「」3
「だから、どうしていつもこうなるのよ!!」
ミラノの悲痛な叫びは一種の安定作用があるのかもしれない。
膝から崩れ落ちた彼女を見てメルトダウン、那々、マラクは落ち着いていたから。
上を見ると油膜のような気持ち悪い虹色が空を覆っている。
おかしい。依頼に対して交渉して、依頼を受けてお金を貰う。たったこれだけのことをする事に多少のリスクしかないはずなのに。
冥界に来てしまった。
ミラノは「どうして、どうして」とうわ言を繰り返す。
メルトダウンは両手を広げてお手上げしていた。
時はさか登る。
そうと決まれば即行動。
早速事務所から社用車のゴツイ軍用車を飛ばしてとりあえずcoc前まで来ていた。
この車はとある依頼の報酬のおまけで貰ったもので、そこのクライアントとはいい関係が続いている。
「ココがcocの会社ね。………ちょっとお腹痛くなってきた」
ミラノは見上げすぎて首が痛くなるくらい大きなビルを、前にして敗北の2文字が頭によぎっていた。
警備員だろうか、入口に普通左右2人で十分だろうに、左右2人ずつで銃持ちと剣持とて近遠両用武装をバランスよく揃えている。
しかもゴツイ。
上背だけなら、メルトダウン並だし横幅はもっとある。
ミラノなんて片手で握りつぶされそうだ。
「ビビりすぎだって!大丈夫、大丈夫!俺に任せてくれよ」
ビビり散らかしているミラノの肩を後ろから持って軽薄そうにメルトダウンが言う。
「うむ、心配だな。だが安心して欲しい」
「なにか秘策があるのね!?流石那々ね!」
相手は大企業。ミラノ達の「」なんてハエをはたくより簡単に潰せるだろう。
そんな相手に軽々しく大丈夫というメルトダウンに不安を感じずにはいられないミラノ。
メルトダウンからすれば何を縮こまっているんだという感想。いつも通り全てぶっぱなす豪快さは何処へ行っちまったんだと内心嘆いている。
こんな弱気なボスはボスじゃねぇ!
目を覚まさせてやらねぇと!
と、かなり余計なことを考えている。
この恐ろしい考えにミラノは気付くはずもなく、けれど不安は的中していた。
那々はメルトダウンに任せてみようというスタンスを取ってはいるが、1人で任せるには荷が重いと思っているようだった。
ミラノの不安を少しでも減らそうとしていた。
「ああ、みんなの武器だ」
「……は?」
「全く困る。武装せずに突っ走るからな、渡せてよかった」
ミラノもせっかちで困ると苦笑いをして、那々は車のトランクからミラノ専用武器が入っているアタッシュケースを手渡す。
手渡されたから受け取ったけど、疑問符が溢れて止まらない。
見ればマラクは腰の後ろにいつもの短刀を手に掛けているし、メルトダウンもホルスターの銃をきっちり装備している。
那々は自分の血が混じったペットボトルを鞄いっぱいに入れていた。
「え、なに?交渉よね?戦闘じゃなくて」
「ああ、勿論だ。だが、多少、若干、多分、恐らく戦闘は起こる」
段々と戦闘が起こるであろう可能性が高い言葉になっめいっている。
マラクは時々パチパチと雷を鳴らしている。
何時でも攻撃できるように雷をチャージし始めていた。
この子は戦闘狂過ぎる!
しっかりと手網を握らないととんでもない事になると確信を抱くミラノ。
よくよく考える。面倒とリスクが高すぎやしないかと。
「……依頼断らない?」
「また、振り出しか?俺様はどーすんだよ!「」が無くなったら暴れるしか無くなっちまうぜ?」
メルトダウンが渋るミラノに対して痺れを切らして手で銃の形を作って「バンバーン」と声を出す。
この中でリーダーなのにいつまでもビビって居られないわ!
そう思い、今一度気合いを入れ直した。
「ああ、もう!腹括ったわよ!行くわよ!」