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異能な僕らの青春期  作者: 戌叉
一章
19/68

18 午後の授業

教室に戻ると丁度昼休みも終わり、午後からの授業が始まる。その間に夏目が頬の赤い手形について腹を抱えながら問い詰めて来たが、無視した。



午後の授業は睡魔との戦いだ。皆が眠気を抑えつつ教師の話を聞く。けれど、あるものは既に眠気に負けて首を上下に揺らし、また別の者は寝まいと眉間に皺を寄せて耐え凌いでいる。



そんな中、瑞己も眠気に襲われていた。既に眠気に負けそうな瑞己は左手で顔を支えるように置いて徐々に瞼が下がってきた。



「それじゃ、今日やってもらう課題を渡しますね」

「……ふぁ」



その台詞で少し目が覚めた。廊下側の生徒から順に問題が見えないように渡され、そのまま後ろに流れてくる。



(そう言えば次は小テストやるって言ってたっけ)



瑞己にもプリントが渡り、一枚とってまた後ろに渡す。



少し寝れなくて残念な気持ちもあるが生徒の本分を忘れてはいけない。また眠気が襲ってこないうちに課題に取り組もうとプリントをひっくり返して見る。



(なんだこれ?)



そこにあったのは課題が書いてある問題用紙なのだが、一部だけ文字の羅列がおかしくなっていた。



”なに、ねてんのよ”



文字が一つの円になり、その中心に瑞己宛と思われるメッセージを囲っていた。



”きょうのほうかご、しょくどうにきなさい”



と、書かれていた。瑞己が読み終わるとメッセージの文字が動き始め、また違うメッセージになった。



”こなかったら、あなたにふこうがふりかかるでしょう”

(怖っ!)



読み終わるとメッセージがまた動き始め今度は矢印型になった。それは瑞己から見て右方向に向いている。



連られてそっちの方を向くと野獣こと鈴が睨み付けていた。目が合ったら舌をチロッと出して直ぐにそっぽを向いた。



(今度は何を考えてるんだ?)



その後、文字は本来の問題文へと戻っていった。






鈴のおかげですっかり目が覚めた瑞己は課題も解き終え、外を眺めていた。



窓際の近くだとここからはグラウンドが丁度見える。今日は天気もよく風は強くも弱くもない。こんな日は外で昼寝をしても気持ちいいだろう。



今の時間、グラウンドは中等部が使っていた。競技は男子はサッカーで女子はテニスみたいだ。



中等部の生徒はほとんどが適正者らしい。瑞己のように能力者の兄弟姉妹にあたる子達だ。中等部にいる能力者は皆、小学部から上がってきている子達しかいないらしい。



太陽から聞いた話によれば能力者である彼、彼女らは少数派なため一般的な同い年の子達と自分が違うことに違和感を持つ子達が多いそうだ。高等部の生徒より不登校気味の子達が多いと忠志が愚痴っていた。



教室から眺めている瑞己は木陰に座っている子を見つける。斜面になっている芝生の上に体育座りで楽しそうに授業を受ける他の生徒達を見つめていた。



(あの子はどうしたんだろう?)



暫く眺めているとサッカーボールが跳んできて木陰の近くまで転がってくる。跳ばしたであろう少年が手を振って何かを言っている。恐らく、此方に蹴ってくれとかそんなことを言っているんだろう。



座っていた子が立ち上がりボールを拾って蹴り上げた。その後、また木陰に戻って座った。



(別に普通だよな?)



体調が悪いのかと思ったがそんなこともなさそうだなと首を傾げる瑞己。すると、その子から違和感を感じた。



目を凝らして見ると座っているあの子がこっちを見ている気がした。気のせいかなと思いつつも気になってしまい目が離せない。



その子がまた立ち上がって今度は瑞己のほうに歩いてくる。近づくにつれて彼の顔がはっきりわかる。



(いや、あれは男子でいいのか?)



男子にしては肩が細く、体格は女子に近い。肌も色白で何より美少女と見間違えるくらい綺麗な顔立ちをしている。せめて制服なら分かりやすかったのだが。



瑞己から一番近い木陰に座り背を向ける。そして、チラッとこっちを見て一言。



み・す・ぎ



声は聞こえないが、口の動きからそんなことを言った気がする。また、楽しそうな生徒達を眺め始めた。



「結局どっちなんだ?」

「何がですか?」



ドキッと恐る恐る声のする方を向くといつも笑顔で優しいと有名な屋代響(やしろ ひびき)が横にいた。しかし、今はその笑顔がかえって恐ろしく見える。



この人は確かに優しい、それは瑞己もよく知っている。金欠で昼食を食べれなかった瑞己に食堂で豚カツ定食を奢ってくれた。困っている生徒を助ける姿は教師の鏡のようだなと思った。



そんな彼だが、授業中に窓の外を眺めながら話を聞かない生徒を甘やかすことは流石になかった。



「すいません、ちょっとボーッとしてました」

「まぁ、眠くなるのはわかります。では、眠気を覚ますために一つ質問をしましょう。皆さんも聞いてください」



そう言って響は教壇の前に戻っていった。



軽く手をパンッと叩いて眠っているものを起こし、皆の注目を集める。



「では、現在皆さんも知っている通り2024年から特殊能力を持つ人が生まれ始めました。生まれた瞬間に持っている者、歳月がたってから能力が発症する者。いまだにどのようにして能力者が誕生するのかはまだ解明されていません」



黒板に口で説明した事を下手な絵や文章で書き表しながら話が続く。



「当時の理事長は迫害を受けていた能力者を引き取り、育てている過程で能力者の為の学園が必要だと考えました。しかし、たった一人の男性が能力者を集めると言っても国の偉い方々は納得しません。ましてや個人で特別な力を持つ者達をかき集める事で、国を転覆させるつもりだ、何て馬鹿げた事を言う政治家もいました。そこで問題です」



一通り書き終えてチョークを置き、皆の方を向く。



「では、どうやって政治家達を納得させたのか?皆さん、自由に考えてみてください。」



能力の話になったとたんクラスの皆が興味津々になった。質問に対して近くの人と話し合うなり、いつもの集団で集まったりしながら答えを導きだそうとしている。



話がまとまったのかそれぞれの解答が次々と出される。



・政治家に文句を言われるより先に学園を作った。

・実力行使、口煩い人達を力で解決させた。

・何かしらの条件付きで許可をもらった。



それら全てを聞いてから屋代は不正解と言った。



「一通り解答が出ましたが、他にはありませんか?」



静まり返る教室。沈黙を肯定ととらえた屋代が正解を言おうとする。



「では、正解を」

コンコンッ、パタン

「失礼、そこからは私が話そう」



突然扉が開き、和服姿の老人が入って来た。顎に蓄えた白髭を揺らしゆっくりと教室に入ってくる。



その時、クラスの全員が口を開けたまま驚愕していた。何故なら、この学園に通う全ての人が知っており、誰よりもこの学園で地位のある人物。



学園理事長兼保護施設責任者、西園寺宗次郎その人であった。

読んでいただいてありがとうございます。


そろそろストックがなくなりそうです。


投稿頻度が減るかもしれません。その間、読者の方々には飽きずに待っていただきたいです。


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