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【32】対決変身ヒロイン

部屋に入ると鳴が着替え中で、白いパンツが良く見えた。

ぽかぽかと叩かれたが、先に着替えを終わらせた方がいいよと言った、「ノックしないでなんなんですか。セクハラで訴えます」

鳴はそういうことはしないのに、抗議の意味を込めてそう言ってきた。

「ごめんごめん。いきなり開けたらいい景色が見えると思って敢えてね」

完全に開き直った私の態度に鳴は睨んだ。

「恋人の悠ちゃんが帰ってきたんだから、彼女に見せてもらってくださいね。わたしはお払い箱になるんだから」


「鳴が望まないなら悠には帰ってもらう。それでいい?」

「そんなこと言われたら何も言えないじゃないですか」

鳴は困惑しながらそう言った。

その後鳴の手を引きながら食堂に向かった。ずっと鳴と食事をしていたので迎えに来たのだった。

サラダ、パン、魚料理、コンソメスープとハードチーズ。朝にしてはわりとしっかりとした食事だった。鳴と一緒に取る食事は身体にいい気がした。


「毎日誘ってもらって嬉しいんですが、他の子はいいんですか」

「これはぱんつのお詫びだけどね」

鳴はいちいちはぐらかされてからかわれるので、いい加減本気で怒りそうだった。

「からかってごめん。鳴がいいから誘ってる。嫌なら一人で食べるよ」

そう言われて鳴の表情が笑顔になった。


「じゃあ今日の本題。圭と紅葉が某国と契約したという話があった」

「商売敵になったの?」

「それならいいけど、その国の軍事力として活動始めたら潰します」

軽いノリで言っているけど、本気でポセイドンとして溝口先生が動いたら二人の命が危ない。溝口先生の本気が伝わってきて震えた。



「カーディガンとブラ、下もシースルースカートにしたら脱がしやすいかな」

鳴は情事の時の衣装をチェックしていたが、「そうじゃないでしょ!圭と紅葉と戦うことを避けることを考えなきゃ」

一人突っ込みをしてたが事態は深刻だった。

恵美に相談しても、潰しちゃえばいいじゃんで済まされてしまう。


「悠ちゃんこんにちわ」

「鳴さんこんにちわ」

もう二人の仲間だった悠ちゃんに相談するしかない。

「皆離れた部屋で住むことになったけどもう慣れた?」

「慣れないです。悠は正さんと一緒に住みたかったです」

涙を溜めながらそういう悠を鳴は可哀想だと思った。特別な立場から落とされるのはきついんだろうなとも想像できた。


「それでね、圭ちゃんと紅葉さんが別の国と契約したらしくてね、軍事力として働いたら潰すって溝口先生が言っててね。あ、これ一応内緒にして欲しいんだけど」

悠は少し考えた後でこう言った、「魔法少女と変身ヒロインは、自らの危機以外に軍事に参加したらダメなのです。我々が本気を出したら世界征服が容易いからです」


「万が一のことが起こる可能性はあるかな」

「日本以外と契約したならその可能性はあります。今いるお城は借りてるだけなのです」

鳴は予想以上深刻さにどうしたらいいかわからなかった。溝口先生が到着前にケリを付けられればいいのだけど、あの二人を止めるのは至難だったから尚更だった。

「悠は紅葉と互角なのです。あとは四人で圭さんを抑え込めばいいです」


圭は7人で最強しかも石化持ち、残り物の四人で食い止められるの?鳴の頭の中は混乱していた。


「鳴、こっち来て」

はい溝口先生なんでしょう。

「今朝言った話だけど誰にも内緒にしてね。それから万が一のことが起こっても絶対に行くな。圭には石化があるから喰らったら死ぬ。石化が無効なのはポセイドンだけだから私一人で行くから」

何かあったら溝口先生は圭を殺す気だ。あれだけ好きだった人を自分の手で...


はい次の人

「ブルー・オーシャン出ます!」

『大海のうねりver2!』

ブルーの捕獲率、速さとも確実に上がった。そろそろ攻撃でも覚えさせようか。ブルーに剣を手渡した。

「あくまで相手に隙が出来た時だけね。無理したら自殺攻撃になるから禁止だよ」


はい次の人

「レッド・ローズ出ます!」『ローズ・ブリザード』いきなり防御技を出し味方に余裕を与える。それからスティング・ローズスナイプで更に敵を足止め出来ればいい。楓の毒針なら攻撃力で対抗できるから、危険だけど楓に賭けよう。


「楓と恵美は自主練してて、ちょっと鳴に話がある」

二人は頷いてレッスンに入った。


「鳴ちゃん、やけに実践的な訓練してたね。具体的な敵がいるの」

ちゃん付けが怖いけど理由付けしなきゃ。

「どんな敵でも対処できる防御技です。レベルアップにはそれが一番かなって」

「ふぅん、確かにそうだね。了解しました」

鳴がほっとしたところで私は言った、「圭たちの件で命令違反したら永久追放だから気を付けてね」


もう気付かれた。先手は打たせない厳重注意だった。


「じゃあなんで圭たちのことをわたしに教えてくれたの?自分の手で圭を手に掛けるのは嫌だからじゃないの?」


「なんだか本格的な戦争でもある感じ?レッスン気合入ってるよね」

恵美の部屋を訪れのんびりしているとそう言われた。

「そういう可能性もあるってだけ。通常戦闘にも役立つしいいことだろ」

なにかをはぐらかしてるように感じたが、補助戦闘員の自分には何もできないと恵美は思った。

「恵美にも相当助けられてるからね。皆が特攻してたらとっくに誰か死んでる」


「近いうちの作戦では悠ではなく鳴、楓と真彩と恵美が決め手になるから」

そういうと手を振って私は出て行った。


彼女たちを鍛えて出撃させても危険に晒すだけだ。今更何をやってるんだ私は。対決の時が来たら一人でゆくこと、それが犠牲を出さない最善の手だ。


数日後、東欧州に翼竜二匹が現れ出陣しようとしたところ圭と紅葉が先に到着した。

我々は100km手前から彼女たちを見ていたが、圭の石化と紅葉のブラックホールが軽々敵を片付けていた。することが無くなった我々は引き上げた。


「商売敵だが怪獣退治なら問題ないよ」

「圭ちゃんたち、ちゃんとルールを守ってて良かったですね」

鳴がそう言ったが、たかだか翼竜二匹に石化を使ったのが気になった。もっと普通の技でも簡単に倒せたはずだからだ。それと主要都市を襲うはずの怪異が、東欧州の小都市を襲ったのも気になった。


「鳴ちゃんて昔と変わったよね。美人だからお高く止まってるところが無くなった」

「その()()()()ってやめてください。馬鹿にされてるみたいで不快です」

単に親しみを込めて言っただけなのに怒られてしまった。

「そうじゃないよ、親しみを込めたかっただけだ。気を悪くしたらごめん。呼び捨てにするのが最近本当に嫌になってたのだ、鳴には」

「あ、そうなんですね。不快だなんてごめんなさい」

鳴はまだ私に距離を感じているか、それともあまり信用されてなかった。


手を振って帰ろうとしたら鳴が全力で引き留めた。

「ちゃんと言います。ずっと圭に嫉妬していたから、溝口先生との距離感がわからないんです。本当にごめんなさい」

「うん、わかった。最近なれなれしかったと思うから私も注意するよ」

今度こそポケットに手を入れ部屋を出た。


ドアを叩く音がしたので鳴か楓かと思いドアを開けると、そこに悠が立っていた。

「こんばんわです。正さん」

「こんばんわ悠、何かあったか」

少し前まで溺愛していた少女を見て動揺した。今も昔のように愛したいが、いなくなってる間に状況が激変していた。抱きしめたい気持ちを抑えソファに通した。

「木島さんが死んだ時より悲しいです。悠はもう要らない子なのです?」


「気持ちはまったく変わっていないよ。今すぐに押し倒して愛したい。ただ三人がいなくなってからは鳴が仕切ってくれていた。鳴を裏切りたくない」

そう言うと走り出し出て行った、「鳴さんのところに行ってくるです」


泣いている悠を鳴がおんぶして来るまでそう時間が掛からなかった。

「悠ちゃんが泣きながら入ってきましたよ。ここで罪をすべて吐き出してください」

鳴からの信用の無さが酷かった。

「泣かそうと思って泣かしたんじゃないの!悠とよりを戻りたら鳴が悲しむと思ったんだ」

鳴は、え、あれという顔をしてしばらくしてから意味が呑み込めたようだった。

彼女は外に出て侍女に頼んでジュースを頼んだ。

「悠ちゃんもう少ししたら飲み物来るから待っててね」


鳴は私に事情聴取をし、どういうやりとりがあったか把握した。

「うん、そうだよね。捨てられる悲しさはわたしにもわかるよ」

一度もそういう経験がないくせに鳴はそう言った。

悠こっちおいで、そういって作戦を話すと、二人で鳴の前で土下座した。恋人に戻りたいと鳴に直談判した。自分で決定すべきことを鳴に決めさせる外道な作戦だった。


「うん、そうだね。恋人は恋人に戻るべきだよ」

にこにこしながら鳴がいうので何故かイラっとした。

「楓は嫉妬したから俺を刺したの。鳴は嫉妬とかしないの?今の一番は鳴なんだが」

「一番?わたしが?溝口先生の?」

煮え切らないのでディープなキスを鳴にした。悠はおーと眺めるだけで、もう安堵していた。


「もうすぐここの女の子たち全員制覇しちゃうかもだけど、順番はきちんとあるの。だから鳴はもっと威張っていいんだよ」

外道なことをしておいて開き直った。

「それが目標なのはしってるから大丈夫。だから圭と紅葉も取り戻そうね」

鳴はあくまで聖母だった。


それからほぼ毎日夕食後に楓がやってきた。

最近情事がご無沙汰だったから寂しいんだなと思い、なるべく愛することにした。終えた後も楓はなかなか帰らず、消灯時間前に帰った。

たまに他の子も合流したが気にせず楓は遅くまでいた。


来たぞ、今度は中央アジア方面だ。

『毒針(小)!』楓が私に針を向けた、「え、これ血管注射」そういうと私の意識は遠のいていった。モルヒネを盛られたようだった。

「作戦どおり行くですよ」

悠が指揮を取って敵を目指し、ほぼ同時刻にイエロー・メドゥーサとギャラクシーもやってきた。敢えて手柄は二人の譲りやや後方に下がった。


二人が敵を倒し終えると、ギャラクシーとミルキーウェイが戦闘を開始した。

同時にピンク・ナースを中心に扇型の陣形を取って正規変身ヒロイン部隊がイエロー・メドゥーサに襲い掛かった。

「親分なしでやろうってのか。上等だ」

『大彗星!』イエローが応戦するがレッド・ローズの『スティング・ローズスナイプ!』が軌道を逸らし、その隙にブルー・オーシャンの大海のうねりver2が捕獲した。行き場を失った大彗星と大海のうねりは対消滅した。


「いきがってんじゃないよガキ」

グリーン・フォレストはイエローの上を取ろうとした時、ミルキーが割って入り後退するよう命じた。「石化をもらったら死ぬです。自陣に引いてください」

そういうとすぐにギャラクシーとの戦闘にミルキーは戻った。


戦闘経験に勝るミルキーは、紅葉がブラックホールを出すと同時に満月を出し相殺させた。飛行力で断然上のミルキーは剣を出しギャラクシーを切った。

「小賢しいな。ならあの世に行け!」

『石化!』先頭のピンクを狙いイエローが放った。

『ローズ・ブリザード』イエローとほぼ同時にレッドが薔薇のバリアを放つ。石化攻撃は無効に終わり、イエローが墜落してゆくと楓の注射がイエローを襲った。


こっちは勝ったです。ミルキーがギャラクシーを背負っている。ピンクも親指を立てながら成功をアピールしイエローを抱きかかえていた。


悠の攻撃は紅葉へのみねうち程度のものだった。石化により落下した圭への楓の注射は栄養剤だった。二人を奪還して皆城へ戻った。



「なんて危険物を持って帰ってきたんだ。何しでかすかわからないじゃないか」

皆が圭と紅葉を連れ帰ったことに私は困惑した。

褒めてもらえると思った皆はしょげていた。

「やっぱこのガキども埋めちゃおうよ。溝口ちゃんも嫌がってるじゃん」

「恵美落ち着いて、今は注射で眠ってるからその間に皆で考えようようよ」

鳴は恵美をなだめるのに必死だった。雑魚呼ばわりされたことが許せなかったようだ。


「けっこう冷静だからね私。この二人は悠と違って謝罪して帰ってきたのではなく、拉致による帰還だ。したがって仲間ではない」

私は圭と紅葉をほぼ敵認定していた。

能力が高い敵二体を置いておくことがどれほど危険かを皆に話した。

「溝口先生待ってください。二人はあなたの恋人だったじゃないですか」

「恋人だったが正解。出て行ったところで普通なら単に別れただけですが、国を亡ぼす力を持った元カノなんて危なくてしょうがないよ」


「恵美が言っていた通り解決策がなければ私が処分します。注射でどれだけ眠らせることができるかわからないけど、救いたい人はすぐに案をください」


甘い思い出は二人と山ほどあった。しかしどれほど素敵な過去があっても現在はもう違う。一生二人を愛している、これは変わらない。だが残った皆を守るのが私の役割で彼女たちは邪魔だった。


鳴は二人を説得するよう皆に働き掛けたが、賛同してしてくれたのは悠だけだった。あの作戦はいったいなんだったのかと無力感に襲われていた。

そんな鳴とは別に私は動いてみることにした。


「おはよう圭ちゃん、お久しぶり」

起きたての圭はすぐには状況がわからなかったようだが、鎖につながれてることで飲み込めた。

「ボス様お出ましじゃん。子分たちが強くなって良かったな」

「第一声がそれか、もう完全に敵同士なんだなよく分かった」

暫く二人とも何も喋らなかった。

ただもう元には戻れないことはよく分かった。ならば最も穏便に済まそう。悠による能力抹消で実家に帰す。これしか選択肢はなかった。


「悠、そこにいるんだろ。圭の能力を完全に消してくれ」

悠が泣いていてなかなか来ない。すると鳴が走ってやってきた。

「戻ってきて圭、昔も今も愛されてるのはあなたなの。わたしがどんなに想っても、あなたがいるから絶対に叶わないの」


気持ちの量なんてわからない、圭も鳴も愛してる。

想い出が多いのは一緒にいる時間が長かった圭と悠が断然だ。けどそれで鳴が下になるのか?おせんべい食べてる鳴を同じだけ愛していると言ってはいけないのか?


「もう一個解決策があった。私が死んで圭と鳴が力を合わせてこの小さな所帯を守ってゆくことだ。恵美には土下座しても許して貰えないだろうがそこはなんとかしろ。圭、今決めてくれ。大っ嫌いな奴の最後を見届けさせてやる」


俺の失敗から始まった崩壊だった、圭や紅葉のせいじゃない。ならしっかりとけじめをつけないとな。死を持って償おう。

悠が皆を呼んできてくれた、これで最後の挨拶ができる。刃物は楓がかつて私が刺したものだったので準備は完璧だった。


「こっちを見て、この注射は楓のものよ。刺すまでもなく先端に触れたら即死するわ。圭と溝口先生が今すぐ仲直りしないなら私が死にます。五秒数えます。1、2,3,4」


「わたしが悪かったからやめろ鳴!」

最後の最後に圭が折れた。







































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