
本当にそう思っていた。毎日仕事をすることもゲームだけしてるニートも、同じ速度で時間は過ぎてゆく。特別なことは我々の不老でこれだけは誰も真似ができない。だけどこれすらも幸せを保証するものではないはずだ。
「縛るつもりはないんだけど、真彩は私と一生いてくれる?」
真彩は私の唇に唇を重ねて、はいとはっきりと言ってくれた。
私は真彩のパジャマのボタンを外して、その大きな乳房を掴んだ。ファーストクラスだからって人がいるんですよと彼女に言われたが、この席の一番いいところはこれしかないでしょうと言ってそのまま続けた。
バカンスを数日続け、ハバロフスクに我々は戻った。
「お帰り、楽しめたか」
圭の言葉に二人とも頷いた。
鳴と同じ教会で、真彩と永遠の愛を誓った。出席者は恵美だけだった。
「良かったねえ、真彩。次はそろそろ私かな」
「サイコロで決めてるので気長に待ってね」
私は恵美に誤魔化した。次は悠と紅葉に決まっていたからだ。
真彩が着替えたあと、以前私が振った場所に行って口づけをした。




