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異能な僕らの青春期  作者: 戌叉
一章
16/68

15 夜食

「………お腹すいたな」



まだ外は暗い。



夕食を食べずに随分早く眠りについていたせいで空腹で目が覚めてしまった瑞己。ぐぅっと、鳴る腹を擦って起き上がる。



布団から立ち上がり、部屋の電気をつける。よれよれになった学生服から着替える。



温かくなってきて入るがまだ夜中は肌寒く、長袖長ズボンのジャージに着替えた。



「シャツにシワついちゃったな」



折り目がくっきり残ってしまったシャツを後でアイロンをかけるために畳んでおく。



学生服を片付けて空腹を満たすために台所に向かう。



冷蔵庫から白米、卵、ベーコンを取り出す。白米を電子レンジで温めてる間にベーコンを一口サイズに切っておく。温め終わった白米に卵をかけて塩、胡椒をふってかき混ぜる。



下処理が終わり、フライパンを出して油をしいてベーコンを弱火で炒める。



「そろそろかな」



少し焼き色がついたら一旦、火を止める。卵を混ぜた白米をフライパンに入れて軽く混ぜてからもう一度火をつける。固まっている米を解し、軽く炒めてチャーハンの完成。



皿に盛ったらフライパンは水に浸しておく。



スプーンを出し、部屋のテーブルに移動して座って手を合わせる。



「いただきます」



あまりに腹が減っていたのか米粒一つ一つが輝いて見える。早速、スプーンを持って出来立てをほうばる。



(あー、旨いな)



大した料理ではないけれど、瑞己は今この瞬間だけは世界一とも言えるほど美味しく感じていた。



「ふぅー、ごちそうさまでした。満足、満足!」



皿を洗って、浸しておいたフライパンも一緒に片付ける。



「……汗くさっ、」



空腹を満たした後は昼間の汗の臭いが気になった。寝間着を持って浴室に向かう。今から湯を溜めるのは時間がかかるのでシャワーを浴びることにした。



(さっぱりした)



濡れた髪をバスタオルで拭いて寝間着に着替えて髪を乾かす。乾かしている最中、前髪が少し目にかかった。



(そろそろ髪切ろうかな)



前髪を弄りながら瑞己はハサミを持ってきて鏡の前に立つ。空いた手で前髪を押さえ、ハサミを斜めにして毛先だけ少し切った。



「まあまあかな」



素人にしては悪くない出来栄えだ。散らばった髪を片付けてから布団の上に座って眠くなるまで携帯をいじる。



携帯ゲームをやらない瑞己は動画サイトのトップニュースを眺める。



・人気俳優が結婚!相手は一般の女性?

・富士山で登山客が相次いで遭難、捜索に能力者が参加

・今年の夏は猛暑になるかも!今から熱中症対策を

・国立特殊能力者保護管理施設で虐めが発覚



(ん?これって……)



様々あるニュースの中から瑞己は気になったニュース動画を再生した。



「今日の17時頃、動画サイトに保護管理施設内の生徒が同じ施設の生徒に手を上げる動画が投稿されました。その投稿された動画がこちらです」



アナウンサーが言った直後に動画が流れる。



(うげっ!)



昨日、龍悟と颯の二人が兼也に向かって暴言や罵倒をし、最後には兼也が机に叩きつけられる瞬間まで捉えた動画が公開された。勿論、当事者達や周りの生徒たちの顔は少しぼかしていたが知ってる人が見れば誰が誰なのかすぐにわかるだろう。



「以上となっております。これを見て心理学者の久我山優成(くがやま ゆうせい)さん、どう思いますか?」



そう言って話をふられた人は、三十代前半のような男性。座っているから身長はわからないが痩せている。



「はい。会話が聞き取れなかったので推測ですが手を上げている二人は恐らく特殊能力者だと思います。彼らはまだ、十五、十六歳にして一般人とかけ離れた能力を持ってしまった。その事実にこの施設の多くの生徒が優越感を持っているのではないのでしょうか? 昨今の若者の思考は柔軟になり、超能力と言うものは案外受け入れ安いことと思います」



確かにその通りだ。瑞己は思い当たる節がいくつかある。勿論、そんな生徒ばかりではないこともわかっている。



しかし、適正者として学園に通っている瑞己を能力者は快く思っていないだろう。



「では、今回のことはその優越感が原因だと?」

「関係ないとは言えませんね。誰しも人とは違う一面を言葉にしないだけで人知れず望んでいるものです。この二人はまさにその欲望を満たして世の中が自分を中心に動いていると思っているんでしょう。」

「なるほど。では、そう言った事への対策はどのように行ったらよいですか?」



少し考える素振りをしてから彼が答える。



「こう言ったことに解決策はないと思います。"虐めを止めさせたい"そういう志は立派だし、尊重もします。ですが、実際問題、世間から虐めはなくなりません」



申し訳なさそうに答える彼にアナウンサーが再度問いかける。



「では、今回のようなことが起きても仕方がないと?そうおっしゃるんですか?」



何故か執拗に彼を追い詰めるようにアナウンサーが聞き返した。



「……遺憾ながら。しかし、私個人の意見になりますが、施設の敷地内に能力を制限なしに使える場所を設けるのがいいと思います。動画の二人に限らず能力者は国に定められた新しい法律のもと、身勝手な能力の使用は禁止されています。彼らにとってはこれが鎖のように纏わり付いてストレスになっていると思います。それを少しでも発散させることができれば抑制にはなると思います」



何とか言いきってからテーブルに置いてある水を飲む。あんなに何度も質疑応答をしていては喉も渇くだろう。



「……なるほど、ありがとうございました。では、次のニュースです。」



そこから話は変わって別のニュースが流れ始めた。



「明日は色々と騒がしくなりそうだなぁー」



背中を伸ばしながら、自分には関係ないことだと思考を切り替える。



時刻はまだ、午前六時前。もう一度寝るために部屋の電気を消す。



布団に転がってふと鈴のことを思い出した。まさか、最後に負けて泣かれたのには驚いた。



(明日から気まずいな)



これからの対応に困ってしまったがとりあえず今は寝ることにした。

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