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チャーリー・マンガー

「お酒って、なんで嬉しそうに飲む人多いんだろ?」

 くりんくりんの髪を揺らしながら、女のほうの先輩が男のほうの先輩に話しかけた。

「なこと、オレに聞かれても知るわけないだろ。オレ、酒飲まないし」


 ふっと嘆息してから、かわいい先輩は続けた。

「不思議だと思わない?」

「なにが?」

「だって、麻薬とか覚醒剤とかは使っちゃダメ、持ってもダメなんでしょう。それって中毒なったら、わけわからなくなっちゃうからだよね。お酒もいっしょじゃん」

「酒は別に中毒になるわけじゃないだろ」

「なに言ってるの、なる人いるじゃん、アル中」

「それは度が過ぎてるからだろ」

「でもよくあるよね、酔っ払ってトラブル起こす人。大声出したり、暴れたり、道端で寝てたり」

「ああ」

「なんでお酒は許されてるのかなあ。飲んじゃダメにすりゃ、そんなバカな話、ずっと減らせると思うんだけど」


「まあ、それはむずかしいでしょうねえ」

 そう思いませんかと振られた顧問は笑った。

「どうして?」

「お酒が好きな人は多いですし、お酒を生業にしているところは少なくありませんからね」

「先生はお酒飲むの?」

「人並みにはね」

「気分悪くなったり、記憶なくしたりしたことあるの?」

 顧問は笑った。

「記憶をなくしたことはないですが、若いときに無茶飲みして、頭痛で次の日、起きれなかったことはありますねえ」


「なんでお酒の話題を持ち出したんです?」

 顧問の質問に、愛らしい先輩は目をくりくりと動かして、こう言った。

「未来を考えたときに、アルコールの規制が強まるんじゃないかなって思って」

「へえ、どうして?」

「だって、問題があれば、世の中って、それなくす方向で動くじゃない。お酒だってそうならないとは限らないでしょ」

 それに。

「近ごろノンアルの飲み物って増えてる。あれって、好みが変わってきてるんじゃないかなあって。好みが変われば、お酒いらない人が増えるでしょ。そしたら、いろいろ問題あるもの飲む方がおかしいと考える人も増えると思うんだけど」

 顧問は大きく息を吐いて、「なるほどね」と言った。

「今の話を聞いて、タバコがあなたの言う変遷を経たと思いました」


 昔は街なかで喫煙する人は珍しくもありませんでした。

 新幹線だって禁煙車と喫煙車に分かれていましたし、もっと昔は禁煙車もなくて、どこでもタバコは吸えたんです。

 だから、新幹線など全席吸い殻入れが備わっていましたし、クルマだって吸い殻入れもライターも普通に装備されていたものです。タバコのテレビCMも当たり前のように流れていました。

 それが今ではタバコを吸うことが年々むずかしくなっている。今どきくわえタバコで街なかを歩くことなど、まずできないでしょう。新幹線は喫煙ルームさえ失くすそうです。値段もずいぶん高くなりました。税金が上がったからです。

 吸える場所が減り、値段が上がり、健康に悪いと言われることもあって、タバコを吸う人はずいぶん減りました。昔は成人男性の多くがふつうに吸っていたことを思えば、明らかに人々の行動も考えも変わったと言えます。

 お酒は少量ならむしろ健康にいいとも言われてきましたが、最近の研究では少量であれ、健康にいいことはないそうです。

 そう考えると、あなたが言うとおり、飲酒に対する行動や意識に大きな変化が起こって、お酒を飲む人が少数派になってしまうこともあるかもしれない。


 顧問の口調には、とてもそんなことが起こる見込みはあるまい、という響きがあった。

 とは言え、「なわけないじゃん」が現実にならないとは限らない。わたしの親世代との感覚の違い、祖父母世代との感覚の違いは相当なものがある。感覚が違えば、常識も変わる。世の中の変化にあわせて、企業も変わる。企業が変われば、そこに投資機会が生まれる。

 と認識しておけばよいのだと思われる。


 投資の世界では、誰もが知っているだろう人物が大往生した。

 チャーリー・マンガー氏。

 バークシャー・ハザウェイ副会長。享年99。

 ウォーレン・バフェット氏とタッグを組んで巨大な富を築いた。


「ブランドにこそ価値がある」

 という投資哲学を貫いたという。

 消費者から支持され続けている強力なブランドをもつ企業を、適正な価格で投資することが最も重要だと。

 それは割安な株価をつけるありふれた会社に投資するより優れているのだという。


 つまり、こういうことだろう。

 割安株への投資は、割安な株価が適正になれば、そこで終わる。

 しかし、褪せることなきブランドをもつ企業は、世界経済の成長にあわせて、終わりなき成長を続ける。

 だから、そんな企業を適正な価格で取得すれば、永続的な成長によって株価も上がり続け、富が膨らみ続けるということなんだろう。事実、コカ・コーラがそうだった。日本で言えば、ファーストリテイリングはまさにそうなっている。


 理屈には納得する。

 しかし、納得はしても、では具体的にどの企業に投資すればいいのかとなれば、これが難しい。

 仮にその対象がわかったとしても、では「適正な価格」とはいくらなのかを見極めることが、これまた難しい。

 適正な価格で買ったとしよう。けれど、株価が何年経っても上がらない、ということは少なくないそうだ。となれば、本当に自分の選択は間違っていなかったのか不安になるはずだ。

 あるいは、今の株価が自分の考える適正な価格よりはるかに高かった場合、高いかなと思いつつ、成長を続けるなら先々もっと上がるだろうと買ってしまうかもしれない。


 言うは易し、するは難し

 ということだ。わたしが学習することは無限にある。今は知識を増やすことだ。


 2023年12月1日現在 わたしのポートフォリオ

 ・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 1,400株 買値300円 株価318円 時価445,200円 含み益25,200円

 ・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価2,079円 時価415,800円 含み益109,800円

 ・6623 愛知電機 100株 買値3,615円 株価3,620円 時価362,000円 含み益500円

 ・7330 レオスキャピタルワークス 300株 買値1,358円 株価1,135円 時価340,500円 含み益▲66,900円

 ・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,273円 時価509,200円 含み益82,400円

 現金 78,300円

 時価総額 2,151,000円 含み益151,000円 含み益率8%

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