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第9話:再会

「また会ったね、皇くん」


 声が聞こえ、目を覚ますと、創世の神 フロドースが目の前にいる。もちろん、俺たちは雲海の上に座っている。


 周りを見ると、ここは天国のようだ。


 いや、なぜ俺は天国に?今、洗礼を受けているはずじゃないのか?……まさか俺はまた死んでしまったのか?!


「ハハハハっ」


 と、俺の慌てた様子を見て大笑いをする神様。


「安心しろ、お前はまだ死んでいない。わしはただ、お前の魂をここに召喚しただけじゃ」

「そうですか……」


 神様の言葉を聞いてほっと胸を撫で下ろした。


 生きていてよかった。洗礼儀式が進行している間に死ぬなんて、あまりも最悪だ。


「皇くんが転生してから、もう五年になったね」

「はい、ご無沙汰しております、神様」


 神様に軽く一礼をした。


 ―――むぎゅっ!

 突然、誰かが俺の左腕に絡みついてきた。


 顔を振り向けて見ると、綾可だった。


 綾可も神様に召喚されて天国に来たが、まだ目を覚ましていないようだ。


 でも、左腕に当たる柔らかい感触が!


「ご主人様の匂い……えへへ……」


 綾可は俺の匂いを嗅いで満足そうに笑って寝言を言った。


 このままじゃいけない。綾可は甘えん坊すぎる。


「もういい、手を放せ!」


 手刀で綾可の頭をトンと叩いて、彼女を起こさせる。


「いたっ!ウゥ……」


 綾可は両手で頭を覆って激痛に悲鳴を上げた。


「ご主人様、痛いです。もう少し優しくしてください……」


 涙目で俺を見上げる綾可。


 けど、その泣き出しそうな様子を見て、ますます罪悪感がつのった。俺はやりすぎたようだ。


 綾可の頭を撫でて慰めたので、彼女は落ち着いて微笑み、また俺の左腕を抱きしめてきた。


「おい!いい加減にしろ!神様がいるんだぞ!」


 嫌だと思って綾可を押しのけた。


 まったく……と、俺はため息をついた。


「あっ!神様!ご無沙汰しております!」


 彼女はやっと正面に座る神様に気づいてお辞儀をした。


「ハハハっ、綾可は本当に皇くんのことが好きなんだな」

「はい、綾可はご主人様のことが大好きです!」


 綾可はとてもはっきりと言い切った。


 しかしその返事を聞いて、なんか恥ずかしく思った。


「ところで、神様が私たちを召喚したのには、きっと何か御用があるのですね?」

「ああ、その通りじゃ」


 やはり……。でも、いったいなにごとだろう?


「皇くんはもう加護のことに気づいただろ?」

「はい、加護に何か問題がありますか?」

「いいや、問題はないが、皇くんにすまないと言わなければならない。皇くんを早く転生させたために、加護と邪神について説明するのを忘れてしまった。先に加護について説明しよう」


 そう聞くと、思わず姿勢を正した。


「加護を通して皇くんにあげた固有スキルの中に、【スキル創造】という固有スキルがあっただろう?」

「はい、あります」

「【スキル創造】を使う前に注意すべきことが三つある。まず一つ目、人格は変えられないんじゃ。人格とは、人間としての唯一無二の主体じゃ。例えば性格・意識や記憶などは人格を形成する重要な要素であり、そのどれか一つでも変えてしまえば、その人格は崩れてしまう」


 神様は髭をしごきながら説明を続けた。


「二つ目、死者は蘇らせできないんじゃ。すべての人間は必ず死ぬ運命にあり、その運命を受け入れるしかない」


 俺は深く頷いた。


「最後三つ目、世界の法則を破壊するような固有スキルは作れない。例えば時間を巻き戻すとか、現実そのものを無かったことにするとか。世界の法則を破壊してしまえば、世界が終わるかもしれない」


 やはり【スキル創造】は慎重に使わなければならない。規格外の力だが、万能じゃない。


「以上、この三つじゃ。よく覚えておけよ、皇くん」


 と、真剣な眼差しで俺を見つめる神様。


「はい、肝に銘じておきます!」


 俺も真剣に答えて神様が言ったことをしっかり覚えた。


 神様は俺の様子を見ると、満足げに頷いた。


「そして邪神について説明しよう。彼女は復讐の神と呼ばれて、名前はティリシア・フォントじゃ」


 彼女?女の子?


「そう、女の子じゃ。しかし、ティリシアは邪神堕ちするまで勇者だったのじゃ」

「すみませんが、なぜ彼女は邪神堕ちしてしまったのですか?」

「約十万年前、ティリシアはヨゼルート大陸のブカル王国に生まれた。五歳の時に洗礼を受けて、彼女は勇者であると鑑定された。それからというもの、ティリシアは人族の希望を一身に背負い、厳しい訓練の日々を送ることとなった。そして、ついには魔王を討ち果たすことに成功した」


 神様は嘆息して重い口調で続けた。


「だが、彼女の声望が高すぎたので、ブカル王国の国王 クレイ・ブカルの不興をかってしまった。そのためにクレイは愚かな決断を下した。ティリシアが魔王討伐から凱旋するその途中に彼女の家族を皆殺しにするよう命じた」

「そんな……」

「自分の家族が全員殺されたという知らせを聞いたティリシアは、激しい衝撃を受け怒りと絶望に呑み込まれて暴走したから、邪神堕ちしてしまった」

「……本当にかわいそうな人ですね。でも、神様が先ほど言ったヨゼルート大陸のことは、初めて聞きました。世界地図にも載っていません」

「当たり前じゃ。なぜならティリシアが復讐したせいで、ヨゼルート大陸は滅び海に沈んでしまったから」


 一人の力で大陸を沈ませたなんて、やばすぎるだろう。


「ティリシアは封印されたが、彼女の信者たちがその封印を解こうとしている。皇くん、どうか彼たちを阻止してほしい、頼む」


 と、頭を下げて懇願する神様。


「質問がありますが、ティリシアはどこに封印されたのですか?」

「実を言うと、ヨゼルート大陸じゃ」


 ヨゼルート大陸って、その海に沈んだ大陸……。


 どうやってヨゼルート大陸に行くのか分からないけど、きっと方法がある。


「かしこまりました。任せてください」

「それじゃ皇くんに任せる。そろそろ時間じゃ。また会おう、皇くん」

「はい、また会いましょう、神様」


 神様は呪文を詠唱して、床には魔法陣が現れた。


 それ故に視界は再び真っ白に染まり、意識もふわりと遠のいた。


 俺と綾可は眩しい白光に包まれて透明になっていって、その場に姿が消えた。


「頼むぞ、皇くん。いいや、魔王 アルトス」


 神様は一人で囁いた。


 その目には微かに憂いが宿った。

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