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傷者のランショウ  作者: 井富士 意温
4/7

傷弓之子【4】

停まった。


なにが?時間が。



少年を追ってる最中未来の確定を行った。効率化をはかるためだ。

少年の僅か後方に着地して、すぐの事だ。少年を追いかけようと1歩踏み込もうとしたところでピクリとも体が動かなくなった。


体が動かない。眼球も動かない。何も聞こえない。思考はできる。心音は聞こえる。恐らく空間その物が固定されている。


だが、多分周囲の人は何も出来ていないだろう。


でも安心。こういう時の対処法は心得ている


琴葉(ことのは)雷華より申請。当方を時間的概念から除外せよ。』

『──────』

『許諾を確認。』


手をグーパーしたり方を回したりして動作に支障がないか確認する。

私は少年の真正面まで進んだところで歩みを止める。


ここで時を動かす。


「うっ……なっ!」


少年が私にぶつかり、目を見開いている。

どうしてここに?と言わんばかりの表情だ。


少年が慌ててショルダーバッグからあの透明なナイフを取り出し私に一突き。

私はその一撃を軽くいなし、スタンガンとは別の要領で電気を流した。


少年ががくりと膝から崩れ落ちる。私はそれを支えて乱雑に担ぐ。

私はそのまま踵をかえした。


〇〇〇


目を覚ましばっと勢いよく起き上がる。

ここはどこだ……。僕の……部屋?なぜ?

僕は部屋を出てリビング向かう。

その途中リビング────いや、キッチンから物音が聞こえた。

慌てて向かうとそこには女がいた。

チャイナドレスにエプロンという奇怪な格好でフライパンを操っていた。


「っ……お前っ!」

「まぁまぁ待て待て、チェリーボーイ」

「うるせぇ!」


ダイニングに目向けると彪がスプーンを片手にルンルンで待機していた。


「私は別に君を殺しにきたわけでも、おかしにきたわけでも、ましてや捕まえに来た訳でもない。

とりあえず話を聞きなさい」


僕は今日で2回既に目の前のチャイナドレスに負けてることを踏まえ渋々席に着いた。


数分後、両手と右手首に皿を乗っけてダイニングにやってきた。

メニューは炒飯だった。


「お前も食べんのかよ」と、誰にも聞こえないよう呟いた。

「当たり前でしょ。私が作ったんだから」

「フんっ、地獄耳が」


「おいしい!お姉ちゃん、これめっちゃおいしいよ!」

「そう?ありがと」

彪の賞賛に女が笑顔で頭を撫でる。



「寝るのが好きな子ね」

女が唐突に言った。

「……」

「無視するんじゃないわよ」

「そうか?」

「そうよ、さっき起きたばかりなのにいくら食後だからってこんな小さな子が……ね?」

「知らねぇよ」


「で、話ってなんだよ」

僕は身構えた。

どんな話が来るか、皆目見当もつかなかったからだ。

「あなた────あなた達私の養子になりなさい」

耳を疑った。

「…………は!?」

「あなたは魔術的な或いは膂仙術的な才能がある、だがそれを制御出来てない。あなた、どうやっていとも簡単にあんな大人数の首をあんな短時間で切り落とせたのかな?」

そういう事か、こいつあそこ見てきたのか。

「僕には傷が見えるんだよ。首と胸と頭には誰にでもある」興味深そうに女が相槌をうつ「それ以外の傷の多さや大きさ色によってその人間の性格、人格、人間性がだいたい分かる」

「へぇ〜、それは随分と便利ね」

「別に便利なんかじゃねぇよ」

「それで、その傷に触れればそのまま首がきれた、と」

「なっ!─────どうしてそれを」

僕は驚きを隠せずつい大袈裟にリアクションをとる。

「その目はね…んまぁそこそこ有名なのよ。その目で見える傷はとどのつまり弱点だ。脆い部分だ。

それでその傷に触れればその傷の向きに応じてそのままその物体は切断される」

「…………」

「それななおのこと家に来てもらわないとね。保護という名目もできた事だし」

「はぁ!?どういうことだよ」

僕は身を乗り出す。

「その目は現傷(げんしょう)或いは表傷(ひょうしょう)の魔眼と言ってとても珍しいものなの。万が一悪い魔術師が君を見つけたら君を連れ去り非道な実験、研究材料にされてしまうこともある」

「そんなの全員殺せば済む話だ」

「無理ね。寝込みを襲われたら?彪ちゃんを人質に取られたら、私くらい強いやつが来たら?そしたらどうするわけ?」

「っ…………。」

「たしかにあなたは殺すことに関しては向いてるわ。でも戦うことに関してはからっきしね。その目を使わず戦ったらそこら辺の柔道選手にも負けるかもね」

ここで女が何も言えなくなった僕に視線をやり、一息つく。

「私のところに来れば彪ちゃんを守ることができる。力の使い方───殺さずに制する方法も教えられる。別に大学くらいまでは通わせてあげるし、卒業後は好きにすればいいわよ。だからあなた達は家に来る。これはもう決定事項よ」

「わぁったよ」チッと、舌打ちをする。


「OK!じゃぁ早速家に向かうわよ!そういえばあなた、名前は?」

「切だ。辻宮切(せつ)。おまえは?」

「琴葉雷華よ」


ここでやっと僕は、僕の人生は濫觴の場を得たような気分だった。





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