4話 瑛美梨の友達
結局のところ、エーティは今日も仲間を1人も見つけられなかった。しかしアルメルの手袋らしき物(エーティーはアルメルの物と確信している)が見つかった。それゆえか、エーティはこの調子で行けば全員見つかる気がしていた。
しかし、現実はそのエーティの期待を裏切っていった。
来る日も来る日も、本人どころか、彼女らの物らしきものも一つも見つからなかった。瑛美梨は、少しずつ顔色が悪くなっていっているエーティに気づいていた。とても心配になった。そんな気持ちを抑えることに必死になっていた。
「絶対に人に情をかけない」
それが瑛美梨にとっての人生においての規則だったのだ。
エーティは、瑛美梨が最近何かを思い詰めていることに気づいていた。魔法でも他人の気持ちを読み取ることが不可能だが、エーティは更に「察する」というものが苦手だった。彼女は一見とてもクールな性格のように見えるが、あくまで見かけだけであって、本当は、出会った人間全てと友達になろうとするほど明るく社交的な性格なのだ。幼い頃は見た目も性格をよく表していたのだが……。
そんな彼女だから、心の中では瑛美梨と友達になりたいと強く思っていた。というよりも、もう既に友達だと思っていたのかもしれない。
エーティの心が沈むほど瑛美梨の心が沈み、瑛美梨の心が沈むとエーティの心は更に沈む。そんな感じだから、先ほど述べたように察しの悪いエーティですら瑛美梨の変化に気づくようになったのだ。そして、もしや自分がその原因ではないのか、と考えるようにまでなった。それでもなおお互いに最初と変わらぬように接していた。
ある日、瑛美梨はいつも通り学校に行っていた。そこには唯一の友達と言える品川野々がいた。いつも2人で一緒にいる。2人は幼稚園からずっと一緒に育ってきた。そんな完全に信頼できる野々となら、どんな秘密も共有できる。そう思って、エーティのことを話してみることにした。もちろん信じてもらえる可能性が低いことはわかっていた。それでも野々なら私を馬鹿にすることはないだろう、と言う自信があった。それに、野々は都市伝説や心霊現象などと言ったオカルト分野の話が大好きだから、本当だと思われなくてもこの話を楽しんで聞いてくれるに違いない。
瑛美梨「野々、ちょっと変な話しても良いかな。」
野々「変な話?馬鹿真面目なエミリが珍しいねぇ。」
瑛美梨「あのね、今、私の家に魔女の居候がいるの。」
野々「え…?!………それは本当?!すごいじゃない!すごいわぁ!!!」
瑛美梨「お、おちついて野々。それで、彼女にはいろいろな事情があって……」
私はエーティと彼女の友達のことを話した。
瑛美梨「それでね、なかなか友達が見つからなくて、エーティが最近落ち込んでて…。」
野々「あら、あなたが私以外の他人の心配をするなんて珍しいねぇ。」
瑛美梨は少し焦った様子で言った。
瑛美梨「いや、その、心配しているわけじゃなくて…。」
野々「と言いますと?」
瑛美梨「あのね、普通に考えてみて。他人が自分の家に居候しているのよ。しかも親に隠すために自分の部屋に匿っている。疲れるし大変だし気を遣わなきゃ行けないでしょ。」
野々「あぁびっくりした。いつもの瑛美梨だわぁ。」
野々が微笑しながら言った。
野々「それでぇ、なんで私に話したの?他の人には秘密にしておきたかったんでしょ?」
瑛美梨「あ、そうだった。話を戻すわね。それで、エーティの友達がなかなか見つからないから、野々にも、悪いけど協力して欲しいのよ。」
野々「別に私は構わないけどさ、何したらいいんだろう?」
瑛美梨「街でそれっぽいの拾ったりしたら教えて欲しいの。なんなら魔女の子がその辺にいたら私たちのところへ連れてきて欲しいの。」
野々は話を信じるだけでなく、私のお願いまで聞いてくれた。やっぱり野々は世界一の人間で、唯一私が信頼できる人間だ。
野々「…ということは、このことは他の人には絶対言っちゃいけない感じかなぁ?」
瑛美梨「えぇ、何があっても、絶対言わないで。面倒ごとに巻き込まれたくないから。」
野々は瑛美梨が言う「エーティの友達」に心当たりがあった。
ー放課後ー
まだ帰宅していない野々の部屋に、高校生くらいの少女らしき人影があった。
?「………」
「ガチャ…」
ドアの開く音がした
?「野々………?」
野々「そう、私だよ!だから安心してね」
?「野々…!おかえり!」
野々「ただいま、アルメル!」