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「」2

「で、けっきょくどういうないようなの」


マラクはミラノの悲痛な叫びに身を引き、目をつぶった。そのままゆらゆら揺れながら、またまた誰ともなく聞く。

マラクは特定の誰かに聞くという事を知らないらしい。もしくは何も考えてない。普通に後者だ。


「拉致しちゃってー、その子を匿えって内容だぜ、ベイビー?」

「あかちゃんじゃないよ?」


メルトダウンがアニメーションのような動きを交えた説明をする。

誰かを脇に抱えて、走り出して、箱に入れる様な。


那々はシラケた目をしている。


マラクがベイビーと言われた事に意識が言って苦言をていした。

抜刀してメルトダウンの首筋に短刀を添えて。


メルトダウンはお手上げした。「冗談だせ、ベイビー?」と言ってしまったという顔をしたのちに、狭いマンションの一室で鬼ごっこが始まった。


「そこじゃない。犯罪をしろって言われているんだ。断るべきだ」


那々はマラクの首根っこを掴んで、重要なのはベイビーと言った事じゃなく、その前だと教える。


メルトダウンは那々にグッとサムズアップした。

那々はやれやれと首を振る。


一応はクリーンな会社として成り立ってある「」が、拉致なんて真似はできないという事。


「それは分かってるわ。いくらなんでも犯罪者にはなれないもの」



ミラノが机の上に胡座をかいて口を尖らせる。

大きなたわわが強調される。


否定的な言葉は、諦めの色を含んでいた。

ミラノにしては珍しいと思ったし、那々はいつになく弱気なミラノはらしくないと思った。


元気の無い時は、皆が絶対にしない事をミラノに言うと元気な反応が帰ってくるので、那々はわざとらしく感情を込めて呟いた。


「……名残惜しいな」

「ちょっと!勝手に諦めないでちょうだい!!」


予想通りに元気いっぱいなツッコミが飛んできて満足気に頷いた。


「しかし、どうするんだ」



ミラノの心配事は全員の心配事。

依頼はこの1件。信用という意味でも、ここでは断りにくい。


実力はあるのに運が本当にない。

ミラノはいい案は無いかと左右に揺れる。

マラクも合わせるように左右に揺れる。マラクの思考では拉致ればいいのでは無いか、なぜ躊躇っているんだろうという感じだ。まぁ、脳筋なのだ。



「んじゃ、ちょっくら交渉してくるぜ」

「ならば俺も行こう」


悩んでいるミラノの右肩を掴んでメルトダウンが立ち上がる。

左手は腰に添えて気合を入れているようだ。


那々も乗っかるようにミラノの左肩を掴んだ。

チラッとメルトダウンを見て真似をする。


「交渉、するの?次の依頼を探しましょうよ」

「つぎ〜」


ミラノは2人の案にあまり乗り気では無い。

交渉は有効だろうが、今後を考えると、あそこは難癖をつけると言われてしまいかねない。


まぁ、次がない状況だが、保身に走る。

ミラノが心配するのは、依頼主がまともじゃない可能性が大いにあるからだ。


そんな所に大事な従業員を送り出せない。

結局、ミラノは仲間を大切にしすぎるあまり、人を使うことに向いていない。


それを分かってか、分かってないだろうな。

マラクはミラノの頭に覆いかぶさって、ミラノの言葉を復唱した。

まるで赤ん坊のようだ。


半目に開かれた緑の目は状況シュミレートをしていて、複数人相手の場合の有効打と、自分より格上と仮定してイメージ内で戦っていた。


普通に負けた。

ムスッとした顔になる。皆意味もなく出入口の方に向いていて、マラクの違和感には誰も気付かなかった。



「……」

「何か言いなさいよ那々」

「依頼主は見たか?」

「依頼主〜?」



那々がパソコンを操作して、1番最後の行を指さした。メルトダウンはミラノの表情を伺っていた。


マラクは机を一周してミラノの前に陣取った。

おかげで視界が遮られたミラノが今度はマラクの頭に顎を乗せてパソコンの依頼主を読み上げた。


「モナレナン」


ミラノはどこかで聞いたことのある名前。

それでもパッと思い出せない。それでいいのか社長。


「ってなんだっけ」


素直に分かりそうな人に聞く。分からないことは分からないと言えるミラノの美点だ。


そのミラノに対して、物知りな那々が説明する。


「モナレナンは冥界の癌への対抗策を考えた企業の主だ。CCoと言えば誰もが知っているだろう?」



現代社会は破滅を迎えた後の復興後の世界だ。

頭のおかしい錬金術士だかなんだかが、世界をぶっ壊してしまった為だ。


そうした世界はよく分からない黒いヤツが現れ、有効打もなく、人類は衰退していった。

その時に現れた天才がモナレナンだ。


簡単に言えば人類の救世主だ。

過去の偉人で言えばダ・ヴィンチとアインシュタインとか他6名くらいの偉人を足したような人。兎に角凄い人だ。



「あわわわわ!!!断っても地獄、受けても地獄〜!!」



全く、得意分野しか伸ばさなかった弊害をモロに受け、知識を補ったら補ったで頭を抱えてしまった。


ミラノに那々は再度言う。


「そうだ。だから交渉に賛成だ」


コクコクと黙って頷いたミラノに満足そうに微笑み返し、那々は「さて、どうしようか」と本気で悩んだ。


メルトダウンはいそいそと隣の部屋で弾丸をチェックして、マラクは準備運動を始めた。


ミラノは3歩前に歩いて宣言した。

ビシッと指をさして高らかに。


「交渉、行くわよ!!!」

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