第10話:無能者
ふと目が覚めると、祭壇の部屋に戻ってきていた。
意識がはっきりすると、司祭は杖を高く上げて、魔法陣の白い光がだんだん消えていった。
父さんと母さんだけでなく、クライードとクルヘームも緊張している。
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【シルイド・ウィーロス】
レベル:1 HP:25/25
称号:ウィーロス家の三男
年齢:5歳
性別:男
【魔法適性】
ない
【固有スキル】
ない
【加護】
ない
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宙に俺の鑑定画面が現れた。
……よし!
計画通り【鑑定隠蔽】が功を奏した。
やっと胸を撫で下ろし、一人ひそかにほくそえんだ。
「しっ、信じられない……」
「うっ、うそでしょ……」
その鑑定画面を見て、父さんと母さんは愕然とした。
「これにて洗礼儀式を終わります。今後も神様に感謝しながら、成長していくように祈っております」
と、司祭は神像に頭を下げてから祭壇の部屋を離れた。
「魔法適性・固有スキル・加護、何一つも持っていないなんて、まったく無能者だ!」
「ククッ……!なんと不憫な奴だ!」
思った通りにクライードとクルヘームに嘲笑された。
けど、構わない。一切は順調に運んでいる。
「期待に応えられなくて申し訳ございません、父さん母さん……」
俺は項垂れ嘆息を漏らし、落ち込んだふりをして両親の前に行き謝った。
衝撃を受けたせいか、父さんは返事をしなかった。
母さんは俺を抱きしめて涙を流した。
すみません、父さん母さん。俺は鑑定画面を改竄して皆を騙した。
鑑定画面を改竄したことに対しては罪悪感を抱くが、邪神を倒すために実力を隠さなければならない。
目を閉じて深呼吸をして、自分の心を静めた。
これから、俺は皆に無能者だと思われるんだろう。
……無能者なんて、まあいいか。
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三十分も馬車に揺られ、ようやく屋敷に帰ってきた。
自分の部屋に入ると、ベッドに横たわり、思わずハーとため息をついた。
やはり俺は馬車に乗ることが嫌いだ。お尻が痛いし、気持ちも悪くなった。
『ご主人様、大丈夫ですか?』
「俺は大丈夫だ、綾可。少し休めばいい」
【超回復】のおかげで、体調がすぐに回復した。
少し体んだ後、俺は起きてベッドから立ち上がった。
『どうしましたか、ご主人様?』
「お昼までまだ時間があるため、勇者 ティリシアに関する情報を集めよう」
部屋を出て、書庫に向かった。
書庫の扉を開けて入ると、綾可が俺のそばに姿を現した。
「綾可がお手伝いします、ご主人様」
「うん、それじゃ頼む」
一人より二人の方がきっと早く本を見つけられる。
綾可と一緒に本を探し始めた。
そのため、一時間ぐらいかかる……。
「ありました、ご主人様!」
綾可が本を見つけたようだ。
「この本です」
綾可が俺に近づき、本を渡してくれた。
その本のタイトルは《勇者冒険録》だ。
俺は最初のページを開けて読む。
「数万年前、恐ろしい魔族が蔓延り、戦乱が絶えぬ世界。老人も子供も容赦なく殺され、大地は血で赤く染まっていた。人族は魔族に迫害され、絶望に沈んでいた。その時、勇者が誕生した。勇者の名前はティリシア・フォント……」
この名前を読むと、目に力が入り、目つきが鋭くなる。
「ティリシアはブカル王国に生まれ、五歳の時に教会で洗礼を受け、勇者であると鑑定された」
ページをめくり、本を読み進めた。
ティリシアは幼い頃から神童と呼ばれ、将来を期待されていた。
剣術・魔法・学問など全てに優れ、十歳の時には王国最強の騎士と魔法使いですら相手にならなかった。
十二歳の時、魔王軍がブカル王国に宣戦を布告し、王国の最北方のリートスノ城に攻撃を仕掛けてきた。
ティリシアは恐れることなく前線へ立ち、たった一人で敵陣に斬り込み、魔族将領を討ち取った。
その戦いでティリシアは名を上げた。
翌年、ブカル王国の国境周辺に大規模な魔王軍が再度集結し、北方・東方・西方の三方向から全面侵攻を開始した。
魔王軍が国境を越え、王国の領土を蹂躙し、至る所で焼殺や略奪を行なっていた。
それ故にティリシアは再び戦場へ赴いた。もちろん彼女は人族の期待に応え王国の軍隊を率いて魔王軍を撃退することに成功した。
二年後、ブカル王国はリーラン王国・ポトス王国とユフィオン王国と連合して魔王領に反攻を始めた。
ティリシアは指揮官に任命され、連合軍を指揮した。
当然の如く、ティリシアの指揮のもと、連合軍は破竹の勢いで進軍していた。そして、ついには魔王城を攻め落として魔王 アルトスも倒した。
長年にわたる戦争は正式な終結を迎えた。
本を閉じて読み終わった。
《勇者冒険録》にはただティリシアが魔王を倒したことが記されている。
どうやら、もっと情報を集める必要があるようだ。
窓から空を見ると、そろそろ昼ごはんの時間だ。
「今食堂に行かないと、綾可」
「わかりました」
と、小さな光点になって俺の身体に隠れた綾可。
本を本棚に戻して、書庫を離れた。
昼ごはんを食べ終わったら、また書庫に来よう。
でも、今日の昼ごはんは何だろう、腹が減ったな。
ダイニングに向かった。
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