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②メドゥーサ

鳴にも勉強を教えることになった。この間の様に補習で戦闘に参加出来ないのは困るからだ。

少しお馬鹿で明るい性格はリーダー向きとは言わないが、メインヒロインらしかった。

「この間はすいません。補習で出れなくなってしまって」

と鳴は謝ったが、そのために今勉強してるんだから気にしなくていいと言った。

圭と同じ場所で教えているのでなんだかそわそわした。吊り橋効果でこの子を好きになってしまったら困るからだ。

健気に勉強してる様は可愛いのでその点では圭と同じだったが、そういう気分にはまったくならなかった。

「わたしがメインでいいんですかね先生」

役職を間違えながら鳴が言った。メインの攻撃が明らかに最終兵器っぽいしいいと思うよ。可愛いし。

私は失言した。最後の一言は圭に言うべきで鳴には避けるべきだからだ。

鳴は顔をちょっと赤らめただけなのでホッとした。

「圭ちゃんと真彩ちゃんとはまだ一緒に遊びに行ったことがないんです。今更自分から言うのは恥ずかしいので先生から二人を誘ってくれませんか」と言われたのでまったく構わないと答えた。


鳴と真彩に二人が付き合ってることを言いたい、と圭に言ったら猛反対された。


「ここの職員で一番若い男はお前なんだ。頼りたくなると同時に、別の気持ち芽生えてもおかしくないだろ」

圭の意見には同意するしかなかった。だが圭もそういう理由で私を好きになったんじゃと思い心が沈んだ。

私の様子に気が付いたのか、かかとを上げてキスしてくれた。

わたしはそんなに浅くないと。

浅くはないかも知れないがちょろいよねと言いかけたのを飲み込んだ。


三人一緒となると益々人目を引くの可能性がある。圭とのデートの時みたく郊外の公園にした。

大きな池があるので、二人漕ぎのボートに二組に分かれて乗ることにした。

じゃんけんの結果、私と真彩、圭と鳴の組み合わせになり私は血涙を流していた。


ボートを漕ぎながら雑談をしていると突然真彩が切り出した。

「ところでプロデューサーさんと圭ちゃん付き合ってますよね」

何の事かなととぼけたが、演技が下手過ぎてすぐにバレた。

「態度で本気だと分かり安心しました。悪戯気分だったならみんなにバラしましたが」真彩に許された。

どっちから切り出したかとかあれこれ詮索するので、圭の許可ないと全部言えないんですと言ったら笑われた。

「もう尻に敷かれちゃっててプロデューサーさん可愛いですね」真彩の言うことは正しかった。


急いで岸を目指しもう乗り終えた圭と鳴に合流した。


すると圭がなんかよそよそしい。まさかもう捨てられるのかと嫌な汗を流していたら圭が寄って来た。

「鳴にお前と付き合ってるのバレてた」と圭に言われ、実はこっちも真彩にもバレてたと素直に言った。


自動的に俺と圭が隣同士で歩く事になり二人とも顔を赤くしていた。自分にこんな一面があることを圭と付き合って初めて知った。


そんなことより二人とも分かり易過ぎるので、職場はおろかマスコミにも知られてしまう危機が迫っている。

ポーカーフェイスの練習を二人でしたら二人とも顔が真っ赤になる。鳴と真彩はそれを見て笑うという構図になっていた。

大学生と中学生のカップルかな初々しいね、という声が公園散歩客からも聞こえた。

たぶんこの性質は変わらないので開き直って腕を組んで歩いた。


鳴と真彩を送り届け圭と二人きりになったところで車を停めた。

私も圭も顔が茹で上がっていた。

恥ずかし過ぎてキスも出来なかった。

「お前はわたしに手を付けてないから捕まっても無罪放免だろ。気にするな」

圭が男らしくて可愛いのでやっとキスが出来た。



「街壊してないかあれ」

圭に勉強を教えながらスマホでSNS上のポストを見た。


急いで本部に行くと、過去最強クラスの敵がやって来たと大騒ぎになっていた。

三人に急いで現場まで急行させた。


両手を後ろにして羽ばたくように少し開く。光が彼女を包み込むと右手を水平に左肩に、左手を真っ直ぐ下に伸ばすと真彩はブルー・オーシャンに変身した。

ウェディングドレスが凛々しかった。


そんなことよりまた光量が足りなくて皆の下着が丸見えだった。もう嫌がらせにしか感じない。


圭が先制で電撃を放ったがはじき返されてしまう。

真彩の水流も効かない。鳴の薔薇の花びらも僅かに敵をぐらつかせただけだった。

何度か繰り返したが倒すことは出来ず活動限界が近い。三人を地上に呼びよせ撤退することにした。


自衛隊が出撃する最悪の事態になったがそれでも止められない。

しかし彼女たちは限界だ。一度休ませなくては大惨事になってしまうと思われた。


事務所に帰ると緊急会議が開かれていた。


「もっと温い敵を倒し続けるのが変身ヒロインたちじゃないんですか。あれは強すぎる」

そう私は尋ねたが、変身ヒロインでも魔法少女でも命に危機が迫ることがあると聞かされた。

納得がいかないので、両手を開き彼女たちを守るようにして、皆を出す訳にはいかないと主張した。


皆をレッスン室に集めた。

「会社をクビになっても君らには出撃させない」と言い放ち少し横になった。

皆も疲れていた様で私の隣でそれぞれ鳴と真彩が寝そべっていた。


二人だけ?圭は??

恐ろしく嫌な予感がして敵の前に引き返すとイエロー・メドゥーサが怪獣に立ち塞がっていた。


「よせ、命令だ。すぐに戻れ」私はそう言ったが彼女は引く気がない。

もう限界に近い時、彼女の目からハイライトが消え髪の毛が揺れていた。それを見て怪獣は慌てて逃げようとしたが全身を石にされてしまった。イエローが力を振り絞り電撃を放つと敵は粉々になった。


変身が解けた圭は真っ逆さまに落ちて来た。

落ちて来る人間の質量を受け止めたら死ぬと分かっていたが、彼女を受け止めに走った。すると重量感が殆ど無く受け止めることが出来た。


メドゥーサ、神話の怪物と呟いて私は心労で倒れた。


圭には念のためベッドで休んでもらったが夜になると彼女は起きた。

いろいろ説教したかったがまずは優しく抱きしめた。



翌日、圭に勉強を教えていたが二人とも無言だった。

メドゥーサ化した自分を圭は知っている。だがそれを話してくれようとはしなかった。

無理矢理にでも聞いてしまえばいい。だけどそうしたら二人の関係が終わってしまうようで怖かった。だから無言だけどキスをねだった。彼女が受け入れてくれて嬉しかった。


圭のメドゥーサ化の原因が分かるまで鳴と真彩を圭と別々にしようと提案したのだが、二人の猛反対に遭った。鳴はもっと強くなって圭がああならないで済むようにして見せると言った。真彩も概ねその考え方だったようだ。


戦い終えたら三人を自宅に返すのだが、実は圭の家が一番近いのだが後回しにしていた。

「今日のは敵は楽だったな。わたし一人で充分だ」と圭が言った。

最近会話が少ないので無理矢理出て来た言葉にも思えた。まだ幼さが残るが美しい圭は、アテーナーの怒りに触れたのだろうか。ならばアテーナーとペルセウスをまとめてマシンガンで撃ち殺してやる。

「私が守るのは圭だけ。今そう決めた」

そういうと圭はワッと泣き出した。今まで一人で抱えてきたからホッとしたんだろう。


翌日、私は社長の胸倉を掴んで持ち上げていた。私の背は並だが腕は恐ろしく太かった。

「あのへんてこな怪物と圭のリンクを切ってくれ。出来ないと言うなら今この場で窒息死させる」本気の脅しに屈し社長は提案を飲まざるを得なかった。

圭の目の前に有った危機は取り敢えず去った。他の二人にもへんてこな仕掛けがないか聞くと正真正銘ないと言う。


退職願を会社に出し去ろうとしたところ、変身ヒロイン全員がその場合ここを去ると会社を脅した。すると会社に慰留されプロデューサーを続けることになった。

ついでなので社長を解任させて技術部長を次の社長にしてくれ、とお願いしたらこれも通った。


それから私と圭の関係は元に戻った。社内では腕組みをして、交際していることをもう隠さなくなっていた。流石に誰かが見ているところでキスしたりはしない。社内風紀を乱している当事者だったが節度は守りたかった。


圭を守るため自分にも何か出来ないかと新社長に尋ねたところ、変身ヒーローはあまり喜ばれないので開発記録が少ないとのことだった。だが不可能ではないので努力すると言って貰えた。


圭に告白された公園にまた行った。

圭はTシャツとミニスカートだったが今度は少ししかパンツが見えないように綱を登って行った。

少しだけの方が色気があるので動揺したがなんとか下心を隠して船の上に登った。

以前ここに立った時は付き合うかどうかをまだ決めかねていた。だからちゃんと言った。


「圭が誰よりも好きだ」


付き合ってはいたが、言葉できちんと言ってなかったのでこの場所で言いたかった。

圭が嬉しそうに頷いてくれた。


ここに近い場所に、いつか皆で行ったボートの池がある公園もあったのでそちらに向かった。

あの日一緒に乗れなかったボートに三時間も乗った。

ボートを漕いでると圭が私の腕をじろじろ見て触ってきた。

「知ってはいたけど凄いなこの腕」圭を救った腕を褒めて?くれた。

「サーフィンやってたんで筋肉が付いちゃったんだよ。自分でも驚いている」

勉強がそこそこ出来るからサーフィンという単語が出て圭は驚いたようだ。彼女もやりたいというので却下した。あれはかなり危険な遊びだからだ。

「海辺で見ている分にはいいよ。ただしナンパがあったら大声で知らせてくれ」と私は言った。

本当は変身ヒロインの方が私より強いのでサーフィンは問題なかった。

海岸のパラソルの下で、私の帰りを待ってくれる圭が見たかったのだ。


ボートが岸に付く時間が迫り、二人で抱き合ってキスをした。この無駄に太い腕で、いつまでもこの小さくて華奢な女の子を守り抜こうと誓っていた。























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