⑱溝口ハーレム
二つの球形の飛翔体が、私の部屋にぷかぷか浮かんでいた。
これを制作した後、家電や車をイメージしたが制作することはできなかった。無害で単純なものしか生み出せないようだった。変身ヒロインについても当然試したのだが無理だった。木島社長にだけ宿っていた特殊人間の製造は禁忌となっているようだった。
「岬紅葉です。皆さんのお手伝いが出来るよう一生懸命頑張ります」
変身ヒロインには出来なかったのでマネージャーとして雇うことにした。楓の双子の姉妹だった。圭と悠が私の部屋で暮しているので、一つ空いた部屋を使ってもらうことしした。指示を出す度にいちいち顔を赤らめるところが良く似ていた。
「無理だったな、ヒロインの製造」
圭にも実験に参加してもらったので残念そうだった。
「これで良かったんだよ。とんでもない能力を持つ人間を増やしちゃいけないから、木島社長はそれが出来ないようにしたんだろう」
悠にはあまり伝えたくなかった。
彼女が最後の木島社長の作品で最強の可能性を秘めていた。でも彼女に重荷は背負わせたくなかった。だから彼のやっていたことから遠ざけたかった。それともちろん彼のことも過去にして欲しかった。これは私の我がままだった。
誰が飛翔体を飛ばしたのか。
私と変身ヒロイン五人にほぼ絞られた。悠には物質を作る能力がなく、変身時に衣装とおもちゃのスティックを出すだけだった。
犯人捜しはほぼしていなかったのに誰かが分かってしまった。
紅葉が姉の携帯を調べたら、大きな楕円の飛翔体の画像を見つけたからだ。スパイのために彼女を雇った訳ではなかったのだが、普通に飛翔体をスマホで眺める姉を見つけてしまったのだった。楓らしくて間抜けで微笑ましくもあったが尋問は避けられない。
「変身ヒロインの楓さんですよね。溝口社長の依頼で抜き打ちテストを行う、と言われて付いて行ったんです」と楓が答えた、「それからしばらく記憶がなくて気が付いたら船の上にいました。そこで飛行できる楕円体を作ってくれと依頼されたので作っただけでした」と彼女は言った。騒ぎが大きくなり過ぎて言い出せなかったらしい。
催眠術... 随分とローテクに弱い変身ヒロインなんだなとと呆れたが、他のメンバーにも考えられるので、少し考えさせてくれと言って楓を解放した。
軍事力均衡のため変身ヒロインを他国に何体が譲渡すべき、という国際的な圧力があるのは知っていた。しかしすべてを断っていた。彼女たちを将来は普通の生活に戻すためだった。
ただもう無理だ。例え変身ヒロインで無くなったとしても常に危険に晒されることがこれでわかった。私は会社を基地にして、ここで一生暮らしてもらうとこを考え始めていた。
催眠術は言葉による暗示だ。目を見て相手を自在に操れるのならもうそれは魔女だ。だから危険人物を近寄らせないように学校には護衛を付けた。
だが、これだけで彼女たちの日常は壊れてゆく。全部木島社長のせいと思い腹を立てていた。
「原因が分かったんだからそれだけでも良かっただろ」
圭の言葉に頷きながらも嫌な感じは残った。騙され易そうな楓だったのはほっとしたが、他のメンバーはそうでないことを祈った。罠だと分かっていながら自分から催眠に掛かるケースもあるからだ。
… 深く考えるのはやめた。楓は物騒な薬品を仕込めるが他の子にはできない。今のところ問題はない。
次の日、韓国のソウルに怪物が一体が現れて大混乱になっていた。
夏の江の島に翼竜タイプが現れて以来だが、日本以外での発生は初めてだったからだ。圭、悠と真彩を派遣することになった。韓国軍が歯が立たないからだ。
被害を最小に食い止めたいので、真彩が大海のうねりで捕縛し圭の雷撃が決まり五分と掛からず勝負は付いた。
外国での出現以上に木島社長消失後初めての襲来に驚いた。あれは彼の制作物ではないのだろうかとの疑念が産まれた。
本社は要塞基地に改修中だが、地下シェルターはそのままだったので変身ヒロイン&魔法少女とマネージャー一人はここで過ごしていた。
もともと東京以外で出現した場合無視するはずだったが、軍でも歯が立たないので仕方なく派遣した。あれが世界中で発生したら人数が足りない。頭の痛い話だった。政府と連絡を取り、軍で対処するよう各国に通達して欲しいと伝えた。うちの子供たちは出したくないと。
願いも虚しく世界三都市同時出現が起こった。東京の守りは真彩と恵美に任せ、あとの四人は主に欧州に飛んだ。戦力の分散は怖いのでひとつづつ潰してゆく戦法にした。
一週間くらいそういう状況が続き、収束してきたので皆会社に集め休暇を取らせることにした。怪獣、音速ミサイルや飛翔体、彼女たちの戦う相手が多すぎた。
悠と圭、マネージャーの紅葉を誘い、会社から近い皇居に行くことにした。一般の人には入れないところまで見学していいと言うので三人は走り回っていた。着いて行けない私は宮内庁舎でのんびりしていた。常識知らずの私は外で煙草をふかした。
戻って来た彼女たちは緑が多くていいところだったと感想を述べた。もっと歴史的建造物を見て欲しかったたが興味が無いようだった。
「このままじゃもぐら叩きゲームなんだよな」
独り言を呟きながら庁舎の前で煙草を吸っていた「お前なんか疲れてるみたいだから帰ろうぜ。ただしマンションの方に」
圭が提案したので従うことにした。
悠はここであまり過ごしてないけど、付き合うことに決めたので自分の部屋があった。初めて来た紅葉には私の横の部屋を使ってもらうことにした。
「いらっしゃい、紅葉。高くて見晴らしはいいマンションだよ」
「高度の高さじゃなくて値段が気になるとこですね」
紅葉は当たり前の感想を言った。だからローン無しなので売れば〇億になるはずだと伝えた。このタイミングで顔を赤らめると目的が邪なものになるぞと思った。
「出動頻度が上がってるんで、強化トレーナーを増やしたいんだ。マネージャーがやってもいいと思うんだ」
そう紅葉に言ったら目を輝かせていた。生物兵器を姉の注射器に入れたいと言うので即却下した。
「なにか魔法力的なものを高めたいんだ。だから楓についてはひとまず考えるのをよそう」
「それなら鳴さんのローズがいいと思います。敵が多い時広範囲攻撃できたら強いと思いますよ」
初めてまともなことを言ってくれたのでほっとした。それならと鳴の強化をお願いした。あと楓についても、すぐに物騒な液体を入れたがるのでヒロイン的なものにして欲しいと伝えた。
圭の部屋を覗くと勉強をしてたので悠の部屋に行った。
悠も本を読んでいたので帰ろうとしたら手招きされた。最近忙しすぎて、私の目の下に隈が出来ていると言うので軟膏を塗ってもらった。久しぶりにすごく近くにいたので、触れたかったけど他に二人もいるので我慢した。
「木島さんになろうとしなくてもいいと思うよ。あの人秘密主義者だったけど、溝口さんは馬鹿正直な感じだし」
最近木島さんに勝って、悠を彼から奪おうとしてたのバレたかな。それと馬鹿の後ろの正直が付いていたので良い意味に取っておこう。
「正確にはなろうとはしてない。ただあの人何も喋らないで天国に行っちゃったから、いろいろ考えなきゃならないんだ」
ベランダの灰皿受けはだいぶ掃除していないので、吸い殻で溢れていた。たまには掃除しようと上のカバーを開けたら、大量の吸い殻をこぼしてしまった。なかなかリビングに戻らない私を探しに悠と圭が見に来た。
何も言わず二人でちり取りとナイロン製のほうきを使い片付けを手伝ってくれた。
灰だらけなので着替えてこいと圭に言われ、軽くシャワーを浴びて着替えた。シャワーから上がると、彼女たちも脱衣場で着替えていたので圭に叩かれた。自分はいいけど悠の着替えは見るなということらしかった。何度も見たことあるのに理不尽な気がしたが謝った。
「やめたいね。今の仕事には終りが無い」
紅葉はよく分からないと言う顔をしたが、圭と悠には思い当たりがあるので黙った。
「それですべてが終わるとはとても思えないけど、あいつらの拠点らしき場所を探して叩きたい。しばらく忙しくなるが、皆で乗り越えて欲しい」
そういうと三人は納得してくれた。
しばらく敵の動きが無かったので、私は木島社長の過去の人間関係を調べることにした。
変身ヒロインたちの特訓はマネージャーの紅葉やってくれている。意外と熱血で皆のことをきちんと把握して強化に取り組んでくれた。
怪物を生み出してる人間は存命だ。これを倒すために変身ヒロインたちを生み出したのが、木島社長の真意なのじゃないかと考えていた。何故自殺したのかはまだ謎だったが。
圭の部屋に行き欲求不満を訴えたらキスしてくれた。
ものすごくもっと欲しかったが、常識を考えて我慢した。圭は大丈夫かこいつという顔をしたが、指揮官としては当然な気がした。
その代わりベランダに誘った。
「東京だけにだけ出現した敵が世界中に現れた。圭と悠には申し訳ないがWエースとして頑張ってもらう」
「終わりはお前が見つけてくれるんだろう。ならやってやるよ」
圭は頼もしい言葉を言ってくれた。
催眠術には気を付けないといけないが、勘で問題を解決できる気がしていた。
私は楓に、一回回ってお手を命じると彼女は服を脱ぎだした。すると圭に殴られられた。「今声を出して言ったよね?」そう言っても心の中で脱げと命じたんだろうと信じてもらえない。紅葉も脱ぎ始めたので今度は二発殴られた。ともかく悠にライトオブミリオンスターを使わせたら、簡単に二人とも催眠から抜け出した。
たぶんこれが悠の役割の一つだ。楓にもう一度催眠を掛けたら次は掛からなかった、ライトオブミリオンスターの効果時間を調べるため観察していると約一週間、楓姉妹は催眠に掛からなかった。催眠に掛かり易い姉妹だということは判明したので、次は圭でやると言うとまた殴られた。
出発前、悠に技を掛けてもらい欧州に皆を出した。
これで催眠の問題はなんとかなったはずだ。前から悠一人だけ魔法少女なのが気になっていた。たぶんまだ悠は重要な役割と持っている。
悠の部屋をノックをすると間もなく開いて入れてくれた。
彼女の部屋に入る時は浮気感が酷くてどきどきする。でもそうではないからなんとか堂々と、悠の彼氏として入っていった。
「こんな時間にどうしたの?圭ちゃんに言った?」
悠もやはり後ろめたいのかそう言った。
「圭には関係なく来たよ。別に悪い事してる訳でも浮気でもないからね」
そっか、と言ってパジャマを脱ぎはじめたのでそうじゃないと言って止めた。二人きりで会いたから来たとちゃんと言えた。
とは言えピンクのパジャマを着た悠は魅力的だった。問題は山積してるけど、それとは関係なく愛したかったので改めて私の手で脱がせた。悠は黙って受け入れてくれている。白いスポボラも脱がせて上半身裸になってもらった。ベッドの上で女の子座りする悠を、キスをしながらやさしく胸を触った。ちょっと待ってと言ってパジャマの下は悠が自分で脱いだ。
部屋の灯りを消してベッドで彼女を押し倒した。パンツの中に手を入れて、優しくクリトリスを触ったりつまんであげた。かなり大きな喘ぎ声がしたのでびっくりしたが、もしかしたら待たせ過ぎていたのかも知れない。唇を合わせながら両手を万歳の姿勢にさせて、胸と秘部を交互に責めた。
身体がびくんと何度もしたので手を放して一旦やめた。もう準備が出来ていたようなので、パンツを足首まで脱がせゆっくりと自分の物を彼女の中に入れていき、喘ぎ声を遮るようにキスをした。
とても気持ちが良いので先に果てそうになり、前後運動を止めたりして気持ちを落ち着かせた。胸の先端を弄ると悠はもう耐えきれないと言った声をあげたので、下半身を速く動かしながら同時にイった。
その後身体を拭いてあげた後でベランダに出た。
身体は小さいけど美しい横顔に見とれながらキスをせがった。悠は優しい顔で目を瞑ってくれたので静かに唇を重ねた。
肩を抱き締めしっかりと引き寄せながら、街の夜景を二人で眺めた。
「圭とわたしどっちかを選ぶの?」
選ばないしどっちも彼女と言うと、悠はホっとしていた。
シェルターで食事をしていたら男一人に女が七人、厨房には男が二人いたがバランスは悪いなと思った。
「ここって溝口社長のハーレムですよね」
紅葉がさらっとそう言うので、半分そういう感じなのは認めるがそうではないと反論した。
「競争なので早く参加申請しないと紅葉は対象外ですよ」
そう言って鳴がなんらかの書類に紅葉をサインさせていた。
その参加者リストを見てみると、やはり真彩と恵美の名前は無かった。二人は初めから、会社の上司という接し方を私にしてくれた。
仲良し度を観察すると、圭&悠と紅葉。鳴と楓、真彩と恵美と三組に分かれていた。紅葉が楓と離れているのは謎だったが、圭と悠とはやたらと仲が良かった。
入浴はこの三組が順番に入るので私は四番目になっていた。
「時間が遅くなっちゃいますので溝口社長も一緒に入りましょう」
楓は水着作戦を楓に聞いていたらしく、くったく無く私を誘って来た。「ちょっと待って。楓は水着脱いだからね?紅葉絶対にしない?」
そう聞いても無視をして私の手を掴んで風呂場に連れていった。
楓の時みたく入浴剤を使わなかったので、小さな温水プールに見えた。
悠と圭が洗い場に行くと紅葉と湯船で二人きりになった。途端に顔が赤くなるところは姉妹だなと思ったがピンチじゃないかとも思った。紅葉の危険な部位を見ちゃいけないので、圭たちを眺めていたら紅葉も姉と同様に脱いだ。
念のため用意したタオルで目を隠した。
「紅葉、そういうことされると困る。普通に興奮するのでやめて欲しい」
興奮するという言葉に満足したのかちゃんと着直してくれた。そして戻って来た圭に叩かれ、悠は微笑んで見ていた。紅葉のふたつの蕾が頭から離れなかった。
「ほんと油断も隙もないな」
そう言ってまた圭に叩かれたが、最近彼女に叩かれ過ぎなので水着脱いでと頼んだ。正当な要求なので断れないはずだ。すると意外なことに圭は躊躇いなく脱いでくれた。
「いつでも私にそういうことは言え」
彼女がたいへん男らしかった。
悠は先にお風呂から上がってしまったので、圭と紅葉と私が残った。余りにも毅然とした圭に押されたのか紅葉は洗い場に行ってしまった。
「触っていいですか、他に誰かいても我慢できない」
そういうと圭が目を瞑ってくれたのでキスしながら胸を摩った。流石にそれ以上はここでは無理なので水着を上げてもらった。
着衣エロとか嬉しさしかなかったが、圭がその場を締めてくれて良かった。
その後、圭の部屋に行って全部やった。
上の階の喫煙室に行って煙草を吸って満足感を味わっていた。
モテてるのは五人からだが、男女比の偏りと立場のせいだときちんと分かっていた。ちゃんと圭だけにしたかったが、悠は別の魅力と危うさがあるので二人目にした。二人とも手放さない。二人が去ってしまったらそれは仕方ないと思っている。鳴、楓と紅葉はこの合宿感に流されてるだけだと思う。
恵美と真彩をマンションに呼んだ。二人が話すばかりで私は邪魔者感があった。
ベランダに呼んでも二人が話をしているので、私は空気のようだった。これが普通だ。モテモテなんてあるはずがない。
「みんな可愛いのに二人以外は振っちゃうんですか」
恵美が意外なことを聞いてきた。
「真彩は最初から溝口さんのこと好きじゃんないですか。積極的じゃないから眼中にはないんです?」
恵美が畳みかける。
「正直モテ過ぎなんだよ。立場でモテてるとしか思えないから実感がわかないんだ」
正直にそう言ったのだが背が高い真彩にキスをされた。
気持ちを否定はしたくはなかったのでありがとうと言った。その後は三人とも黙った。
鳴が謎の書類に真彩をサインさせていた。私はもうあまり気にしないようにしていた。
久々に東京に戒厳令が敷かれた。一体だが強力そうな翼竜が出現した。




