⑬悠
激しい戦闘が終わり皆もう寝静まっていた。
風呂を途中で中断させられたので、深夜だが露天風呂に向かった。
午前二時を回っていたので、空を眺めると冬の星座が見えた。シリウス、オリオン座やプレアデス星団を眺めた。田舎なので星が良く見えた。
身体を洗って出ようとすると小さな子供が入って来た。
子ども?よく見ると悠で二人とも慌てた。
「ここは男湯です。だからこっちじゃないよ」
「反対側は掃除の看板が掛かっているのです。だからここで合っているはずです」
確かに混浴と書かれていたのを思い出した。半分意識が寝ているので素通りしてしまっていた。混浴とか会社ではよくあるけど旅館では犯罪だろうと思ったが、逆であることになかなか気付かなかった。
声が遠ざかったので出て行ってくれたのかなと思ったが、悠は湯舟に浸かっていた。そして私に手招きした。
桶で下半身を隠しながら湯に浸かり、悠とは出来るだけ距離を取った。
「タオルで隠してるから大丈夫です」
悠が言うのでちらっと見たら隠せていなかった。明らかにピンク色のぽっちが一つ見えていたので手持ちのタオルを投げた。
「ちょっとお話がしたくて来ました。間違えじゃなかったのです」
悠が語り始めた。
この子は故木島社長が最後に送り込んだ少女だった。しかも他の子と違い魔法少女だと言う。見た目が幼いだけで能力は相当なものを持っていた。
「わたしだけ変身名が無いことが気になるのです。なんでですかね」
彼女に言われて初めて気が付いた。皆は初めから変身名を持っていた。木島社長なら深く考えるな、で済ますだろうが彼女が気にしている。ちょっと考えてあげなければと思った。
「木島社長に代わって私が付けてもいいかな」
「お願いします」
と元気よく言われたので、悠の方を向くとまだピンク色が見えていた。それに気付いて彼女は赤くなったが、全員の裸を見ているのに今更わたしを見て真っ赤になるのは変ですと言われた。
まだ見ていない子が二人居ると言おうとしたが、口にしたら変態過ぎるので言わなかった。今日で六人中四人を見てしまったことも実刑が付く犯罪だと思う。
「木島社長から何も聞かされていなかったけど、君はどういう経緯で誘われたの」
普通に疑問だったので尋ねると、少し悠は沈黙していたがナンパでしたとボソっと言った。
木島社長が自分にも負けない変態だったことが結構嬉しかった。そもそも変身ヒロイン構想というのも相当に危険な発想だった。
「悠には彼氏が居るから災難だったね」
と話すと彼女は黙り込んでしまい、大粒の涙を流し始めたので気が付いてしまった。彼氏と言うのは木島社長のことだったんだ。超が付く童顔で二十台後半なのに高校生にも見えた木島社長のことを思い出した。
あまりにも可哀そうだったので裸の彼女を抱きしめたが、これは浮気じゃないから許して下さいと社長と圭に嘆願した。
「木島さんにも見せたことなかったので責任取ってくださいね」
と言われそれは先約あるからダメなんです。ごめんねと言ったら冗談ですと返された。
彼女が洗い場で身体を洗い始めたので見入ってしまった。悠は発育だけ遅れてるだけで超が付く美少女だったからだ。
悠がちらちらとこちらを向く度にかわいい桃色が見えた。後ろからとは言え異性に裸を見られていることを彼女は気に留めていなかった。
「ずっとこっちを見てますが、溝口さんかなりの変態ですよね。でもいいですよ見てて」
その発言が意味深過ぎた。裸を見て良いというのは普通相当な好意だ。鳴と楓がそうだった。
でもこの子は違う。自分の中に出来た大きな穴を埋めようとしていると感じた。言うまでもなく木島社長の代わりを私に求めているのだと確信した。
「残念だけど木島さんの代わりにはなれない。本当にごめんね」
悲し過ぎる少女にそう詫びた。すると彼女はシャワーで身体の泡を全て洗い流し、振り向いてこちらに近づいて来た。タオルを持っていない全裸状態で、手でどこかを隠そうともしなかった。私の目は悠から離すことが出来ない。だから聞いてみた。
「これ魔法でしょう」
そう聞いても彼女は微笑を浮かべるだけで何も答えてくれなかった。
「そこまでだ。そいつはわたしの物だから諦めてくれ」
そう圭に言われると悠は振り返って脱衣場に向かった。
短パンとTシャツ姿で圭が助けに来てくれたのだった。そのまま彼女は湯に浸かり目を閉じた。キスのおねだりではなくホっとした顔だった。
「なんで気が付けた?たぶんあと10分経たないうちに私は悠を犯していた」
そう圭に聞くと野暮なこと聞くなとばかり指で唇を抑えられた。
もの凄く私の性的興奮が高まっているのを感じて、彼女はブラを外し抱きついて来た。透けTシャツから見える乳首が可愛かったので何度も触った。
キスはほとんど圭とはしていなかったディープなものにした。立ち上がって身体を圭に押し付け快感を味わったてから、圭に手で抜いてくれるように頼んだ。
圭は頷くとすぐに擦ってくれ、わたしもそれに応えて全部出した。
翌朝、眠かったがビーチ二日目の場所取りのためになんとか普通に起きた。ビーチに付いて場所を確保すると眠気がさらに酷くなったが、圭と悠が睨み合っていた。
「最初に会った時に全力でぶち抜いてりゃ良かった」
口は悪いが優しい圭とはかけ離れていた。そうか、神話の怪物メドゥーサが目覚めているなと咄嗟に分かった。
「今からやりますかここで。受けて立ちますよ」
悠も負けてはいなかった。
「ストップ。昨日は二人の裸が見れて嬉しかったです。なので眠いからもう寝ますが喧嘩はしないでね」二人にそう伝えてから寝息を立ててビーチマットの上で寝た。
「また来たのかしつこいな」
くじらのような大きな影二つが現れ、連続でビーチに敵が来たのだ。
圭と悠が我先にと敵目掛けて突進して言ったので、軽い渦潮を引き起こし二人を巻き込み止めた。
海神ポセイドンの得意技は地震、津波や嵐だがそれらを使わなければいいことに気が付いた。深刻な海洋汚染を引き起こしかねないのでピンクとグリーンは自粛。
ブルー・オーシャンとレッド・ローズに助っ人をお願いした。
的が大きいのでブルーの大海のうねりで一体を捕縛してもらい、それをポセイドンが捕まえて口から二つに裂いた。
もう一体はレッドのスティング・ローズスナイプで傷を付け、海獣から血が噴き出した。そこに海神が突進し体に穴を開け斃した。
敵殲滅を確認してから渦の中から圭と悠を助け出した。
話があるからと私はポセイドンのままで海岸に座った。イエロー・メドゥーサと悠もそのままでいてもらった。
「海神ポセイドンは欲望のまま美少女メドゥーサを押し倒してしまった。その結果メドゥーサは怪物にされたが高位の神だったポセイドンにはお咎めなし。たぶんこれが神話だったと思う」
「私が上司の立場で居ながら欲望に溺れ圭を押し倒した。だから圭ばかり辛い目に遭うことになってしまった。だからまず圭に謝罪する」
イエロー・メドゥーサの姿の圭は、言い返そうとしたが一旦遮った。
「木島社長は悠という恋人がいながらこの世を去った。しかも君を魔女にするという愚行を犯してしまった」
そのことについて部下として謝罪をすると悠に言った。彼女は反論しなかった。
三人とも元の姿に戻った。
「二人のために出来ることはなんでもやる。でも無理なものは無理なので、取り敢えず私を限界まで使役してもいいよ」
そう言ってシャワーを浴びに海の家に向かった。避難警報で誰も浜辺には居なくなっていた。
会社の喫煙室でまた木島社長に語り掛けた。
「あなたの恋人を寝取るところでした。でも死んでしまったあなたが悪いのですよ」
幼い魔女、悠を想った。そして可愛い怪物、圭を想った。
その晩悠が部屋に尋ねて来たのでソファーに座ってもらった。珈琲は苦手な様なのでオレンジジュースを机の上に置いた。
「抱いていただけたら悲しみが和らぐ気がしました。ごめんなさい」
言葉遣いをやや大人目にして悠が謝罪した。
「人は簡単に死ぬんだ。うつを患ってるからよく分かる」
だけど木島社長の場合はどうだったんだろう。死ぬ必要もない場面で死んでしまった。あれは自死かもしれないと語った。
「残された者は辛い。後を追う者も大勢いる。だから悠がそうならないためなら抱いてもいい」
そう提案した後で続けた、「だけどきっとそうはならない。圭がいるから悠の物には私はならないしなれない。だからもっと傷を深くすると思う」
長い沈黙の後で悠が立って私に抱きついてきた。まるで恋人にするように。
まるで無いと思ってた胸の感触が気持ち良かった。だけどこれは私に向けてのものじゃないことははっきりと分かった。
「本気で溝口社長を好きになれたら抱いていただけますか」
圭の許可が下りたらそうすると言ったら悠は笑った。あと社長はやめてくれと頼んだ。
楓の部屋をノックして部屋に入れてもらった。
彼女の顔が真っ赤になったので、けっして夜這いではないとまず弁明した。そして海で起こったことを全部話した。
「悠の味方になって欲しい。圭と鳴とはたぶん相性が悪すぎるから」
「真彩さんと恵美さんじゃダメなんですか」
楓は私にそう尋ねたのでダメと言った。爛れた性がこれ以上ばれたら辞められてしまうからと正直に答えた。
100%の納得は当然して貰えなかったが、木島社長の死で心を痛めてるなら放っては置けないと言い楓は引き受けてくれた。
そして楓の気持ちを受けとらないで悠を心配することについて謝罪した。あの子は死に近いから助けられるものなら助けたいんだと伝えた。
ドアをノックされ楓が開けるとそこに圭がいた。
「どこ探してもいないから来た」
「今日は浮気じゃないからね。でもごめんね」
汗を垂らしながら圭に謝罪した。楓もそれについて大きく同意してくれた。
その後は私抜きでいろいろ二人でお喋りをしていた。圭と仲良しでいてくれてありがとう楓。
人の心は痛みで常に悲鳴を上げている。だが悠の未来が幸せであって欲しいと心の底から願った。




