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おっさんが行く 異世界で軽運送   作者: 仕事の傍ら執筆中
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ここはマツサモ村

 ふっくら奥様ピコトさんが夕食を食べていけというのでお礼代わりに塩とサラダ油を渡したら超絶喜ばれた。

「こんなに!塩を!?いいんですか!? こんな真っ白な…。それに、これ、油?…なんてきれいな…そして不思議な入れ物…素敵…」

 プラスティックの容器が珍しいようで、塩の袋とサラダ油の容器をくるくる回転させながら眺めてうっとりしておられる。ところでピコトさんはパンちゃんを妊娠してから体形が変わったクチだろうか、もともとふくよか癒し系だったのだろうか。知らなくていいけど。


 上機嫌なピコトさんが作った夕食に出てきたのは豆のスープ。「おお、今日は塩味が効いてる!」とケダサカがよろこんでいたが、ううむ、なんていうか、その。ごちそうになっておいてなんだが、やはり調理法が未発達だというこの世界、現代日本人としては改良していきたいところだ。とはいえ、俺はおいしい高級料理からマズ…それなりの料理までおいしく頂ける特技の持ち主だ。たとえ出汁が効いてなくとも笑顔でありがたく頂く。


 豆を半分つぶしてもらったパンちゃんもアムアムおいしそうに食べてる。赤ちゃんには塩味薄めでお願いします。いやぁ、赤ちゃんの笑顔って癒されるなぁ。あれ、離乳食ってこんな大きさの子に始めるんだったっけか。早くないか?この世界ではデフォなのか?うちの子の時はどんなだったかな。あの頃はサラリーマンで残業続きだったからよく覚えてないんだよなぁ。残業して帰ってきたら子供はすでに寝ていることがほとんどだった。このこと言うとヨメが「どうせあんたは知らないでしょう」ってドヤ顔して悔しいからあんまり口に出さないけど。


 一緒に出てきたパンは黒くて硬く、やや酸っぱいような味わい。以前食べたことのあるドイツ風のなんとかいうパンに似てるが、味はそれより数段劣る。発酵とかそもそも小麦の品種改良とか、技術が進んでいないんだろうな。

 こんな食事を知ったら昔の転生者が勘違いするのも無理はない。だが、ただ自分がいた現代地球の技術が進んでいただけで、そいつ自身が優れていたわけでもあるまいに、増長しちゃマズいよな。

 硬いパンは(赤ちゃんのパンちゃんじゃないよ、紛らわしい。なんでこんな名前つけたんだ)スープに浸して食べると柔らかくなって食べやすくなった。酸味も気にならなくなったし。


 食事しながらこの村のことをいろいろ聞けた。

 ここは「マツサモ村」 人口100人ほどの集落で、土地がやせているためにイモや豆ぐらいしか農作物は育たないという。農業のほか、森に入って木の実や果物を取ったり鳥や猪を狩って生活しているようだ。

 たまに各地を巡回する行商が立ち寄るらしく、その時くらいしか外部の情報に触れる機会はない。貨幣もあんまり使わないみたいだな。なるほどこの環境では技術の進歩や新しい情報の獲得は難しいだろう。


 食事が終わるとそのまま泊まって行けとケダサカ夫妻が言うのでありがたく泊めてもらうことにした。パンちゃんは既におねむだ。カワイイ。

 あてがわれたのは物置になっているらしき部屋。広くはないが、寝るスペースはあるので上等、上等。一応、車中泊できるような装備も車内には持っているのだが、勝手がわからない土地でいきなり野外での単独泊は避けるべきだろう。魔物とかいるかもしれないし。

 一人床に敷かれた毛布?布切れ?に寝そべり、一日を振り返る。考えたらいろいろあったなぁ。イノシシと衝突して、神様と会って、転生して、マズ…シンプルな料理食べて、村人に泊めてもらって。

 文化が遅れていて、決して裕福とはいえない暮らし向きだけど、こういうの、いいなぁ。この村のために、なにか役に立つことできないかな…などと考えつつ眠りについた。



「はい、夢の中に失礼しますよ」

 おい、サワガミ、いきなりだな。あれ、俺寝てんのか。これ夢の中?

「ええ、ヒロさんにお伝えしておくことが少し不足していたのでこうして夢の中に出てきました」

 いろいろできるんだな、サワ。

「コホン、一応神様ですからね。続けます。一度説明しましたが、この世界、『リステーム』でヒロさんが生きていきやすいように、この世の(ことわり)をゲームのようなシステムで把握することができます。これはヒロさんだけの能力ですね」


 この世界、リステームっていうのか。まず説明不足はそこからだなオイ。


「あっ……、で、ですね、リステームの人々にはできませんが、ヒロさんは自分の能力を数値化して見ることができます。メニュー、と唱えてください」


 スルーしたな。とりあえす素直にメニュー、と口に出してみる。



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