【23】新たな敵
隠さず
暑すぎて日差し避けるために手を目の上にかざした。
今日の空は雲が少なかったので尚更だった。風が少しでもあれば良かったがそれもなかった。
銀座での買い物が今日のメインだったので、圭と悠、紅葉がバテるまでは頑張ることにした。皆元気にしてるのが信じられなかった。
「水着だけにしよう。暑さが去ったらまた買いに来るから」
圭たちはつまらなさそうにしながらも目的の店に急いだ。
何度目の夏だろう。去年は色気のない水着にしてもらったが、今年はかわいいのを要望していた。悠が私に見せるために試着室から出て来たが、白のシンプルなセパレートは威力が有り過ぎたので試着室に戻ってもらった。
「これでいいか」
圭が試着室を開けて見せてきたが、黄色でフリルが多めのセパレートも好み過ぎて慌てて試着室に押し戻した。紅葉は布が少なめの青いセパレートで、人目に付きそうだが好みだったので楽しみだった。
今夜は紅葉と二人でマンションに泊まることになっていた。
二人でエントランスに着いただけで、もう胸のドキドキが抑えきれなかった。氷入りコーラを紅葉に差し出して自分はアイスコーヒーを飲んだ。
少しだけ煙草を吸いにベランダに出ている間に、紅葉はさっき買った水着に着替えていた。もう裸を見たことがある仲なのに興奮が抑えきれなかった。
水着姿を褒めた後で普通の部屋着に着替えてもらった。圭か悠ならそれだけでは済みそうもなかったが、紅葉はまだ恋人ではなかったからだ。
今夜、彼女は抱かれると思っているだろう。しかし私はそうすることに躊躇いを感じながら煙草を吸っていた。彼女の姉からも告白に近いことをされたが断っている。
「なあ、悠、ほんとに紅葉抱いても気持ち変わらないか?こんなに女にだらしない男ではなかっただろう木島社長は」
「木島社長は小さい子が好き過ぎて対象が偏っていたのです。だから女好きじゃなかったとは言い切れませんよ」
悠の言葉の刃が冴え渡りそれが私に刺さりまくっていた。
風呂から戻った紅葉は下着だけの格好だった。今まで彼女の白い下着というのはあまり見なかった気がするが、覚悟の表れなのだろうか。冷えるからと言って小さな白いバスローブを紅葉に掛けてあげて、ベッドに腰掛けながら二人とも珈琲を飲んだ。
二人が完全にえっちする直前状態になっているのは分かった。バスローブを脱がして、下着だけになってもらいベッドに紅葉を横たえた。
ここが止める最終地点だった。ブラ紐を下ろしただけでもう手遅れだ。変な汗を搔きながら欲望と戦い、これからする行為について考えた。
「紅葉、今日はここまでね。この先はいくらでもする機会があるだろうから待っててね。あと皆に言うなら最後までしたと伝えて欲しい」
翌日、三人がカーテン越しに遊んでいた。目で追ってしまうのは紅葉だった。全員私の彼女と彼女候補だったので、遠慮なくカーテンを開けて遊びに行った。三人ともお揃いのロリータ風ネグリジェ姿が可愛かった。今までここには頑なに入ってこようとしなかった私が来たので、圭は戸惑っていた。
「圭キスして」
二人を見ながら圭が戸惑っていると悠が最初にキスしてくれた。
それを見て焦った圭が次にキスしてくれた。最後に紅葉が唇を重ねてくれた。
その後も三人のネグリジェ姿を凝視し続けたので、圭にキモイと言う理由で追い出された。キモイかも知れないが満足だった。
翌日、久々の出動要請がきた。
ソロモン海峡でフリゲート艦一隻が行方不明になったというからだ。ただの沈没じゃないかとも思ったが、忽然と消えたというので海中でも戦える真彩を連れて調査に来た。
「なんでアイアンボトムサウンドで事故が起こるのかちょっとわからない」
独り言を呟きながらポセイドンで探査を続けた。
すると真彩に向けて鉄底に引き込むような海獣が現れた。当然海神ポセイドンの出番だった。まずブルー・オーシャンを引き剥がしたがかなり骨が折れた。
このオットセイのような珍獣が強いというのか?捕まえようとするがかなり早くブルーには海上に出てもらった。
ようやく捕まえ海上に連れ出して、ブルーに捕縛してしてもらった。その後は痺れて動けない相手に殴打を繰り返し爆散させた。
恐らく津波を引き起こせば一発で倒せたろう。今後そういうケースがまたあるかも知れないと思いながら帰国した。
「何故また怪獣が出たのかは不明だ。だが出た以上殲滅しなければならない」
皆の警戒心を煽った。更に今までのものよりかなり強力だったことも伝えた。
せっかく買った水着を使えないので、皆風呂でそれを着て遊んだ。混ざって遊びたかったが、敵の動向が気になってそれどころではなかった。
陸上タイプも強化されて出てくるだろう。誰が死んでもそれは負けだ。そうならない様に敵の強さを測り対策を立てなければならなかった。
木島社長と使っていた喫煙所に向かった。すると悠が付いてきた。
「なにか話があるなら煙草吸い終えてからね」
そういうと悠は頷いた。
「何も考えなくてもまだいいんですかね社長。少女たちを危険に晒さないよう私だけで行くかもしれない」
「少なくともわたしと圭と紅葉だけは出ますよ」
紅葉が喫煙室に入ってきてそう言った。
「わたし達第二世代の魔法少女は、強化されてからの敵に対抗するものです。ポセイドンと力も遜色ないので信じてね」
やはり変身ヒロインと魔法少女は違うらしい。ギャラクシーのブラックホールでそれは思い知らされていた。圭はやはり石化能力か。
メンバーが一気に四人になるのは敵の数量によっては厳しくなるかも知れないと思った。
そうなると他の四人はここでリタイアになるのだろうか。力量不足で危険に晒されると言うのならそうするしかない。だがここまで頑張った彼女たちを戦力外通告するのは非情な気がした。
「二人はどうしたらいいと思う。他の子たちはここまでで見限らなければならないといけないのか」
圭と紅葉二人に質問した。二人ともすごく考えてくれたが、安全のことを考えて何も言わなかった。
「ごめん。指揮官の私が考えなければいけないことだった。皆はそろそろ寝ていいよ」
「木島社長が何も言ってないのならいけるんじゃないか」
圭がようやく一つの答えを出した。確かにあの人は変身ヒロインの引退には触れていなかった。
鳴の薔薇、真彩の海水、恵美の緑の捕縛、楓の毒針、どれも個性的で他の少女と重ならなかった。ただ全ての面での強化が必要になる。圭たち三人は強力な技を持っていたからだ。
シリアスの気晴らしに、圭のネグリジェの裾を捲り上げたら本気で頬をビンタされた。しかし紅葉が捲って見せてくれたので生パンツをガン見できた。
腫れた頬の治療は悠がしてくれたので治った。そろそろ就寝と思っていたらネグリジェを脱いだ圭がいたのでベッドの中に仕舞いこんだ。
圭が好きで好きでたまらなくてここまでこの世界で生きてきた。エッチな意味合いはあまりなく、彼女をずっと抱きしめた。二人を見ると手を振っていたのでこのまま寝ることにした。
翌日は鳴たち四人が特訓をしていた。真彩に聞かされた敵の強さに驚愕したらしい。
「地上を焼き尽くす気持ちで取り組んでくれ」
私の声は四人に届き皆真剣なレッスンを続けた。
すぐに他の三人も合流したが、四人はその巨大な威力に驚いているようだった。圭の石化は10体の敵を一瞬で固めた。やれば空から転落するのだがそれはポセイドンが受け止めた。
「圭、これなんとか落ちないようにできないかな」
お姫様抱っこで真っ赤になっている圭に聞いた。いや、悠と紅葉、ヒール掛けながら圭に石化やってもらえないかな。
すると二人のどちらかのヒールを使いながら石化を使うと圭は落ちないで済んだ。落ちなかった圭を人目も憚らずキスしてあげた。
「わたしたちが必殺技完成したら今みたくキスしてもらえますか」
鳴が皆に聞こえるように言った。
私は悠と圭、紅葉の顔色を窺ったが、それくらいいいんじゃないのというサインを出してきたので、鳴の要求に応えると言った。
もういい加減諦めて欲しいんだが、もう二人の彼女持ちなんだから嫌じゃなかろうか...。しかし真彩も楓も乗り気だったので諦めた。
東京に飛来する鷲の目をした翼竜を感知した。
実力に勝る圭と悠、紅葉と私で出撃した。まだ対面しなくてもその速度には圧倒された。
「速度でギャラクシーとミルキーウェイを勝る可能性がある。まずは雷鳴で敵を弱体化するので戦闘は待って欲しいと空の三人に伝えた」
『超雷鳴!!』数千の雷を落しその何発かが敵の翼竜に当たった。
一気に距離を詰めるギャラクシーとミルキーウェイだったが、圭が『大彗星!』と叫び大きな閃光と共に翼竜を叩き落としたので、私が足で何度も踏みつぶして、それはただの紙のような何かに変わってしまった。
「作戦成功。帰ろう」
そう言うと三人は嬉しそうに帰還していった。
まだいたのか、そう言うと三人も感知したようだった。東京湾という浅瀬に水獣が現れた。このメンバーで水中戦闘が出来るのは、今のとこ私だけなので一人で向かった。
東京に津波注意報を出すように即刻伝えた。ゆっくりと海へと向かうと、ご丁寧に敵は顔を出していた。「一発で決めるから待ってな」
初めから格闘する気はなかった。『大津波!』大きな雷と共にそれは起こり、津波に飲まれて海獣が陸に転がった。既に黒焦げだったが、抱きしめて破壊してやろうと思ったところで、紅葉の『ブラックホール』で一瞬で海獣を宇宙のどこかに追いやっていた。
皆の待つ本社基地へと戻った。
TVで大津波発生の瞬間を見ていた、戦闘に参加しなかった四人がおかえりなさいと言ってくれた。ただいまと三人が言うと優しく迎えてくれた。
これまでとは桁が違う戦いに皆緊張していた。私自身も津波は初めて使ったので、体中が疲労で悲鳴をあげていた。次の瞬間倒れてしまったので、皆が悲鳴をあげてるようだったが眠かっただけだ。
眠りから覚めると三人がカーテンを開けて寄ってきた。パーカーは着ていたが中は水着だった。
起きなかったフリをして反対側に寝転んだ。
「狸寝入りはやめろ」
圭に見破られたが、朝から刺激が強すぎるんですと弁明した。
取り敢えず起きて三人を見ると、パーカーは暑いようで皆脱いでしまったあとだった。みんなそれなりにえっちな水着だったので珈琲を下さいと気を逸らせた。それでも朝からとてつもない性欲が押し寄せたので誰か一人と致したい気分だった。
「ジャンケンで負けた人はブラ取ってください」
無茶振りしたが三人でジャンケンを始めたので、嘘ですほんの出来心ですと言った。
ジャンケンしてないのに悠と紅葉が脱ぎだしたので、圭に止めてもらった。
完勝ではあったが昨日の敵が多数、又はそれ以上のが出て来たら死ぬかもしれないとはっきりと思った。三人を残して死ぬのは嫌だが、この子らの将来を考えたらいいことかも知れないとも思った。
将来?そんなもの担保にしてどうなる。今が全てだろう。だからこの仲の良い三人共を恋人に迎え入れたいと思っているんじゃないか。
部屋にいると危険なので、バスローブのままラウンジに行った。
たまたま楓がいたので紅葉と比べてしまった。楓の方が胸が大きいとか本当にどうでもいことに気が付いてしまった。
「昔からわたしのが少し大きいですよ」
視線から楓にばれてしまった。
「紅葉のどこが気に入ったんですか」
そう楓に聞かれたが、頑張り屋なとこや度胸があること、身体が小さいこととか全部楓と被ってしまうので返事に困った。
「怒るかもしれないけど楓に似てることかな」
そういうと微笑して楓はその場を立ち去った。
強いてあげれば紅葉は圭と悠と一緒にいた。私の部屋のカーテンの向こうで寝ていたことが、とても可愛くて愛おしかったからだ。
まだラウンジでお茶をしていると楓が戻ってきた。さっきとは別人のように冷たい目にはハイライトがないように思えた。
「楓何かまだ用が」
そう言い掛けたところで胸を刺され、私はゆっくりと倒れていった。




