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異能な僕らの青春期  作者: 戌叉
一章
1/68

プロローグ

「お前は何なんだよ」



片手を無くし、自尊心を奪われた男が恐怖に怯えながら彼に問う。



▽▽▽▽▽



「君は何なの?」



銃口を突き付けながら、女は彼に問う。



▽▽▽▽▽



「ねぇ、貴方は何?」



姉を殺され、家族から見放された女の子が彼に問う。



▽▽▽▽▽



「君は誰だ?」



失いたくなくて、手放したくなくて、本心を隠して、我慢をして、事実から目を背け続けた男が彼に問う。



▽▽▽▽▽



「君は……自分を知っているかね?」



白い髭を蓄え、落ち着いた物腰で何もかもを知っているような口振り。愛娘を忘れられない哀れな老人が彼に問う。



▽▽▽▽▽



『君は僕の親友だ』



頭の中で何度も聞く台詞。その言葉を聞くと安心する。自分を疑わなくてすむ。化物かもしれないと考えなくてすむ。



▽▽▽▽▽



「僕の弟はお前に奪われたんだ」



慕っていた兄が彼に剣を向ける。憎しみと怒りを込めた瞳に映るのは弟の姿をした略奪者。



▽▽▽▽▽



「私の息子を……返せ」



漆黒の軍服を身に纏い、誰よりもその力を正しく使うと誓った男は、妻のため、息子達のために彼を裁くと決意した。



▽▽▽▽▽



「お願い、逃げないで」



心から惹かれる人に誓った、もう逃げないと。立ち向かうと。しかし、彼は怖くなった。もし嫌われたら、避けられたら、自分が化物だと知られたら、何もかも信じることができない。だから、彼は彼女から逃げた。



▽▽▽▽▽



『君は人間だよ』

「……違う」

『僕を信じて』



何を聞いても返ってくるのはそればかり。



「もう、やめてくれ」

『二人でいれば大丈夫』

「もう駄目だ」

『僕がついてる』

「うるさい」



脳が侵食されていくような感覚。都合が悪いことは何もかも忘れてしまいそうな、甘く、心地よい囁き。



『君はなにも悪くない』

「…………」



少しずつ、少しずつ、ゆっくりと彼の心から罪悪感が削られていく。全てを忘れてなかったことにしたい。そんな子供のような願いに答えると約束した。



身勝手な約束をしておきながら、それでも彼は自分が何者かを知りたい。それがどんなものだったとしても。



「誰か、教えてくれ」



彼は酷く震えた声で呟く。



「俺は……誰なんだ?」


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