表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異能な僕らの青春期  作者: 戌叉
一章
3/68

2 朝の教室

「東雲君、おはようございます」



ぶつぶつと文句を言いながら歩いていると後ろから声が聞こえた。振り向くとそこには毎朝よく見る女性がいた。



彼女はクラスメイトの神楽怜奈(かぐら れな)。肩まで伸ばしたストレートの茶髪に大きな瞳の彼女は少し素っ気なさげに挨拶をした。そんな彼女には可愛いというよりは美人、美女と言った表現の方が似合うなと瑞己は思った。


「あぁ、おはよう」



初めて学園に通うときからこうして朝擦れ違うのが瑞己と怜奈の習慣になっている。



「それじゃ、また教室で」



怜奈は早足で瑞己を通り抜けて行ってしまった。揺れる髪が瑞己には手を振っているように見えた。



(相変わらずだな)



怜奈とのこんなやり取りはいつものこと。そんなことより今日の実技をどうやってやり過ごすか、その方が瑞己には重要だ。



ここ異能学園では一般教科とは別に実技科目がある。実技と言ってはいるが、ただの能力を使った体育だ。能力を持っていない瑞己にとっては何の意味もない授業。文句の一つや二つはでてしまう。それに理由は他にもある。



何度も溜め息をついているうちに学園が見えてきた。校門をくぐると生徒の数を考えても過剰なほど広い敷地がそこに広がっている。詳しく調べる気にはなれないが入学直後の施設案内によればあの有名なテーマパークが収まるぐらいには広いらしい。入学初日がまさか施設案内で終わるとは思わなかった。



(正直、無駄に広いよな)



瑞己は重い足取りのまま校門を抜け、ロッカーで上履きに履き替える。瑞希のクラスは[1ーC]、教室の前まで行くとクラスメイト達が朝の雑談で賑やかなのが伝わる。 



友人の一人でも同じ教室にいたら違ったのだろうが、あいにく瑞己は友人関係が豊富ではない。静かに教室には入ると一瞬皆の視線が集まるがすぐにそれは霧散する。



そのまま無言で教室に自分の席に目を向ける。すると、瑞己の席は三人のクラスメイトに占領されていた。



(まじかぁ。名前は……なんだったっけ?)



瑞己は人の名前を覚えるのがあまり得意じゃない。今のところ覚えているのは担任と怜奈、それと別の教室に一人だけ。



「なぁ、そこどいてくれないか」



とは言え、流石に一ヶ月も一緒に授業を受けてるのだから、そろそろ覚えないといけない。そんなことを考えながら瑞己は騒がしい三人に声をかけた。



「ん?」

「何?」

「……誰こいつ?」



話の腰を途中で折ったためか、少し不機嫌な返事が返ってきた。主に一人だけだが。瑞己も席をとられているからそこはお互い様と言えよう。



「俺の席なんだ、そこ」

「あら、そう言うことね」

「おっけぇー」

「……」



一人を除いて快く退いてくれた。



「悪いな、邪魔して」



瑞己は一応、社交辞令として謝っておく。後々しこりを残しておくと面倒だからだ。こう言うことの積み重ねで人間関係がこじれずにすむと瑞己は何かの本で読んだ気がしていた。それを実直にこなす。



「なによ、席ぐらい。少し待ってればいいじゃない!」



などと考えていた瑞己の策略が水の泡へと変えられた。



「そんなこともできないから、あんたは無能なのよ!」



蔑む目線と凛とした声で言われた言葉は教室に響き渡った。



無能、ひときわ目立つその言葉はこの学園での差別用語だ。もちろん禁句として扱われているが律儀にそれを守っているものはどれ程いるだろうか。



「……だから、悪かったっていってるだろ」



そんな差別用語を言われたせいなんだろうか。瑞己は反論してしまった。ここで下手に出ていればよかった、とつい咄嗟に言ってから瑞己は後悔した。



「そういうことを言ってるじゃないのよ、あんたの器量の問題っていってんのよ!」



机を叩きながら怒鳴る。どうやら火に油を注いでしまったようだった。というより、瑞己には何故そこまで怒るのかがわからなかった。



「まぁまぁ、りっちゃん。抑えて抑えて」

「そうよ。それにそろそろ予鈴鳴るわよ」

「……そうね」



りっちゃんと呼ばれるその女子生徒をさっきの二人が宥めてくれたお陰で大事にならずにすんだ。とは言え、教室の雰囲気は最悪だった。瑞己達のせいで朝の騒ぎは沈黙へと変わっていた。



それでも間に入ってくれた二人に心の中で感謝する。



(ありがとう、助かったよ)



ついつい反論した瑞己、実は内心ではめちゃくちゃビビっていた。基本的に物事を円滑に進めたい瑞己は前に出て先陣をきるような性格ではない。後ろからこっそり眺めているだけのいわゆる傍観者のポジションが性に合っていた。



「…………………」



さっきの揉め事のせいで教室の空気が重い。当事者である瑞己は申し訳ない思いで一杯だった。対する彼女は目に見えて不機嫌そうだ。



キーン、コーン、カーン、コーン



ホームルーム前の予鈴が鳴り、皆がそれぞれの席について担任を待つ。



「ふぁーい、おはようー」



扉を開け、欠伸をしながら入ってきたのは瑞己達の担任、一条忠志(いたじょう ただし)。猫背でわかりにくいが身長は高く、ボサボサのロン毛でだらしがなく見えるが二十代らしい。



「え?なに、この空気」



クラスメイトの視線が元凶である二人に集まる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] すみません、かぎかっこ前の空白のことではなく、  「○○」 ↑ここ ○○が○○            ← ここの空白、改行のことです 「××君」            ← ここの空白、…
[気になる点] セリフの時は空白を開けていただきたいですね。読みづらいです [一言] 初めましてクリーナーです。たまたま目に着いたので読ませていただきました。 この先どうなっていくのか楽しみです。 小…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ